そんな時、このブランドの服があれば冒険どころか大冒険である。「ANREALAGE(アンリアレイジ)」から発表されているコレクションの数々が、とにかくスゴいのだ。
まず、画像を見てほしい。もう、言葉はいらない。胴体や頭が“ボコッ”と膨らんだ、あまりにも大胆なフォルム。
これは同ブランドの今季のコレクションで、テーマは「見えない形」。無形のもの、すなわち“空気”を形にして洋服の中に封じ込めている。洋服の膨らんだ部分には、空気をいっぱいにはらんだ風船を差し込んだのだ。当然、空気を抜いてからはリアル・クローズとして着こなすことができ、その状態における独特のシルエットが美しい。そんな、大胆に針を振り切った服。
ANREALAGEのホームページに訪れると、これ以外も全部スゴい。そこで、直接に話を伺ってみた。
「今、洋服の価値観は『いかにお洒落に見えるか』、『安いか、高いか』などの言葉に限定されがちだと思います。それ以外の“面白さ”や“創造性”といった価値観も伝えたいという思いが、私たちにはあります」(森永デザイナー)
既存の洋服以外の可能性にもチャレンジしていきたいという意志から、これらのコレクションは出来上がった。
ちなみに、ANREALAGEが起ち上がったのは2003年。それ以来、毎シーズン製作していく中で特に反響の大きかったものはどんなものなのだろう?
「2006年に、アルファベットをコンセプトにした洋服を発表しました。Tシャツは『T』の形ですよね。それ以外のアルファベットでも作れるのではと、Pコートは『P』の形で、ジーパンは『G』の形で……、といったコンセプトで製作しました」
もう1つ紹介したいのは、マネキンのサイズに合わせて製作したコレクション。「普通じゃん!」と思いかけたのも束の間、マネキンのフォルムが常軌を逸している。身長3メートルで肩幅が33センチだったり、身長は70センチで肩幅1メートルだったり、見たことのないサイズ・バランス。こんな体型に合わせて服を作れば、シルエットが普通じゃなくなるのは当然。
「服は身体を定規にして作るのが基本です。今まで『人の身体が変わらないと、新しい洋服は生まれない』と言われてきました。そこで、人の身体のサイズを変えてみたのです」(森永デザイナー)
これは深い。
そこで、逆に誰も合わない服を作ってみせた。「誰にも合わない」ということは、「誰にでも合う」という可能性も持ち合わせているとも言えるだろう。
そんなANREALAGEに対する、ファンからの反響は?
「皆さん、新作の発表を楽しみにしてくれています。年2回コレクションを開催しているのですが、毎回テーマを設定してコンセプトに基づいた発表をしていますので、シーズンによりつくる服が変わります」(森永デザイナー)
やはり同じファッション業界からの、中でも20~30代のクリエイターたちから熱い視線が注がれているらしい。
そんなコレクションたちを購入したい場合は、原宿にある同ブランドの直営店か新宿伊勢丹、もしくは通販サイト「ZOZO TOWN」でチェックすることができる。
最後に、もう1つ質問を。このブランドの取り扱いはレディスのみ?
「いえ、メンズもレディスも取り扱っております。身体のサイズを問わないで作る服に関しては、性差も問わないですから」(森永デザイナー)
どうやら無粋な質問をしてしまったようだ。可能性は、無限に広がっている。
(寺西ジャジューカ)