香川と言えばうどんのイメージが強い。

同じく粉もんで有名な大阪はお好み焼、たこ焼と様々なメニューでどんどん攻めの姿勢だが、香川はうどん一筋。
頑なにその姿勢を崩さないように見える。
しかしうどんばかりではないのだ。何年か前から、話題の粉メニューがあると言う。
それが、元祖かっしゃ焼。
いったいなにを焼いているのやら、名前だけでは見当も付かないメニューである。

このかっしゃ焼、見た目はたこ焼によく似た丸型。
上にソースがかけられているのもたこ焼によく似ている。
しかし中身は、タコではなく鶏肉。味付けをした生地の中に、カレー風味の親鳥を入れて焼いているそうだ。
ソースは四国に昔からあるもので、少しだけ甘め。スパイシーな肉とよく合って美味しいのだと言う。
このレシピについては、特許を取得しているとか。

さらに第2回讃岐B級グルメコンテストでグランプリを受賞するなど、何かと話題になっているメニューである。

しかし実はこのかっしゃ焼、このお店が起源と言うわけではない。
遙か20年数年前。香川の私鉄、琴電の駅前のお店でおばちゃんが焼いていた食べ物。これがかっしゃ焼の起源だ。
オーナーの鈴木さんは、それを子供の頃によく食べていた。
そしてなぜかおばちゃんは鈴木さんに、かっしゃ焼の作り方を伝授してくれたそうだ。
時は経っておばちゃんは亡くなり、お店も引き継がれることなく閉店してしまった。今では名前さえ思い出せない。ただ当時、鈴木さんはこのお店のことを“かっしゃ焼”と呼んでいたことを覚えていた。
この焼き物の名前を、かしわ焼……つまり方言で鶏肉のこと。それが訛って、かっしゃ焼。


時折思い出しては家で作っていた鈴木さん。やがて「これも何かの縁」かと思い、5年ほど前にさぬき市にお店をオープン。そして昨年、市内に移転再オープンと相成った。
今では市内だけでなく、海を渡って岡山の倉敷。さらに6月28日には埼玉県ふじみ野にもお店をオープン。関東初進出である。
店舗だけでなく各種イベントにも呼ばれているそうで、これからの広がりも期待される。

香川発たこ焼き新バージョンかと息巻くこともなく、かっしゃ焼はどこか懐かしい思い出の味。
うどん巡りもいいけれど、もし見かけたらこの新しくて古い粉メニューを味わってみては。
(のなかなおみ)