そのランドセルですが、ドイツの一般公立小学校では、規格が一切設けられていないため、色もデザインもまるっきり自由で、てんでバラバラ。それでも、近年の流行を見ると、女の子には、カワイイ天使のキャラクターや、イルカや馬などの哺乳類動物のデザインが人気上々。一方の男子は、肉食系のライオンや恐竜、宇宙船やレーシングカーといった乗り物の絵柄を選ぶようです。
ランドセルの外見は十人十色でも、その中に入っている教科書は統一されています。ところが、この教科書についても、日本と決定的に異なる点がひとつ。
言い換えれば、教科書は全て中古。すでに代々の1年生が使い続けてきた本ですから、角が丸みを帯びていたり、ページが少々破れているのは当たり前。これらの中古教科書は、当該学年が終われば再び学校に返却せねばなりませんので、重要事項にアンダーラインを引いたり、ページの角を折ったりするなどもってもほか。図書館の蔵書を借りるようなもので、丁重な扱いが必要です。
また、同じ教科書を数年にわたって使うため、強度重視の教科書は、ハードカバー仕様が多いのも特徴です。従って、ハードカバーの教科書を何冊も詰め込んだランドセルは、ついこの間まで幼稚園児だった新入生にとって、理不尽なほど重くなってしまいます。道理で、毎日の登下校時に、校門まで我が子のランドセルを運搬してあげている保護者の多いこと、多いこと。
冒頭の「ランドセル、重いでしょ。私が持ってあげようか?」は、そんなランドセルの重量を知っているからこそ、つい口に出そうになるセリフなのです。
(柴山香)