「コンビニのレジ袋をお湯で煮たらどうなるんやろ!?」
そんな疑問から生まれたユニークなプロダクトシリーズがある。その名も「PE(ペ)」


無駄をそぎ落としたシンプルなデザインながら、独特の素材感が目を引く。なんと素材はゴミ袋やレジ袋として日常でよく手にしているポリエチレン。ブランド名の「PE」も、ポリエチレンの材料略表記 「PE(ピー・イー)」をローマ字表記に読みかえたものだ。

ブランドを手がけているのは、京都を拠点に活動しているクラフトブランド「PULL+PUSH PRODUCTS.(プルプッシュプロダクト)」。同ブランドのクラフトデザイナー佐藤延弘さんによれば、冒頭の疑問がブランド立ち上げのきっかけになったそう。
「実際にレジ袋を熱湯に入れてみました。
器を作ろうと思い、レジ袋を茶こしに挟んで煮え立ったお鍋に入れたのですが、柔らかくなっただけで溶けず、失敗でした」
その後もドライヤーやろうそく、電子レンジなどさまざまな方法を試すなかで、電気アイロンが使えることを発見。
「熱でできた縮みやシワ、凹凸がまるで生き物のようでした。とにかく、すごくよい感じだったので、なにかこの質感を生かした製品を作りたいと強く思ったのです」
2006年から開発をはじめ、イベントや展示会での販売を経て、2010年に商品化した。

素材はおもに45リットルのカラーポリ袋を使用。電気アイロンの熱でゆっくり溶かしながら、アイテムの用途に適した厚さまで重ねあわせて生地を完成させる。フィルムの重なりは最大で64層もあり、フィルムの層に閉じ込められた空気がクッションとなって、弾力のある軽くしなやかな生地に仕上がるのだという。


現在のところ、ラインナップはバッグやカードケースなど全6種。いずれも佐藤さんによるセルフメイドの少量生産製品だ。一番人気はブランド発表当初からあるカードケース「PE CARD CASE」(5,880円)。今春発売されたプラスチックスライダー付きのインナーケース「PE SLIDER CASE」(6,300円)も好評だという。

「選ばれる色によっても雰囲気が変わることもあって、年齢性別問わず幅広い層のお客様にお使いいただいています」
と佐藤さん。これからの季節、涼しさもある透明のフィルムで製作した半透明のフロストカラーや、発色の良い色合いのものが人気とのこと。


商品は全国のセレクトショップ、および京都・龍安寺の商店街通りにある直営ショップ「comado(コマド)」で販売中。ちなみにcomadoでは、PEシリーズのほか、モルタルで製作したPULL + PUSH PRODUCTS.のオリジナルアイテムも販売。新作発表や展示会も不定期でおこなっているというからチェックしたい。

「レザークラフトやウッドクラフトのように、ポリエチレンクラフトというジャンルが確立できたら良いなと密かに思っています」
と意気込む佐藤さん。素材の特徴や質感を生かし、素材の魅力を楽しんでもらえるような製品作りが目標だそうで、今後はPEのラインナップも増やす予定というから楽しみにしたい。

ほかにはない独特の手触りや素材感、ぜひ、自身の目と手で体感してみては。

(古屋江美子)