パスタって、何を好んで食べますか? 最近はペペロンチーノとかカルボナーラとか明太子とか、その辺が多いですかね、私は。

でもねぇ、この前ふとした拍子に喫茶店でナポリタンを食べてみたんですよ。
もう、久しく頼んでいなかったから。お弁当の隅っこに、いつもポツンと置いてあったりするし。それで十分だと、自分の中で済ませていた。

……いや、もう自分で自分を叱ってやりたいです。「あれは、通り過ぎた道だ」と、何を勝手に卒業した気分でいたんだろうか。美味しいんですよ。思わず、故郷に戻ってきたかのような郷愁に駆られてしまいました。

そして、世間は広い。実は、こんな団体まであるらしいのです。神奈川県横浜市に居を構えるは、その名も「日本ナポリタン学会」。
「地域SNS『ハマっち!』上で、横浜vs名古屋の“ナポリタン論争”が2008年に勃発しました。その論争の盛り上がりは止まらず、翌年には『横浜×名古屋・スパゲティナポリタン頂上対決』というイベントが開催され、横浜のナポリタンが名古屋のイタリアンに見事勝利! この盛り上がりを終わらせることなく『ナポリタンにより地域活性化を市民から仕掛けていこう』と対決した二人の発起により、ナポリタン学会は設立されました」(同学会・担当者)

敵同士が戦いの後に和解し、手を取り合って新たな目的に挑んでいく。
まるで「少年ジャンプ」のような展開を経て、この学会は誕生したらしい。

そんな同学会の大きな目的の一つに「横浜の地域資源としてのナポリタンの再評価とブランド化」があるとのこと。

……ん、地域資源? ナポリタンって、横浜発祥なんですか?
「スパゲッティ『ナポリタン』は、イタリアには存在しない日本独特の料理です。その起源・発祥については諸説ありますが、一般的には山下町の『ホテルニューグランド』で、終戦後のアメリカ進駐軍の接収がきっかけで生まれたとされる説がよく知られています」(担当者)
ホテルニューグランド4代目総料理長・高橋清一氏が発表した著書『横浜流‐すべてはここから始まった』によると、同ホテルを宿舎とした進駐軍がトマトケチャップとスパゲッティを軍用食として持ち込み、茹でて塩胡椒で味付けしたスパゲティーに和えて食べていたのを見て当時の総料理長・入江茂忠氏が「それでは味気ない」と改良、生み出したのが、まさにナポリタンだという。

……と断言できないのが、ナポリタンの奥深いところ。戦前の資料には「Spaghetti Napolitaine」の文字が見られるメニューが残っていたり、諸説は飛び交いまくり。まぁ、発祥の謎についてはひとまず置いておきましょうよ。その食文化の定着と普及の座標軸は、どうやら横浜であることに間違いはないみたいなのです。……と、同学会は主張しています。

ところで気になるのは、ナポリタン学会の活動内容。その辺、以下に列挙していきます。
・「ナポリタンファミリークッキングコンテスト」の開催
・「ナポリタンあられ」の発売
・FM戸塚にて「日本ナポリタン学会PRESENTS~横濱ナポ道~」放送(月1レギュラー)
・ワークショップの開催
・イタリア・ナポリにて開催のアニメイベントにナポリタン店舗を出店
・学会による認定店舗の選出

ここで注目したいのは、最後の「認定店舗」について。
これに選ばれると、言わば同学会の“お墨付き”という事になります。
「『地域活性化のため』という我々の趣旨に賛同し、特色があり、取材等に積極的に関わってくれるお店を対象に選出しております」(担当者)
あくまで目的は、ナポリタンの地域ブランド化。では、その中でも有名な老舗店舗等はあるのでしょうか?
「1946年創業の老舗洋食店『センターグリル』(横浜市中区)は有名です」(担当者)
同店の先代は、ナポリタン発祥の「ホテルニューグランド」初代総料理長であるサリー・ワイル氏経営の「センターホテル」で修業していた経歴を持つという。なるほど、だからこそ「センターグリル」という店名なのだな。

ところで、だ。横浜以外で営業していると「認定店舗」に選出される可能性はゼロなのでしょうか?
「我々と交流があり、地域活性化に寄与しているお店なら積極的に認定します」(担当者)
確かに、宮城県のカフェ「女川おちゃっこクラブ」も選出されているな。

なるほど。「我こそは」とナポリタンに自信を持つ店舗さん、日本ナポリタン学会の門戸は想像以上に広そうですよ!
(寺西ジャジューカ)
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