「モッ ハーイ バー ヨー!」

「ヨー!」

これは、ベトナムでの乾杯の挨拶。

1月30日は旧暦で大晦日にあたることから、銀座のベトナム居酒屋「ランヌンビンザン」では、旧正月「テト」を祝うカウントダウンパーティーが行われると耳にし、実際に訪ねてみた。


20時から0時半まで、食べ放題飲み放題つきで、料金は3500円(事前予約あるいはチラシ持参で500円引き)と、かなりリーズナブル。
屋台風の店内に入ると、あちこちに赤や金色などの正月飾りがあり、カウンターには梅の花が飾られていた。

カウンターにズラリと並ぶお酒は、2013年ワールドビアチャンピオンコンテストで金賞を受賞したという中部フエの「フーダビール」のほか、日本ではココでしか飲めないというフエのビール「フェスティバルビール」、ベトナムの黒ビール「ビアサイゴン」など。あまり見かけないビールに、それだけですでに高まってきてしまう。

長テーブルには生春巻きや手羽先、エビパンなど、定番のベトナム料理が多数並び、ビュッフェスタイルで、多数のお客さんたちと“宴卓”を囲む。

美味しいお酒とお料理を楽しんでいるうちに、運営会社「P4」のちょっと険しい顔のユルキャラ・ゴイ君も登場し、いよいよカウントダウン。


ところで、実際には、テトの時期はベトナムではどこもお店が閉まっているため、観光などは避けたほうが良いシーズンと聞くけれど、カウントダウンパーティーなどをするものなのだろうか。
古井店長や、ベトナム人スタッフの皆さんに聞いてみた。

「大晦日はもともと家族で集まって行うものでした。この時期、世界中のベトナム人がふるさとに帰るので、大家族が集まるんですよ。カウントダウンパーティーは最近行われるようになってきていて、南のほうではホーチミンなど、サイゴン川あたりで花火をあげるなどしています」

本場・ベトナムでは、大晦日やお正月に何を食べるのかというと……。
「『バインチュン』とか『バインテト』といって、ベトナム版のちまきを0時過ぎて年があけてから食べます。
ちまきには、緑豆や豚肉が入っていて、長時間もつことから、保存食としても使われます。このちまきは地方によってカタチが違い、ちまきを見るとみんなふるさとを思い出して『懐かしい』と言いますよ」

他に、豚の角煮や干し牛肉、ショウガのお菓子やココナツのお菓子なども正月料理の定番だそうだ。
また、ベトナムのテトは、日本と違い、門松や注連縄はないものの、先述のような正月飾りを施すほか、南の地方では神棚にグレープ、パイナップル、ちまき、マンゴー、パパイヤ、スイカなどを備えるという。
「日本と同じなのは、『リーシー』といって、お年玉の習慣があること。赤い袋に入れてあげるんです。また、日本と同じく、お寺に初詣に行きます」

また、ベトナムでは、「年が明けて最初に会う人」というのが非常に重要だそう。

「1年のはじめに会う人は、あまり不運な人ではなく、できるだけめでたい人が良いということから、電話であらかじめ予約して目出たい人に来てもらう人もいます」

本来の意味はよくわからないままに、ベトナムのお料理・お酒など、美味しいところだけ「テト」を味わった私たち全員に、この日、「お年玉」が赤い袋で配られた。
入っていたのは、なんと次回来店時に使える「生ビール5杯無料券」!

銀座で味わう「テト」は、なんともお得で、美味しいお祝いごとでした。
(田幸和歌子)