近年は日本からも多く出展するジャパンエキスポに比べ、パリマンガは、まだそこまで日本からの出展は多くない。多くは模造刀やコスプレ衣装、日本・アジア雑貨の現地小売店の出展が中心で、そこに任天堂やバンダイナムコゲームスなど一部関連企業がブースを開く。仏囲碁協会が碁の体験コーナーを設けるなど、文化関連の出展者もいる。
日本からは今年、漫画『超神伝説うろつき童子』作者の前田俊夫さん、アニメ『ああっ女神さまっ』のキャラクターデザインを担当した松原秀典さん、ヴィジュアル系バンドのジュピター、津軽三味線奏者の大野敬正さんが、ゲストとして招かれた。
フランスは欧州の中でも、特に日本ポップカルチャーのイベントが多い国だが、そのきっかけとは何だったのだろうか。
フランスで日本の漫画・アニメが広まるはずみは、1970年代にさかのぼる。なかでも、パリで漫画専門店を開いていたドミニク・ヴェレさんは、フランスの日本漫画を語る上でパイオニア的存在だ。ヴェレさんは当時、まだそれほど知られていなかった日本の漫画をフランスへ持ち込むことを考え、積極的に紹介した。
加えて、1978年から仏テレビ・アンテンヌ2(現・フランス2)で放送された『UFOロボ グレンダイザー(仏題:ゴルドラック)』の流行も、日本漫画の浸透させる追い風になった。仏テレビTF1も『クラブ・ドロテ』という番組で多くの日本アニメを流し、フランスの子供たちは日本アニメを見る機会が増えた。同番組で多くの日本アニメを放映できたのは、それらはすでに日本で人気が落ち着いた作品であり、テレビ局が買い取る際の値段も高くなかったことが幸いしたという。
公共放送フランス・テレビジョンによれば、昨年はフランスで1500タイトルの日本漫画が発売されたそうだ。それはフランスのバンド・デシネ(フランスやベルギーなど仏語圏での漫画の呼び名)市場の4割だという。30年前に運ばれた種は、紆余曲折はありながらも確実に育っている。
(加藤亨延)