「マレーグマ抱っこしにいらしてください~」という不思議なツイートが拡散されたのは2014年のこと。ぬいぐるみ作家のPlum'sこと梅津恭子さんの個展の企画で、人間の赤ちゃんでいうと8か月位の大きさのマレーグマのぬいぐるみが抱っこできるのだという。

企画に参加した人たちの写真を見ると、みんな優しい表情と手つきでそのマレーグマのぬいぐるみを抱いていたのがとても印象的だった。

実際に抱っこもできるユニークなクマのぬいぐるみ展
バラや苺など、鮮やかな赤いモチーフを身にまとった大小さまざまなテディベアたち。作品ごとの顔つきの違いにも注目。


あれから2年が経ち、梅津さんの新たな個展が5月14日(土)~25日(水)に、東京・表参道のビリケンギャラリーで開催されるという。

前回はクマを中心にさまざまな動物のぬいぐるみを展示していたが、今回はクマのぬいぐるみのみにテーマを絞った内容になるとのことだ。

梅津さんの作品はこれまでに人気画家・ヒグチユウコさんの個展などでもコラボ展示されたことがあるが、例えば同じ種類のクマでも作品ごとに顔つきや体格が異なり、それぞれのキャラクター性を感じさせる仕上がりが特徴的だ。
梅津さんに作品作りや今回の個展の見どころなどについて尋ねてみた。

梅津さんがクマのぬいぐるみに興味を持ったのは、さかのぼると25年ほど前になるという。

「書店の洋書コーナーで写真集やカレンダーを見たのがクマのぬいぐるみ、すなわち『テディベア』を知ったきっかけです。その後自己流で作ったり、テディベアの展示などに足を運ぶようになり、テディベア教室の存在を知りました。実際に代官山にあったカドリーラボに通うことになったのが、今から約20年前ですね」

「あえて他の動物を入れないテディベアだけの展示を」


個展はクマ尽くしのものになるということだが、同じ動物をモデルにすると作品ごとの差別化が難しくもなってくる。なぜあえて、クマONLYの展示をしようと考えたのだろうか?

実際に抱っこもできるユニークなクマのぬいぐるみ展
シロクマ、パンダ、マレーグマなど、愛嬌あふれるさまざまなクマたちが登場。


「会場のビリケンギャラリーでの初個展は6年前でしたが、ぬいぐるみ制作歴としては20年を迎えようとしています。テディベアをきっかけに今までいろんな動物制作にもチャレンジしてきましたが、ここで一度原点回帰をするという意味で、あえて他の動物を入れないテディベアだけの展示をしたいと思いました。テディベアというテーマを軸に、自由に楽しく作っています」

今回の個展ではテディベア作品を20体、クマのマスコットやバッジなど小さなものを約50点の展示販売(※一部作品を除き展示期間終了後に引渡し、または配送)を予定している。テディベアは「5cm~60cmまで多種多様を目標に制作しました。
中でも、大きな作品は普段あまり作らないのでシロクマは是非ご覧いただきたいです」とのこと。

実際に抱っこもできるユニークなクマのぬいぐるみ展
「ミミクロちゃん」というクマが、ハチのコスプレをした……という設定の作品。羽の部分の“33968”(ミミクロハチ)の文字も遊び心を感じさせる。


今回の個展でも行われる“抱っこ企画”のねらいとは?


冒頭で触れた前回の個展での来場者にぬいぐるみを抱っこさせてくれるという企画だが、作品に触れてはいけないことが多いアート展では珍しい試みだ。

「これは、テディベアというものの特徴でもあるかもしれませんが、お迎え(購入)いただく上で、手にした時の感触がとても重要と考えています。なので、ご購入をお考えの方には可能な限り手にしていただけるように考えています。
抱っこ企画は、初めからそうしようと思っていたものではなく、興味をお持ちくださった方に抱っこしていただいたのがきっかけで、その様子を撮影したい、撮影したものをネットに投稿したい……などの嬉しいご要望があり、さらにその投稿をご覧になった方がそれ目的でいらしてくれたりと、結果的に企画になりました。私自身、こういう初めから意図したわけではない、自然に生まれていく流れというものがとても好きです。
ちなみに今回も抱っこできるマレーグマを展示(同作品は販売なし)いたしますので、スタッフにお声掛けください」
(※初日5月14日のスタート時には抱っこ企画が実施できない可能性があるため、会場でご確認ください)

実際に抱っこもできるユニークなクマのぬいぐるみ展
いたずらっ子のような表情がキュートな作品。目の部分は丁寧な刺繍で仕上げている。


テディベア以外に展示販売される作品としては、ポストカードやシロクマ、パンダ、マレーグマのバッジ、フェルトを加工したマスコット(シロクマ、パンダ、マレーグマ、ヒグマ、レッサーパンダあり)。また、「クマどころか動物でもないのですが……」と梅津さんは恐縮していたが、凝った作りが好評なラフレシアのブローチなどがあるとのこと。
今回販売はされないが、人気パティシエ「milky pop.」(ミルキーポップ)さんによる、梅津さんの作品をモチーフにしたカラフルなアイシングクッキーの展示も予定している。

梅津さんのこれまでの活動の集大成的な内容となるこの個展。
「2004年~2012年頃の古い作品も10点ほど展示しますので、Plum'sのちょっとした歴史を感じていただけたら嬉しいです」とのことなので、歴代の作品を含めた個性あふれるクマたちに会いに出かけてみてはいかがだろうか。
(古知屋ジュン)