
筆者の地元、静岡県藤枝市で実に魅力的なイベントが開催中だ。
その名も「昭和レトロデザイン展 懐かしのホーロー看板とレトロゲーム体験」。
昭和の時代、街角を彩ったホーロー看板の実物が惜しみなく展示されているのである。
会場となるのは市民の憩いの場、蓮花寺池公園にある藤枝市郷土博物館・文学館。

公園は、今の季節は藤の花が見頃。多くの人でにぎわっている。

正面入口から右手にあるのが藤枝市郷土博物館・文学館。

今回の企画展は、5月21日(日)までの開催となる。

開館時間:9:00~17:00
休館日: 5月8日(月)、5/15(月)
入館料:大人(一般)200円、(団体20名以上)160円、中学生以下無料
蓮花寺池公園で開催中の「藤まつり」期間となる5月5日(金・祝)までは入館料無料!
ただし、駐車場が激混みの恐れありなんでご注意を。

ホーロー看板が彩るノスタルジック空間
会場は入り口からレトロムード満点。

誰もが知ってる不二家のペコちゃん。看板のイラストのテイストに歴史を感じる。
奥に見えるのは東芝のマスコット『光速エスパー』。漫画や特撮ドラマにもなっている人気キャラだ。

うっすらと記憶に残るオロナインのおばさん。
すり傷、やけど、とりあえず何でも塗りたくった万能薬。
手前に見えるゲーム機は……。

変形のパチンコ台。イラストの感じは『宇宙の騎士テッカマン』と『キャプテン・アメリカ』をミックスしたような感じ?
レトロなゲーム機が10円で実際に遊べちゃうのも嬉しい限り。

ホーロー看板の歴史や、当時の時代背景についてのイントロダクション。あらかじめ知っておくと、展示物のありがたみが一層際立つはず。

所狭しと飾られたホーロー看板が彩るノスタルジック空間。これは見応えがありすぎる!


オロナミンCや金鳥蚊取り線香などのホーロー看板も
おなじみオロナミンC。「元気ハツラツ!」は今も変わらぬキャッチコピーだ。
……で、「元気グングン!」ってどちら様でしょうか!?

炭酸入り高麗人参ドリンク『ジンセンアップ』?

オロナミンC同様に大塚製薬かと思いきや、別会社の商品らしい。デザイン寄せすぎである。
クロレラを使ったヤクルトは1950年代後半の商品らしい。この頃はまだ瓶のスタイル。
何だか美味しそう。

子どもの頃なじみのあったこの看板。いつの間にか「差別的」とクレームが付き、廃止となってしまったそうだ。何とも世知辛い世の中である。

由美かおるの『アース渦巻』も、ホーロー看板ではメジャーな部類。
牛乳石鹸、金鳥の蚊取り線香、三菱鉛筆など、今も現役バリバリの商品もチラホラ。
気になったのは『ペルメル』。

「科学的美粧料 家庭常備薬」とあるが、ググったところ、メンソレータム的なものだったらしい。

パンチの効きすぎたハードコアなデザイン。樟脳とは防虫剤のこと。こちらもググったら、驚くことに現役商品! 現行のパッケージにもこのキャラクターが健在だ。

顔面の圧力がスゴい。
閻魔大王にも見えるが、筆者的には魔除けのご利益があるといわれる鍾馗(しょうき)様に一票。

現代の看板にはない熱量を感じるデザイン
当時の思い出がよみがえるのか、じっくりと見入っている方が多かった印象。思い出話に花が咲くグループもあちこちに見受けられた。

ジャンルで固めて展示されているので見やすいし、ジャンルごとのカラーがのぞけて面白い。
バイク系は文字の斜体で疾走感を強調。

食品系はひと目で伝わるデザインが多い。

逆に、化粧品系はシンプルなデザインの資生堂以外はよくわからない感じ。

カラフル&POPな家電製品系。日立のカラーテレビ『キドカラー』のマスコット「ポンパ君」が可愛い。フィギュアあったら買っちゃうかも。

今回の展示物は、「日本一のホーロー看板収集家」佐溝力(さみぞちから)さんのコレクション、およそ6,000枚の中の一部だそう。
佐溝さんは、ホーロー看板の魅力をこう語っている。

「ホーロー看板には、手作り感覚とコピーの凄さなど、取りあげたらきりがないほどのインテリジェンスが詰め込まれています」
確かに!
この時代にふれていない方でも、秀逸なデザインに魅了されること必至。現代のデザインにはない熱量をビンビンに感じるのである。
今や絶滅寸前の昭和の文化や世相を反映しているのも面白い。
例えば、銭湯の注意書き。「高聲放歌(こうしょうほうか)」とは大声で歌うこと。銭湯で大声で歌うオヤジ、昔は確かにいたようなぁ。
「痰壺(たんつぼ)」は今でもあるのだろうか?

ハエ取り紙なんて文化も絶滅寸前? サザエさんの原作漫画でよく見かけたなぁ。

佐溝さんは、ホーロー看板の魅力をこうも語っている。
「眉唾で過大なコピーもありますが、それさえも感心してしまう面白いものがたくさんあります」
その通り!
やたらとパワフルなキャッチコピーが目を引くのもホーロー看板の魅力だろう。

「日本一」「一番」など、景気のいいフレーズが並ぶ商品が実に多いのだ。広告表現の規制もゆるかったのかも知れないが、右肩上がりの経済成長によるイケイケムードを全体的に強く感じるのである。
味の素の現在のコーポレートスローガンは「Eat Well, Live Well.(おいしさ、そして、いのちへ。」。
まぁ、正直ふわっとした感じは否めない。対して、この時代は「世界の調味料」と、簡潔な説得力でねじ伏せているのが痛快だ。

いつからこんなに注釈だらけで抽象的で、回りくどい広告ばかりになってしまったのだろうか……。

この博物館2階では、昭和の暮らしを支えた道具や家電製品も常設展示中。

こぢんまりとしたスペースに「お宝」が大集合といった趣き。

これまた感涙の思い出の品々と再会できるチャンス! お見逃しなく!

残念ながら館内は撮影禁止。入り口の記念撮影スポットでぜひ一枚。

「藤まつり」期間となる5月5日(金・祝)までは、公園内売店で「藤アイス」を販売中。

ほんのりと藤の花の香りがするどこか懐かしい味わい。今年のゴールデンウィークはどっぷりレトロ気分に浸ってみるのもアリでしょ?
(バーグマン田形)
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