「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった


え、こんなゲームあったっけ? 

よく見ると架空のカセットがずらりと並んでいます。東京・中野区のショップ・METEORにて開催中の「わたしのファミカセ展」。
クリエイターによる、夢のファミカセ製作展です。その数、なんと165本。ユニークな展示を取材しました。
「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった


ポップなデザインから、時代を感じさせる絵柄まで


いかにもファミコンっぽいレトロなものから、風刺が効いているものまで、展示されている作品のテイストはさまざま。その一部をご紹介しましょう。

・ポップ&キュート系

最近のキャラクターデザインっぽいものに混じって、80年代ファンシー風のレトロな絵柄もあります。見ているだけで楽しくなります。
カラフルなウミウシが宇宙空間を泳ぐ「ウミウシ☆しんりゃくちゅう」という作品も。一体どんなゲームなのかやってみたくなりますね。
「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
LOOP GIRL / ちょこ子

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
ウミウシ☆しんりゃくちゅう / 三戸

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
こじらし青春真っ最中! / 嵯幸


・世相を斬る? 風刺系

国有地に学校を作ったり、事業仕分けをしたり、時事ネタをモチーフにした作品もちらほら。「トランプの塔(THE TOWER OF TRUMP)」など、トランプネタの作品は3つもありました。
「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
トランプの塔 / 雨の日グラフィックス

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
小学校を立てよう / Lang_E

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
みんなの事業仕分け / 渡邉誠嗣


・どこかで見たことがあるデザイン系

中古販売店っぽいもの、消火器の説明っぽいもの、エアコンのパネルそっくりなもの、「お値段以上」のもの、思わずニヤリとしてしまう作品たち。もはやゲームという概念を飛び越えて、「何と組み合わせるか」のアイデア勝負になっていますね。

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
何でもお売り下さい! / マ.psd

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
消火でPON! / OLULU UP CENTER

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
リモコン / 赤うさD

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
オネダンイジョウ / ヨシカワタダシ

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
ファミリー定期 / BOKKADENcI


・元ネタ分かる? 完全パロディー系

トラックの荷台に乗せられ、どこかに連れていかれる牛が描かれた「ドナドナ」。SUNSOFTの白いカセットに、斜めの黄色い文字で書かれた「お嫁さん」。BL本や“痛バック”を抱えた女の子たちが描かれた「きまぐれ☆オトメロード」。(しかも、『腐女子のつづ井さん』風のタッチ)

ファミコン世代なら元ネタが分かると思いますが……。それぞれ「ドアドア」、「いっき」、「きまぐれオレンジロード」ですね。書体やデザインだけ残しつつ、絵柄をアレンジしているのがポイントのようです。

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
ドナドナ / MATSUMO

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
お嫁さん / asakura

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
きまぐれ☆オトメロード / Bon


・デザインがカッコいい! スポーツ系

シンプルでスタイリッシュな作品も。色使いやデザインなど、見た目からして洋ゲーっぽい雰囲気を漂わせる「SailStar」、「ParaSports」、「inkjet muscle」。これらは海外からの参加作品です。
「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
SailStar / Joseph Cross

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
ParaSports / Dufond Adrien

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
inkjet muscle / Joshua Lanphear



思いつきから始まり、海外まで知れ渡るイベントに


ファミカセ展主催の坂上聡之さんにお話を聞きました。
「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
METEOR店長(わたしのファミカセ展・主催)、坂上聡之さん


――ファミカセ展が始まった経緯について教えてください。

知り合いのデザイナーと雑談しているときに、店内にあったファミコンカセットを見て「これって額縁みたいだよね」という話になって。じゃあ、架空のカセットをつくって展示するのはどうか? というアイデアから生まれました。
第1回の開催が2005年で、今年で13回目です。

知り合いに声をかけて、最初に集まったのが20人ぐらい。紹介制で開催していたのですが、だんだん問い合わせが増えてきたので、2010年から一般応募もOKという形にしました。

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
インド人を右に! / ツモリ


――選考はあるのですか?

参加事項を満たしていれば、基本はどなたでも参加可能です。最初は「自分がプレイしたいゲームを作る」という趣旨だったんですが、よりアート寄りなゲームの枠を飛び越えた形で作品を発表する人も増えて、「こういうのもOKなんだ」と解釈が広がっている、というのが現状ですね。

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
分解 / DJ-GOMU?


―― 作品はどのように製作しているんですか?

売れないソフトの供養じゃないですけど、実際のカセットのラベルを貼りかえて作品にしています。
毎年本数が増えていくのでボディとして使うカセットは共用で使っていて、足りなくなったらまた調達して、という感じですね。

作品はすべてデータ入稿です。オフィシャルサイトにエントリー用のテンプレートを用意してあるので、データを送ってもらって作っています。現物を送ってもらっちゃうと紙やプリンターの違いでクオリティーに差が出ちゃうので、そこは均一化したいという意図で出力は全てこちらで行っています。ボディの色は作者の希望を聞いて出来るだけ近いものを選んでいます。

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
ふーふークリーナー / 田畑


――海外からの作品も多いようですね?

自然に広まっていきましたね。
ゲームカルチャーが世界中にあって、どの国にも好きな人がいますから。あとはTwitter、FacebookなどSNSの普及に伴って、どんどん増えていったというのもあります。日本語でかなり細かい応募規約を書いているんですが、それでも熱意のある人が送ってくれますね。

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
Eat Dots! / J. Mystery


――日本と海外で違いはありますか?

日本人はパロディーなど、フォーマットをどう崩すかを考えたものが多いです。海外の作品は、純粋に自分が遊びたいゲームをイメージしている感じはありますね。「ファミカセをキャンバスにする」っていう、アートとしての側面で捉えている人も多いようです。

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
RUN&BUN ハンバーガー積む / Richard Perez



アメリカでゲーム化の動きも


――ビジュアルから派生して、「実際にゲームを作りたい」という話もあったとか?

アメリカにインディーゲーム作家たちによる「A GAME BY ITS COVER」というコンペティションがあって、このファミカセ展に合わせて開催されているようです。ただ、こちらでは中身には関与していないので、各作家さん同士で直接やり取りをしている感じです。 毎年参加している作家さんから「去年の作品がこんなゲームになったよ」と報告をもらうこともありますね。

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
ファミリーボクシングエース / 白玉【しらたま】


――完成したゲームをプレイしてみて、どうでしたか? 坂上さんご自身はゲーム化についてあまり乗り気ではなかった、という話も聞きましたが?

「本当にゲームになったんだ、すごいな!」っていう驚きが大きかったですね。ただファミカセ展は、作品を見てそれぞれが「どんなゲームだろう?」と想像するのが面白いので、リアルなゲームにすると一つの形になっちゃうから、それは違うかなっていう思いも最初はありました。でも、実際にプレイしてみたいっていう気持ちも理解できるので。出来たら出来たで、結局遊んじゃいますけどね(笑)

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
当たり / Die(Ketchuparts)


――会場では毎年、人気投票もやっているんですよね?

翌年のメインビジュアルを決めるために、お客さんにベスト3を投票してもらっています。結果はイベント終了後、数日以内に発表する予定です。

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
昨年の人気投票第1位作品「王将 / Machikoudonco」



実際にファミコンでも遊べる!


会場内にはファミコン本体も置いてあり、当時アメリカで発売されていた「Action 52」というオリジナルミニゲーム集などもプレイできます。
「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった


今年の全165作品が掲載されているミニポスターも無料で持ち帰り可能です。裏面には作者のコメントも掲載されています。
「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった


筆者はいまでも本体を持っている、ど真ん中のファミコン世代。思わずニヤリと笑ってしまう作品がいっぱいで、つい子どもの頃を思い出してしまいました。ちなみに坂上さんが好きなゲームはスペランカーだそうで、「あー、ちょっとした段差ですぐ死んじゃうやつですよね」と、しばしゲーム談議に花が咲きました(笑)
「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった


わたしのファミカセ展2017は、中野「METEOR」地下1階で5月30日まで開催中です(入場無料、定休日は水曜日)。
詳しくは下記HPまで。
http://famicase.com/


「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
わわゅしプッポダーソ / みゐ輔丼

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
BLACK FURYO / Lololacre

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
くえすちょんくえすと / tutoji

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
ぺ / ファミコン探偵団(ヤスナ■+ノゾム)

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
最後の仕上げだ! アノテコノテ / 田中千尋

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
JK暗殺者 / Jose Salot

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
恋のナックルボール / ジャパン

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
ころしあむ / おも満しろ太郎

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
犯罪(借りパク)を見逃さない! / Keishi Sogabe

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
パパ、島流しだけはもうやめて / MORPHING TURN

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
錆石コレクションGX / 清水昭利

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
お母さん助けって! / Richard Ford III, RF3RD

「わたしのファミカセ展」は妄想とは思えないクオリティーだった
『削除されました』 / ナツミ


(村中貴士/イベニア)