
え、こんなゲームあったっけ?
よく見ると架空のカセットがずらりと並んでいます。東京・中野区のショップ・METEORにて開催中の「わたしのファミカセ展」。

ポップなデザインから、時代を感じさせる絵柄まで
いかにもファミコンっぽいレトロなものから、風刺が効いているものまで、展示されている作品のテイストはさまざま。その一部をご紹介しましょう。
・ポップ&キュート系
最近のキャラクターデザインっぽいものに混じって、80年代ファンシー風のレトロな絵柄もあります。見ているだけで楽しくなります。カラフルなウミウシが宇宙空間を泳ぐ「ウミウシ☆しんりゃくちゅう」という作品も。一体どんなゲームなのかやってみたくなりますね。



・世相を斬る? 風刺系
国有地に学校を作ったり、事業仕分けをしたり、時事ネタをモチーフにした作品もちらほら。「トランプの塔(THE TOWER OF TRUMP)」など、トランプネタの作品は3つもありました。



・どこかで見たことがあるデザイン系
中古販売店っぽいもの、消火器の説明っぽいもの、エアコンのパネルそっくりなもの、「お値段以上」のもの、思わずニヤリとしてしまう作品たち。もはやゲームという概念を飛び越えて、「何と組み合わせるか」のアイデア勝負になっていますね。





・元ネタ分かる? 完全パロディー系
トラックの荷台に乗せられ、どこかに連れていかれる牛が描かれた「ドナドナ」。SUNSOFTの白いカセットに、斜めの黄色い文字で書かれた「お嫁さん」。BL本や“痛バック”を抱えた女の子たちが描かれた「きまぐれ☆オトメロード」。(しかも、『腐女子のつづ井さん』風のタッチ)
ファミコン世代なら元ネタが分かると思いますが……。それぞれ「ドアドア」、「いっき」、「きまぐれオレンジロード」ですね。書体やデザインだけ残しつつ、絵柄をアレンジしているのがポイントのようです。



・デザインがカッコいい! スポーツ系
シンプルでスタイリッシュな作品も。色使いやデザインなど、見た目からして洋ゲーっぽい雰囲気を漂わせる「SailStar」、「ParaSports」、「inkjet muscle」。これらは海外からの参加作品です。



思いつきから始まり、海外まで知れ渡るイベントに
ファミカセ展主催の坂上聡之さんにお話を聞きました。

――ファミカセ展が始まった経緯について教えてください。
知り合いのデザイナーと雑談しているときに、店内にあったファミコンカセットを見て「これって額縁みたいだよね」という話になって。じゃあ、架空のカセットをつくって展示するのはどうか? というアイデアから生まれました。
知り合いに声をかけて、最初に集まったのが20人ぐらい。紹介制で開催していたのですが、だんだん問い合わせが増えてきたので、2010年から一般応募もOKという形にしました。

――選考はあるのですか?
参加事項を満たしていれば、基本はどなたでも参加可能です。最初は「自分がプレイしたいゲームを作る」という趣旨だったんですが、よりアート寄りなゲームの枠を飛び越えた形で作品を発表する人も増えて、「こういうのもOKなんだ」と解釈が広がっている、というのが現状ですね。

―― 作品はどのように製作しているんですか?
売れないソフトの供養じゃないですけど、実際のカセットのラベルを貼りかえて作品にしています。毎年本数が増えていくのでボディとして使うカセットは共用で使っていて、足りなくなったらまた調達して、という感じですね。
作品はすべてデータ入稿です。オフィシャルサイトにエントリー用のテンプレートを用意してあるので、データを送ってもらって作っています。現物を送ってもらっちゃうと紙やプリンターの違いでクオリティーに差が出ちゃうので、そこは均一化したいという意図で出力は全てこちらで行っています。ボディの色は作者の希望を聞いて出来るだけ近いものを選んでいます。

――海外からの作品も多いようですね?
自然に広まっていきましたね。

――日本と海外で違いはありますか?
日本人はパロディーなど、フォーマットをどう崩すかを考えたものが多いです。海外の作品は、純粋に自分が遊びたいゲームをイメージしている感じはありますね。「ファミカセをキャンバスにする」っていう、アートとしての側面で捉えている人も多いようです。

アメリカでゲーム化の動きも
――ビジュアルから派生して、「実際にゲームを作りたい」という話もあったとか?
アメリカにインディーゲーム作家たちによる「A GAME BY ITS COVER」というコンペティションがあって、このファミカセ展に合わせて開催されているようです。ただ、こちらでは中身には関与していないので、各作家さん同士で直接やり取りをしている感じです。 毎年参加している作家さんから「去年の作品がこんなゲームになったよ」と報告をもらうこともありますね。

――完成したゲームをプレイしてみて、どうでしたか? 坂上さんご自身はゲーム化についてあまり乗り気ではなかった、という話も聞きましたが?
「本当にゲームになったんだ、すごいな!」っていう驚きが大きかったですね。ただファミカセ展は、作品を見てそれぞれが「どんなゲームだろう?」と想像するのが面白いので、リアルなゲームにすると一つの形になっちゃうから、それは違うかなっていう思いも最初はありました。でも、実際にプレイしてみたいっていう気持ちも理解できるので。出来たら出来たで、結局遊んじゃいますけどね(笑)

――会場では毎年、人気投票もやっているんですよね?
翌年のメインビジュアルを決めるために、お客さんにベスト3を投票してもらっています。

実際にファミコンでも遊べる!
会場内にはファミコン本体も置いてあり、当時アメリカで発売されていた「Action 52」というオリジナルミニゲーム集などもプレイできます。


今年の全165作品が掲載されているミニポスターも無料で持ち帰り可能です。裏面には作者のコメントも掲載されています。

筆者はいまでも本体を持っている、ど真ん中のファミコン世代。思わずニヤリと笑ってしまう作品がいっぱいで、つい子どもの頃を思い出してしまいました。ちなみに坂上さんが好きなゲームはスペランカーだそうで、「あー、ちょっとした段差ですぐ死んじゃうやつですよね」と、しばしゲーム談議に花が咲きました(笑)

わたしのファミカセ展2017は、中野「METEOR」地下1階で5月30日まで開催中です(入場無料、定休日は水曜日)。
詳しくは下記HPまで。
http://famicase.com/













(村中貴士/イベニア)