
東京に先行して神戸で開催された同展覧会では、27万人以上を集めた「怖い絵」展。一体どんな怖い世界が観られるのでしょうか? 実際に足を運んでみました。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーを代表する名画が日本初上陸!
今回の「怖い絵」展で絶対に見逃してはならない作品の一つ、《レディ・ジェーン・グレイの処刑》は、展覧会チラシの表紙にもなっています。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーと長年の交渉を続け、数年越しに貸出許可がおりた本作は、イギリス本国でも大変人気の高い作品です。特別監修の中野京子は、この作品が借りられなければ開催は諦めようと思っていたと言うほど。

Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, (C) The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902
イングランド最初の女王と言われている、ジェーン・グレイ。歴史に翻弄された彼女は、玉座に座ったのはたったの9日間。その半年後には処刑されてしまいます。まだ16歳という若さでした。そんな彼女の処刑シーンを描いた本作は、綿密に計算しつくされた画面構成からなり、演劇的な印象を我々に与えます。

ちなみに、ただ絵を眺めるだけでは絵の背景や物語の裏側を知るのは難しいですよね。今回の展覧会では、解説パネルがついています。
怖さも色々!? 神話から殺人鬼まで怖さのバリエーションも豊富
恐怖をテーマに約80点の西洋絵画・版画が展示されている同展は、6つの章構成となっています。ギリシャ・ローマ神話や聖書で語られる物語から、悪魔や怪物といった分かりやすい恐怖、悲劇的なエピソードや運命に奔走された人々の姿を描いた歴史など、様々な「怖さ」を感じることができます。
有名な戯曲「サロメ」のクライマックスシーン、ヨハネの首を前に恍惚とした表情を浮かべるサロメ。

近代絵画の父と呼ばれるポール・セザンヌの《殺人》。暗い浜を背景にした暴力的なシーン。セザンヌの心の闇が垣間見える本作は、これまで私たちがセザンヌに持っていたイメージとはかけ離れています。

切り裂きジャックの正体は画家だった!? 19世紀末にロンドンを恐怖に陥れた“切り裂きジャック”。その有力容疑者のひとり、シッカートの作品。何とも不気味な雰囲気ですが、これをきっかけに未解決事件の謎が解ける日も近いかも?

一見荘厳な風景画のように見える作品ですが、画面前景には兵士に引き立てられる人物が描かれており、ウェールズの暗い歴史が仄めかされています。

女優・吉田羊さんによる音声ガイドも忘れずにチェック!
絵画に秘められた「恐怖」を読み解く本展での必須とも言えるアイテム「音声ガイド」は、女優の吉田羊さんが担当。中野京子氏書き下ろしのスクリプトで、絵の背景にある物語をより身近に感じることができます。
また、東京会場限定のボーナストラックとして、ロペとアキラ先輩が登場! 聞き忘れのないようにしなきゃいけませんね。

「怖い絵」著者、作家・ドイツ文学者中野京子氏による作品解説

今回お邪魔した報道向け内覧会では、「怖い絵」著者である中野京子氏によるギャラリートークがあり、開催までの経緯や、オデュッセウスを描いた作品について直接お話を聞くことができました。

人に魔酒を飲ませて豚にしてしまう魔女キルケーを描いた《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》。作品の中のオデュッセウスと同じく、鏡に自分を映すことができる撮影スポットも。


ここでしか手に入らない「怖い絵」展グッズ

展覧会で楽しめるのは絵画ばかりではありません。様々な企業とコラボレーションした、限定のグッズも要チェック。

これまでの特別展とは異なる、「恐怖」を切り口とした「怖い絵」展。「怖い絵」シリーズを読んだ人はもちろん、まだ読んでいない人も、これを機にあらたな絵画の楽しみ方に出会える展覧会となること間違いなしです。

Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, (C) The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902





(おぜきめぐみ/イベニア)