「お互いの距離感を探らなくていい間柄」。福山潤は、宮野真守との関係をそう表現する。
劇場3部作とTVシリーズで描くバトル・サバイヴ・サスペンス『亜人』に、中野攻役としてストーリーの途中から参加する福山は、宮野が本作の主人公・永井圭を演じているからこそ「すごく助かりました」と、初収録時を振り返る。一方、宮野も「福山さんが(頭の中で)イメージしている感覚がわかる」と言い、これまで築き上げてきた絶大な信頼がお互いにあるようだ。そんな2人に劇場3部作の第2部『亜人 ‐衝突‐』について話を聞いた。

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 『亜人』は、決して死なない新人類・亜人と、それを追う日本国政府、両者の戦いを本格的なアクションと緻密な心理描写で描く同名コミックが原作。昨年11月に第1部『亜人 ‐衝動‐』が公開されスマッシュヒットを記録。第2部となる本作は、亜人研究所から逃走を図った永井圭の行方、帽子の男こと佐藤の真の狙い、そして、窮地に立たされた戸崎の取った思いも寄らぬ行動。すべてが交錯し、第1部以上のアクションと、衝撃の展開が待ち受ける…。

 「第2部は、圭が自分が亜人であるという事実をしっかり受け入れて、立ち向かっていく姿が描かれている」と語った宮野。第1部では、自身が亜人だったということが、一度“死んだ”ことでわかり、普通の高校生だったはずの圭が突如、政府ほか一般市民に追われ、戸惑い、悩む姿が描かれる。宮野は、第1部から2部にかけて心情が大きく変わる永井圭という人物について「ストーリーの変化だったり、圭の心境の変化を捉えつつ、自分で捉えきれないところは、瀬下総監督とディスカッションしながら収録を進めました」と明かす。

 本作は、音声を先に収録し、絵を後から作成するプレスコという手法が取られており、また収録は通常のTVアニメーションのように、毎週順を追って行われたという。映画とTVシリーズが絡み合い、2本軸で描く『亜人』について宮野は「TVシリーズは、心情や細かい描写をより丁寧に見せており、映画はインパクトのある見せ方と言いますか、実際に僕らが収録していた流れや組み方などを変えていたり、綿密に計算され、三部作としてエンタメ感満載で見せていると思います」と分析する。
 第1部から2部にかけて、圭の大きな心情の変化を演じてみせた宮野とは一転、劇場版では第2部から登場するキャラクター中野攻を演じる福山は、本作のプレスコに途中から参加した。緊張などもあったとのことだが「新参者だからこそできる自由さでやらせてもらいました」と、大きな笑顔を見せる。さらに「今までの世界観を壊すようなキャラクターだったので…収録へはランニングに自転車で行っちゃいました(笑)」とも。宮野も福山の登場を「すごく元気に、汗だくで現場に入ってきました(笑)」と振り返った。

 第2部以降は、圭と攻が行動を共にするシーンが多いため、自然と宮野と福山の共演シーンも多い。互いに、宮野ないし福山とのプレスコは「面白かった」と口にし、宮野は「仕掛け、仕掛けられみたいなやりとりの中で、出てくる表現もあった」と語る。「それに、唯一と言っていい(攻は)アドリブを入れられるキャラでもあるので(笑)、それに引き出される圭のアドリブなどもあって、そのライブ感が、非常に楽しかったです」と充実の表情。

 その“ライブ感”というのが、圭と攻が取っ組み合いをする崖のシーンにあるという。通常、プレスコ収録では、取っ組み合いなどの激しいやりとりが続くシーンは、片方が収録した後、その前者の音声を確認しながら後者が収録することが通例とのことだが、「あの崖のシーンは二人一緒に収録をさせてもらいました」と明かした福山。そのため「僕、本当に収録で死ぬかもなって思うくらい息を止めてました」と告白。「あの(崖の)シーンだけは、モノローグも僕と宮野で決めて、実尺で演じていたので…僕ら命削りながら演じていました」と言い、強く印象に残ったシーンであるようだ。

 宮野と福山、互いに信頼し合うからこそ演じ切ることができた劇場アニメ3部作の第2部『亜人 ‐衝突‐』は5月6日より3週間完全限定公開。
(取材・文・写真:鈴木沙織)
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