井上真央が主演を務める連続テレビドラマ『明日の約束』(フジテレビ系)が17日にスタートし、平均視聴率8.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。井上が演じるのは、高校のスクールカウンセラーとして勤務する主人公・藍沢日向。

学校や家庭で問題を抱えている生徒の心のケアを行う一方で、実は自身も“過干渉”な母親・尚子(手塚理美)との関係に悩んで育ってきた、という役どころだ。

 第1話では、日向は不登校が続く1年生のバスケットボール部員・吉岡圭吾(遠藤健慎)が気になり、クラス担任の霧島直樹(及川光博)とともに家庭訪問を実施。圭吾は元気そうに見えたものの、日向は圭吾とその母親・真紀子(仲間由紀恵)の様子に違和感を覚える。そんななか、学校では2年生のバスケ部マネージャー・増田希美香(山口まゆ)が万引き騒動を起こす。日向が事情を聞くと、希美香の母親・麗美(青山倫子)は浮気して離婚に至った上、その後も次々と恋人を作り、娘の誕生日にも男と遊ぶといった“ネグレクト”といえる行動を繰り返していたことが判明した。

 第1話の終盤で日向に「好き」だと告白するも、その翌日に不可解な死を遂げてしまった圭吾が抱えていた“闇”、そして“死の真相”の解明がドラマの主軸となるだろう。
だが、最も注目すべきは同時に描かれる母親たち……「毒親」の存在。「毒親」とは、精神医学者のスーザン・フォワードの著書『毒になる親(原題/Toxic Parents)』から生まれた俗語で、「子どもの人生を支配する親」を指す。過干渉やネグレクトを行う親も子どもにとって“毒”になることから、「毒親」と呼ばれているようだ。

 日向の母・尚子、圭吾の母・真紀子、希美香の母・麗美といった3人の「毒親」たちのなかで、周囲から見て「虐待だ」と比較的わかりやすいのは子どもに暴言を吐き、男に夢中で家にも帰らない麗美だろう。一方、尚子や真紀子は一見穏やかで、子どもに対して優しい口調で“抑圧”を行うため、周囲どころか本人も初めは“毒”に気づいていなかったのではないだろうか。

 私が「怖い」と感じたのは、尚子が食事を済ませて帰ってきた日向に「せっかく」ケーキを買ってきたのに……と“罪悪感”を与えるような言い方をしていたこと。
また、真紀子が不登校の圭吾を“心配している”という体で行動を制限していた描写は、「怖い」を通り越して「気持ち悪い」と感じてしまった。だが、きっと現実にもこうした「毒親」がいて、苦しんでいる子どもたちが存在するのだろうと考えると、目を背けてはならないとも思う。

 だからこそ、『明日の約束』は気軽に見られるドラマではなさそうだ。第1話を見る限りストーリーはしっかりしていたし、井上やほかの役者陣、高校生役のキャストに至っても演技面での不満はなく、十分リアリティを感じられた。それゆえに“明るいドラマ”のイメージは皆無で、一定層の視聴者には敬遠されるかもしれない。とはいえ、話題を呼べる内容だと思うので、評判が広まれば視聴率の右肩上がりも狙えるはずだ。
なお、初回から仲間の“毒親オーラ”が特に半端なかっただけに、今後は彼女の“怪演”にも期待したい。
(文=美神サチコ/コラムニスト)