品川~名古屋間で建設が始まっているリニア中央新幹線。工事「三大難所」最後の場所が2016年12月19日、本格着工されました。

いったい何が難しいのでしょうか。また中央新幹線で東京と名古屋、大阪の移動はどうなるのでしょうか。

南アルプス、品川、そして…

 JR東海が2016年12月19日(月)、中央新幹線・名古屋駅新設の安全祈願と愛知県における起工式を実施。東京(品川)~名古屋間で建設が進んでいる中央新幹線、その「三大難所」最後のひとつが本格着工されました。

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赤線が中央新幹線のルートで、オレンジ色は中央新幹線名古屋駅が設けられるおおよその場所。左が大阪、右が東京方面(国土地理院の空中写真を加工)。

 JR東海の柘植康英社長は中央新幹線の品川~名古屋間建設にあたって、特に難工事が予想される場所をみっつ挙げています。南アルプストンネルと品川駅、そして名古屋駅です。

 山梨・静岡・長野県にまたがる南アルプストンネルは、標高3000m級の山岳地帯に長さ25kmのトンネルを掘削、地表より約1400m深い場所を通ることから“最大の難関”になる可能性もあり、2015年12月18日に中央新幹線で最も早く本格着工されました。

 品川駅と名古屋駅が難しい理由は、既存駅の直下に“列車を運行させながら”中央新幹線の駅を新設せねばならないためです。

 そのうち、東海道新幹線ホームの真下へ重なるように設けられる品川駅は2016年1月27日に本格着工。そしてきょう2016年12月19日、中央新幹線「三大難所」最後のひとつである名古屋駅が、本格的に着工されました。

最後の「三大難所」に本格着工 リニア中央新幹線

愛知県の起工式に出席した、右から河村名古屋市長、大村愛知県知事、柘植JR東海社長、白石大林組社長(2016年12月19日、恵 知仁撮影)。

 中央新幹線の名古屋駅は、地上のJR在来線・新幹線名古屋駅と直交する形で、その地下およそ30mの場所に設けられる計画。安全祈願・起工式に出席したJR東海の柘植社長は「上に新幹線が、そして在来線は24時間走っています。その直下で列車を運行しながら行う、大変難しい工事です」と話します。地下を走る名鉄名古屋本線、名古屋市営地下鉄東山線とも交差します。

 なお、愛知県内初の中央新幹線本格着工は2016年11月7日の名城非常口ですが、名古屋駅の本格着工と愛知県の起工式は本日2016年12月19日です。

列車を止めず、地下にリニア駅を作る方法 名古屋駅ならではの難しさも

 全長およそ1kmある中央新幹線・名古屋駅工事のうち、このたび本格着工されたのは「中央東工区」と「中央西工区」の合計およそ220m。地上から掘り進めて地下に駅を造ったのち、土をかぶせる開削工法で進められます。

最後の「三大難所」に本格着工 リニア中央新幹線

名古屋駅在来線直下の「中央東工区」と新幹線直下の「中央西工区」(画像出典:JR東海)。

 中央東工区は在来線の直下にあたる部分で、まず盛り土の上に敷かれている在来線線路を、橋りょう構造(工事桁)に置き換えるというのが主な工事。そして中央西工区は新幹線の直下にあたる部分で、まず新幹線の高架橋を仮受けする杭を打設し、地中へ鉄筋コンクリートの壁を構築するというのが主な工事です。地上を走る列車に影響を与えないよう、こうして最初に地上の線路を支える構造を準備するなどしてから、地下の中央新幹線駅が造られていきます。

最後の「三大難所」に本格着工 リニア中央新幹線

「中央東工区」と「中央西工区」の工事概要図(画像出典:JR東海)。

 またJR東海の柘植社長は「名古屋駅の工事が難しい理由」に、名古屋駅には130年という歴史があり、昔の支障物が地中に埋まっていることも挙げます。名古屋駅は1886(明治19)年5月1日に開業。今年、130周年を迎えました。

 中央新幹線(品川~名古屋)の駅建設で本格着手されたのは、 名古屋駅が品川駅に続き2番目。駅はこのほか神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県飯田市、岐阜県中津川市にひとつずつ設けられる計画です。

 東京と大阪を結ぶ計画の中央新幹線は、500km/hで走る超電導リニアモーターカーを採用。2027年に品川~名古屋間から開業し、現在、新幹線「のぞみ」が90分程度を要する同区間を最短およそ40分で結ぶ予定です。料金は「のぞみ」の700円増し程度が考えられています。品川駅と大阪市(新大阪駅を予定)のあいだは、「のぞみ」が150分程度のところ67分、1000円増し程度です。

 起工式に出席した、リニア中央新幹線建設促進期成同盟会の会長を務める大村秀章愛知県知事は「国民経済的には全線(大阪まで)の早期開業を願いますが、まず名古屋まで順調着実に」と、河村たかし名古屋市長は「リニア開業はどえりゃあ(ものすごい)ありがたいこと。日本中の人に名古屋、愛知へ来てもらう街づくりを行う決意を、(起工式で)新たにしました」と中央新幹線に対する期待を述べています。

最後の「三大難所」に本格着工 リニア中央新幹線

山梨実験線で試験走行をしている超電導リニアモーターカーL0系。体験乗車も実施されている(2016年6月、恵 知仁撮影)。

 名古屋~大阪市間の開業は2037年の見込み。それまで名古屋駅では、地下のリニアと地上(高架)の新幹線とのあいだで乗り換えが発生しますが、JR東海はエスカレーターやエレベーターなどの移動設備を設置、乗り換えに必要な時間は3分から9分程度としています。

 また、中央新幹線(品川~名古屋)の起工式は2015年12月18日の山梨県、2016年1月27日の東京都、11月1日の長野県、12月13日の岐阜県に続き、今回12月19日の愛知県が実施された5つ目の都道府県。神奈川県と静岡県ではまだ行われていません。

【写真】東海道新幹線と異なる超電導リニアL0系の車内

最後の「三大難所」に本格着工 リニア中央新幹線

営業運転仕様としてJR東海が製造した超電導リニアL0系の車内。座席は東海道新幹線の2人+3人ではなく2人+2人(2016年6月、恵 知仁撮影)。