さまざまな駅弁が販売されている昨今、植木鉢に入ったものも存在します。滋賀県・草津駅の「お鉢弁当」です。
駅弁の容器はほとんどの場合、容易に捨てられるよう作られていますが、これを別の用途に再利用することを前提とした商品が存在します。
まごうことなき植木鉢の器、その名も「お鉢弁当」(2015年1月、恵 知仁撮影)。
それは、JR東海道本線・草津線の草津駅(滋賀県草津市)にて販売されている「お鉢弁当」(税込930円)です。器が信楽焼の植木鉢で、底には穴が空いており、食べたあとにラディッシュ(ハツカダイコン)を育てられるよう、種まで付いています。製造元の南洋軒(同)ウェブサイトでは、「一度食べて二度おいしい」というキャッチコピーとともに紹介されています。
なぜこのような駅弁が誕生したのか、南洋軒に聞きました。
――どうして「お鉢弁当」をつくったのでしょうか?
地元ゆかりの食材などを使った「ユニークな発想の弁当」というコンセプトのもと、滋賀の信楽焼の植木鉢を器にするアイデアが生まれました。「エコ」の考えが浸透したいまでは珍しくないかもしれませんが、器をリサイクルする発想は、発売した1990(平成2)年当時としては奇抜だったと思います。
――やはり器を持ち帰る人は多いのでしょうか?
大半の方が持ち帰ると聞いています。
なぜラディッシュの種なのか?――なぜラディッシュの種なのでしょうか?
私は発売当時の担当者ではないため推測になりますが、植木鉢で育てやすい野菜を選んだのでしょう。
――売上はいかがでしょうか?
取材はよく受けるのですが……それほど売り上げはありません。幕の内や、肉をふんだんに使った弁当と比べると、内容が地味なのかもしれません。ただ、販売を止めることはありません。
――JR草津駅以外でも買えますか?
デパートの駅弁大会などに採用されれば出品することもありますが、通常の販売は草津駅のみです。受注生産のため、購入の3日前までにご予約下さい。

園芸を意識したような掛けひも。

新聞を模した掛け紙は、その名も「南洋軒新聞」。

ラディッシュの種がついて「二度おいしい」。
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弁当の掛け紙は「南洋軒新聞」と題した新聞を模したもので、「お鉢弁当」の誕生秘話がつづられているというユニークなもの。種の袋にはラディッシュの育て方も記されています。「食べたあともおいしい」だけでなく、「食べる前から面白い」駅弁かもしれません。

お弁当の中身は、高菜の炊き込みご飯にタケノコ、わらび、だし巻卵などが盛り付けられている(画像:南洋軒)。