森の中を行くモノレール、廃線を利用したレールバイクなど、「非日常」を楽しめる少し変わった乗り物を紹介します。
非日常な乗り物に乗ってみたい【本記事は、旅行読売出版社の協力を得て、『旅行読売』2016年10月号に掲載された記事「宮田珠己が行くニッポン偏愛観光地 その19」を再構成したものです】
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乗り物に乗るのが好きだ。
徳島県に変わったモノレールがあるというので乗りに行った。
その名も奥祖谷観光周遊モノレール。
モノレールと聞くと、東京モノレールや大阪モノレールといった公共交通を思い出すが、この観光モノレールは所定のコースを一周して戻ってくる2人乗りのアトラクションだ。驚くのはその所要時間。65分もあるのである。
奥祖谷観光周遊モノレールはずっと森の中。
展望の開ける場所もあるにはあるが、ほぼ全行程が森の中。途中、渓流だの池だの洞穴だのといった見どころもない。にもかかわらず飽きない。なぜだろう。
山がちな日本では、場所によって個人で小さなモノレールを設置し、畑などへの往復に利用しているところがある。
乗ってみるとわかるが、急斜面をぐいぐい上る力強さも心地よく、森林浴を楽しむつもりで乗れば65分はちっとも長くない。むしろ、のんびりした癒やしの時が過ごせる。だまされたと思って乗ってほしい。ただし、上にいくほど寒くなるので防寒の用意と、事前にトイレは必須で。
廃線跡や運河の面白い乗り物変わった乗り物といえば、最近、人気上昇中なのが、廃線を利用したレールバイクである。
岐阜県飛騨市にある旧神岡鉄道レールマウンテンバイク「ガッタンゴー」では、レール上を専用の自転車で走ることができる。自分の力でレールを走るなんて、なかなかできない体験ではないだろうか。
片道約3kmのコースは、トンネルあり鉄橋あり廃駅ありと見どころ盛りだくさん。自転車でも、ちゃんとあのガッタンゴットンという音がするので雰囲気たっぷりである。
んんん、往復6kmじゃ欲求不満だよ、もっともっと走りたい!
と思ったら、帰りは上り坂になって、電動アシスト付きとはいえ、終わってみれば結構きつかった。ずっと下るならいいが、帰りを考えると往復6kmぐらいがちょうどいいのかもしれない。

ガッタンゴーはトンネルあり鉄橋あり。
このようなレールバイクは近年少しずつ増えてきており、ほかにも三重県熊野市の紀州鉱山や、秋田県の大館・小坂鉄道レールバイク、さらに2016年、岩手県宮古市の旧岩泉線でも新たなレールバイクがオープンした。
自分で漕ぐのではないが、北海道幌内線跡の三笠トロッコ鉄道や、宮崎県にある高千穂あまてらす鉄道のスーパーカートは、廃線の上を小人数のトロッコ型車両で走る乗り物で、私もまだ乗ったことがないけれど楽しそうである。
最後に、ちょっと変わった体験のできる船を紹介したい。
富山県の富岩水上ラインは、富山駅に近い富岩運河環水公園と富山湾手前の岩瀬カナル会館を結ぶ観光船。船自体はふつうだけれども、面白いのは途中に閘門(こうもん)があることである。閘門というのは水位の違う川や運河を繋ぐ水のエレベーターで、船が中に入るとゲートが閉じて水面が上昇(もしくは下降)し、行き先の水位に合ったところで別のゲートが開いて船が出ていく仕組み。観光船で常時体験できるのは全国でもここだけだ。
ものすごくダイナミックというわけではないけれど、珍しい体験ができるのでお薦めしたい。

『旅行読売』2017年9月号。特集は「わざわざ出かけたい 道の駅」と「星降る 高原、海の宿」。
・旅行読売(Fujisan.co.jp)
http://www.fujisan.co.jp/product/2782/ap-norimono

富岩水上ラインの水のエレベーター。