■結婚相手の選び方を投資スタイルになぞらえて考えてみる
初婚年齢の高齢化やそもそも生涯未婚率の上昇は常々話題です。未婚女性の中にはそもそも結婚する気がない人も一定数いますが、ある程度の年齢、特にアラフォーと呼ばれる世代以降は「どうせ結婚するなら離別・死別を問わず一度くらい結婚歴のある男性と結婚したい」と言い出す人が急に増えてきます。
実は、株式市場でも似たような議論があります。成長著しいIPO(新規公開企業)が好きな投資家がいたり、上場し実績のある優良企業への投資を良しとする投資家がいたりします。
今回は結婚と投資という一見あまり関係がなさそうな両者を行ったり来たりしながらこのテーマについて考えていきたいと思います。
■結婚生活には面倒なプロセスが目白押し
結婚は「良きパートナーに出会えればそれだけで幸せだ」という意見もある一方、二人だけの世界が続くわけではありません。結婚生活にはさまざまなプロセスがあります。仕事や子育て、親の介護、ひいてはパートナーの介護など、将来起こるであろうイベントを考え出すとキリがありませんし、そのなかには面倒なものだってないとはいえません。「果たして自分の人生に幸せになる可能性があるのだろうか」という考えが頭をよぎるほど、容易には解決できない問題が山積みだと感じることもあります。
また、結婚当時は最高のパートナーだと確信していたのに、その後に関係がうまくいかなくなり離婚という顛末もあります。そのパートナーとの間に子供がいれば慰謝料や養育費の話などにもなります。人生には何が起こるのかわからない、そう考えて目の前にいる好きな人と結婚してよいのかと思案に暮れる人がいても仕方がありません。
良くも悪くも、年を取り様々な経験を積むことで若いころの大胆さは徐々に影を潜め、慎重さが増すと同時にあらゆるリスクシナリオを考え始めるものです。そこで、社会経験が少ない若いうち(リスクシナリオを事前に持ち合わせていない間)に結婚した方が踏ん切りがつきやすい、というアドバイスをする手練れもいます。
■結婚相手に何を求めるのか
一方、年頃の子供を持つ親からすれば、子供には若いうちに好きな人に出会ってもらい、幸せな家庭を築いてほしいと願うのは極めて当然のことではあります。
しかし、大卒の就職状況は売り手市場とは言え、日本経済そのものが伸び悩んでいることを考えれば、就職が仮にうまくいったとしても年齢とともに給与水準が上昇していくという時代ではないでしょう。
また、機械化やAI(人工知能)が進むことで、これまで人手をかけてこなしていた仕事もいつまでも続くとは限りません。すでにポジションを確立している会社でも競合する企業からイノベーションが持ち込まれ、既存のビジネスモデルが崩れることもあります。金融業界など、これまで知識(インテリ)層が独占していた領域ですらフィンテックの台頭により危ういのです。
ベンチャーが成功する確率とビジネスモデルが完成している事業が崩れる確率のどちらが高いかというほどに先が読みにくい時代になったというわけです。仮に新郎がよい会社に就職しているといってもその状況が続いていくという保証はありません。
苦しい時は若い夫婦2人で力を合わせて困難を乗り越えていく、というのはもちろん重要なことですが、夫婦共働きでもお互いの給与水準の限界が見えている中で工夫する余地が限られているケースもあるでしょう。
結婚相手の経済力を重視するのであれば、若い者同士で結婚するという選択肢が絶対という話ではありません。どちらかといえば、ビジネスパーソンや経営者として地位を確立している相手の方が良いのではという考えもあります。
■結婚相手の選び方と投資家の投資スタイルとの共通点
では「結婚するなら初婚でなくて再婚の人がいい」という女性はなぜそう主張するのでしょうか。ずばり「一度でも”結婚できた人”だから」というのです。一言でいうならば「失敗しているとしても一度は結婚という面倒なプロセスをクリアできた人に安心感がある」というわけです。
たとえば結婚後だけでなく結婚前にだって面倒なイベントはあります。両家顔合わせや結婚式などです。
特に結婚式は資金調達にはじまり、結婚式場の決定、出席者の確定・招待、スピーチの依頼、席順決め、引き出物の準備など、規模の大小はあれ、立派なプロジェクトです。イニシアティブをどちらがとるにせよ、完成度を高めて完遂することができるのかでプロジェクトマネージャーとしての資質が問われます。
実際には「彼女のための結婚式だから好きにさせないと後が怖いし」とノータッチを決め込む新郎に「準備を何も手伝ってくれない」と激怒する新婦の構図も非常によく見かけます。ただ、仮にも一度はこうしたプロジェクトをやり遂げ、そしてその後の親戚づきあいも含めて経験した人のほうが、初めて経験することに適応できないリスクを取るよりはよいということのようです。
これは、株式市場で創業間もなく成長著しい新興企業に投資するか、多少の紆余曲折があっても伝統的な企業に投資するか、という話に少し似ています。「新興企業は成長のポテンシャルはある」「でもダメになるときは一瞬かもしれない」、「伝統的な企業に伸びしろは期待できない」「でも継続的に安定的な収益を生み出してくれるかもしれない」というように、企業の見方は投資家によって異なります。
■投資の神様バフェットは市場でもまれた会社が好き
ここで思い出してほしいのは、世界で最も有名な投資家ウォーレン・バフェットです。彼は投資に際して、IPOに投資をするのではなく、投資家の多くが知っている歴史のある企業に投資をします。
また、バフェットが重視するのは歴史だけではありません。その企業の業績はもとより経営者なども十分吟味することも良く知られています。彼の投資哲学でいえば、新しいものがよいという発想はなく、どちらかといえば、市場でもまれて実績のある企業の方を嗜好しています。その投資哲学にこだわり続けた結果、彼は世界で最も成功した投資家としての今があるわけです。
バフェットの投資での成功体験を結婚と一緒にするなという向きもあるでしょう。ただ、ひとつ注意しておきたいなと思うのは、日本の個人投資家はIPOが好きだということと、初婚同士を歓迎する風潮がどうしても似ているように感じられることです。
総務省の「国勢調査」では2015年の東京都の女性の生涯未婚率が19%、全国では14%に達していることを示すデータが出ています。そしてその数値は年々上昇を続けています。今回は結婚と投資行動の類似点を見てきましたが、投資にしても株式投資だけが投資ではありません。