
■New Mini Album『HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~』インタビュー
ハヤシの怪獣愛、ここに結実!
ハヤシヒロユキが、自身の愛するものをテーマに曲を作る企画“HEN愛シリーズ”。第一弾は食べ物だったが、第二弾のテーマは、なんとハヤシの大大大好きなウルトラ怪獣! 円谷プロダクション全面協力のもと完成した『HEN愛 LET’S GO!2 ~ウルトラ怪獣総進撃~』は、ハヤシのたゆまぬ怪獣愛をポリシックスの流儀で表現、その結果、これまでのポリシックスの作品の中でもひときわ振り切った、過激にして痛快な作品に仕上がった。“好き”はパワーの源とはよく言うが、ここまで濃いものになるとは愉快、爽快。さぞ万感の想いがあったに違いないハヤシに話を聞きに行ったわけだが……案の定、音楽のことよりも怪獣やウルトラ・シリーズの素晴らしさについて、熱弁をふるうという、音同様に振り切りまくった前代未聞のインタビューになったのだった(笑)。
(取材・文/美馬亜貴子)
ウルトラ怪獣ってただ大暴れしてウルトラマンに倒されるだけのものじゃない
――『HEN愛 LET’S GO!』第2弾は、ハヤシ君の大好きなウルトラ怪獣をテーマにしたアルバムということで。どの怪獣を扱うかはハヤシくんのチョイスだったそうですが、選出のポイントになったところは?
ハヤシ:ルックスですかね。子供の頃に怪獣図鑑を見て「うわー、どんな怪獣なんだろう?」ってときめく感じがいまだに色あせてないので。まずはルックスで気になるものからチョイスして、次にDVD を観て、「あ、これなら曲にできるかな」というのを選びました。
――映像を観直したんでですか。
ハヤシ:もちろん全話観直したよ。今回入んなかった怪獣のも全部観て、観直した上で「ちょっとムリだな」っていうのもあったし。(曲中で使う)怪獣の鳴き声がなかったり、元々の話が暗かったりとか。だから今回の曲作りの初めの方は、ギターもシンセも弾かずに、ずっとDVDばっか観てた。プリプロがDVD鑑賞(笑)。
――暗い話のが入ってないのは気がつきました。たとえば、ジャミラ(人間に裏切られ怪獣化してしまった元人間)とかノンマルト(人類の濫開発によって住処を追われた海底人)とか、人気がある話で深いメッセージがあるものなんかはアピール力があるけど、同時に簡単に触れない雰囲気もありますよね。
ハヤシ:もちろんそういうのも自分にとってはウルトラ・シリーズとか怪獣ものの大きなフックでもあるし、好きだし、リスペクトしてるし、友達が家に来ると必ず見せたりもしてるけど(笑)。曲にしてみたいなって気持ちもあったけど、やっぱり俺が怪獣もので一番好きなのは、巨大怪獣が街を暴れ回るっていう痛快な構図で。
――ええ、ええ。
ハヤシ:ウルトラ怪獣の凄いところってさ“恐竜感”とはまた違うカッコよさがあるでしょ。ゴジラって“恐竜感”があるけど、バキシムとかクレイージーゴンって、そういうのとはまた異なる、ものすごい絶妙なデザイン、色合いのものが街中を暴れ回るという。今まで見たことない映像だったから、その衝撃がいまだに残ってて。異空間、異世界な感じ。日本だけど、いつの時代かわかんない。遠い未来の話かもしれないし、でも、走ってる車は古い、みたいな(笑)。あのパラレルワールドな感じが魅力だな。“今だけど今じゃない”っていう。そういう感じを曲にしたかった。
――ああ、だから大きい怪獣ばっかりになったんですね。星人系がひとつも入ってないものね。
ハヤシ:そう。星人も凄い好きなんだけどさ。カタン星人(ウルトラマンタロウに出てくる、地球侵略をもくろむ宇宙人)とか。
――そのへんは知ってる人少ないだろうなあ(笑)。
ハヤシ:あれは久々に隊長役の名古屋章が、事件の鍵を握る役で出てくるんだよね。それも好きな話だったんだけど、でも、“星人”って、どちらかというと頭がいいイメージがあるじゃん?
――ああ、メトロン星人(ウルトラセブンに出てくる、人類を自滅させようと企てる知的な宇宙人)とか。
ハヤシ:そうそう、まさにあれみたいにクレバーでさ、人を操ったりとかするでしょ。いわゆる肉弾戦で闘うことってあんまりないじゃん。
――圧倒的に頭脳戦が多いですよね。
ハヤシ:バド星人(ウルトラセブンに出てくる、珍しく肉体派&武闘派の星人)は別だけどさ(笑)。
――あははは。
ハヤシ:それよりは、怪獣が大暴れしてウルトラマンと闘うシーンを思い浮かべられるような、痛快な方が自分には合ってると思った。実際、そこに一番ときめいたわけだし。
――ゴモラ、ビーコン、クレージーゴン、ナメゴン、ペスター……ラインナップを見ると、ただカッコいいだけじゃなく、哀しい背景を持ってたり、哀れな末路を辿る怪獣が多い印象ですね。怪獣って本来はアンチヒーローなんだけど、感情移入しちゃうものも多い。
ハヤシ:そうなんだよね。そこが俺のツボなのかもしれない。ジャミラとかは、本当に悲しい話じゃん。で、ゴモラも、こういうルックスだけど、ただ悪い奴なんじゃないというところが重要で。
――人間が勝手に連れてきたわけですからね(万博で展示するために捕獲され、大阪へ輸送された)。
ハヤシ:そうそう。そういうのを見ると、ウルトラ怪獣ってただ大暴れしてウルトラマンに倒されるだけのものじゃないんだなって思うんだよね。そこが大人になって観直したときに気がついたところ。昔、子供の頃に観たり、図鑑とかを見てたりしたときには感じなかった部分だけど、実はものすごい深いテーマがあるという。もちろん、バルタン星人みたいに地球を狙ってる宇宙人とか、レッドキングみたいにただ単に暴れるだけの怪獣もいるわけだけど。本当は、一体一体にちゃんとテーマがあるんだなって。

――ええ、今回で言うとガラキングくらいですかね。よくわかんない理由で出て来て、ひとしきり暴れていく(人間とバレーボールをして遊ぶ)怪獣って。
ハヤシ:そうそう(笑)。やっぱりね、ただ悲しい話っていうんじゃなくて。ゴモラの話の何がいいかって、怪獣が主役じゃん。ウルトラマンはもちろんヒーローなんだけど、怪獣と子供が主役って完璧な組み合わせだなと思ったんだよね。あの話を見たときに、ゴモラのこと、もっと好きになったもん。だから、るkk悲しい話は自分の中では歌にはしづらい。ポリシックスで怪獣をテーマにするのであれば、大暴れする、だけど悪い奴じゃないっていうのがいいと思って。痛快な部分と切ない部分が両立した感じというのが。そこは今回、伝えたかった部分でもあるんですよね。
――ちなみに、円谷プロが以前行なった“怪獣総選挙”という企画があるんですが……。
ハヤシ:うん、俺も投票した(笑)。
――それによると、1位ゼットン、2位バルタン星人、3位がゴモラで、メトロン星人、カネゴン、エレキング、レッドキングと続き、そして8位にウルトラ怪獣じゃないけどブースカが入って(笑)、キングジョー、ピグモンというのが人気怪獣トップ10なんですね。結構当たり前なラインナップと言えますね。で、ハヤシくんが今回選んだ怪獣はゴモラの3位以外は全部圏外(笑)。50位以内に入ってるのが一つもない。
ハヤシ:ハハッ、圏外かぁ(笑)。
――上位に来るのは強い怪獣なんですよね。
ハヤシ:ゼットンはやっぱ衝撃だったよね。あのルックス。「ギャオー」って感じじゃ全くないじゃん。ホントに“宇宙恐竜”っていう名前がぴったりで。あと鳴き声!! 「ぴゅるるるる」っていう、これを鳴き声と呼んでいいんだ!っていう衝撃があったんだよね。強いわけだわ!みたいな。そういう発想が凄いなぁって思うんですよね。
――先ほどの怪獣のルックスの話に戻りますが、ハヤシ君の大好きな成田亨さん(ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンを手掛けたデザイナー)のデザインが、ゴモラとペスターだけなんですよね。それがちょっと意外で。あとは池谷仙克さんとか井口昭彦さんとか。選んだ怪獣そのものもウルトラシリーズからまんべんなく選ばれた感じで。そういう配慮をしたのかな、と。
ハヤシ:そうね。それもあんまり決め込まないようにしたの。もちろん成田亨さんのデザイン大好きだし。あの発想力は本当に凄いと思うし。ペスターはコウモリとヒトデを合わせたものだし、つまり本来は合わないものを合わせているんだよね。
――この間『美の巨人』(TV TOKYO:2015年7月4日放送)で成田亨さんの特集やってたの、観ました?
ハヤシ:観た観た! 感動した!
――あれを見ると、デザインには“独創性を入れる”“奇形化しない”“不快なものにしない”というふうに、自分なりの決めごとがあったみたいですね。
ハヤシ:“子供に向けてちゃんとしたものを作る”とかね。泣いちゃったもん、俺(笑)。
――あははは。涙腺、ユルすぎ(笑)!
ハヤシ:いやいや、ホントに「好きでよかったなぁ」と思って。でも、いくら好きでも成田亨デザインの怪獣を中心に音楽を作ったら、さっきの“怪獣総選挙”みたいな並びのものになってしまうでしょ? そういうものになっちゃったら『HEN愛 LET’S GO!』ではなくなっちゃう。“偏愛”っていうのがテーマなわけだからさ。自分がちゃんと愛してて、語れるものじゃないと。まんべんなくっていうところで言うと、ホントは『ウルトラマンレオ』からも入れたかったんだけど、レオは作品のトーンが暗すぎて(笑)。劇中の天気も曇りとか雨が多かったりもするしさ。最初はね、円盤生物でノーバとか……。
――あ、実はノーバはね、入れるんじゃないかと思ってたんですよ。
ハヤシ:でもさ、あの話って切ないでしょ?(家族を失って心の荒れた少年にノーバが取り憑いて、人間を狂人化させるというストーリー)
――見た目はたこさんウインナーみたいでポップなんですけどね。
ハヤシ:あのデザインは大好きだよ。でもレオは暗い話が多いから。アブソーバ(親切な人間を利用するだけ利用する非情な生物の話)とかも入れたかったんだけどね。
――あ、あのクラゲみたいなやつですか。
ハヤシ:そうそう。でも、DVD見た後に切なすぎて落ち込んじゃってね(笑)。これは曲にはできないなぁと思って。
――なるほど。
ハヤシ:作る前には円谷プロの人と打ち合わせして「まんべんなく選んだ方がいいですか?」とか「最近の平成版の怪獣とかも入れた方がいいんですか?」とか訊いたんだけど、「自由にやってください」って言われたから、そこは意識せず、フラットな気持ちでチョイスしようと。
――ナメゴンは『ウルトラQ』ですよね。
ハヤシ:『ウルトラQ』もすごく好きでね。今、MXテレビで再放送してて、毎週見てるんだけどもの凄いですよね、発想が。夢がある。日常、暮らしてる空間に本当に怪獣がポンと現われたときに、人々はどんな風になっちゃうのかなって。ウルトラマン・シリーズになると、ウルトラマンが出て来て助けてくれるというのが当たり前になるわけじゃん。でも、ホントに怪獣出て来たら焦るよなぁって。軍隊とか出て来てとんでもないことになるでしょ。どうやって闘えばいいの?みたいな。あの話は全部警告ものだったりするんだけど。
――文明社会に対する警鐘、ですね。
ハヤシ:カネゴン(お金を主食とする怪獣)とかダントツに好きですよ。最初、カネゴンが「マネー」(Pink Floydの代表曲)歌うっていうのもいいかなと思ったんだけど(笑)。
――あははは、凄いカバー(笑)。あと、ペスター、タッコング、オイルドリンカーと、“アブラもの”をまとめたっていうのも素敵なアイディアでしたね。
ハヤシ:ペスターで1曲作りたかったし、タッコングでも作りたいと思ったんだよね。そう思ったときに「あ、オイル怪獣って他にもいるよな?」って。それでオイル怪獣くくりにしてしまおうと思って。『ウルトラマン80』に出てくるガビシェールも一応歌詞には登場させて。
――インタビュー2へ
≪動画コメント≫
≪リリース情報≫
New Mini Album
『HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~』
2015.07.08リリース
【初回生産限定盤】(CD+ゴモラ”フィギュア)
KSCL-2584~5 / ¥3,241(税抜)
【通常盤】(CD)
KSCL-2586 / ¥2,000(税抜)
[収録曲]
1. 怪獣殿下
~古代怪獣ゴモラ登場~
2. 怪獣チャンネル
~電波怪獣ビーコン登場~
3. From バンダ星
~ロボット怪獣クレージーゴン登場~
4. 宇宙からの贈りもの
~火星怪獣ナメゴン登場~
5. We are Oil Lovers
~ペスター、タッコング、オイルドリンカー登場~
6. 怪獣サインはV
~球好き怪獣ガラキング登場~
7. 燃えろ!超獣地獄
~一角超獣バキシム登場~
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