2020年のM-1グランプリ準優勝をきっかけに一気にブレイクを果たすこととなったおいでやす小田。テレビ出演は倍増したが、なぜか期待していたような幸せを得ることはできなかった。
それをきっかけに自身のYouTubeチャンネル「おいでやす小田 どストレートチャンネル」で芸人に幸せを問いかけ、対談は「幸せってなんですか? おいでやす小田と14人の芸人が本気で考えてみた」(KADOKAWA)として書籍化された。書籍発売に先立ち、おいでやす小田にインタビューを実施。幸せのつかみ方から人との付き合い方、書籍についても聞いてみた。(前後編の後編)

【写真】家族がいる幸せ、結婚の決めた背景について語るおいでやす小田の撮り下ろしカット【8点】

――YouTubeチャンネル「おいでやす小田 どストレートチャンネル」では多くの芸人さんと対談を行いました。特に印象に残った人はいますか?

よく覚えているのはトレンディエンジェルのたかしですかね。真剣に質問しているのに、目を丸くして「そんなに幸せじゃないんですか?」と言われて。そっちから見たらそう見えるんかと思いましたね。マインドとしてはたかしみたいにいたいと思いますけど、考えてできることじゃない。努力で埋まるものでなく、持って生まれた性質や性格によるのかなと思います。

――たしかにたかしさんは特異ですよね。いろいろな人と話して見えてきたことはありますか?

ほんまにみんな考え方はばらばらやったんで、やりたいことやっている人は幸せということですかね。夢中に仕事できている人は幸せです。


――小田さんはその幸せにたどり着けそうでしょうか?

考え方、心の問題やと思います。今の状況に不満などないはずで、この状況で僕がどう思うか。明日から今の状況をありがたいと思えるようになったら最高ですし、そうなる可能性もゼロではない。内面の捉え方次第ですよね。

――対談をしていくうちに小田さんの考え方も変化していったのでしょうか?

YouTubeでやりだして、書籍発売に際してまた対談をしていくうちに考え方はましにはなっている気がします。これからもっとそうなっていったらいいですよね。

――芸人さんとの対談ではあまり話していないですが、人との付き合いについてもお聞かせください。小田さん自身、ご結婚されていますが、家族がいることの幸せをどう捉えていますか?

それは幸せやと思いますよ。僕も変わった人間なので、そもそも結婚するつもりもなかった。一人の時間が大事で、親に結婚を報告するときもびっくりしていましたから。ただ、僕も今の奥さんと出会っていなかったら結婚していなかったと思いますし、どっちが幸せというのはない。僕自身、結婚に幸せを求めていたわけではないので。


――家族がいる幸せというのは他とは比べられないですよね。

苦労も多いでしょうけど、家庭を築くというのは他にはない幸せですよね。一人でいられる幸せと種類が違いますよね。

――小田さん自身、奥さんと結婚を決めた背景はどこにあったのでしょうか?

いろいろなことを共有できるので、結婚しました。僕は珍しいので、誰とでも共感できるタイプではない。でも奥さんも変で、感性が似ているんです。美味しいものを食べに行って美味しかったという普通のことより、もっと特殊というか。行ったお店の店主が怖い人で、2人ともビビりながら恐る恐る過ごして、ご飯食べた後に「めっちゃガチガチやったやん」って2人で笑い合っています。そこを共感できることはないので、パートナーを選ぶときに感性が合うのは幸せなことやなと思いますね。

――芸人さん同士は普通の会社と比べても縦横のつながりが強いですが、小田さん自身はどのようなタイプでしたか?

そこまでつるまないですね。仲いい芸人は何人かいますけど、そんなに多いほうじゃないです。

――一人のほうが楽と感じるタイプなのでしょうか?

僕が気使ってしまうので、誘うのも一苦労というか。
気軽に行こうやと言えない。劇場の合間でも様子見て、「ご飯食べたん?」とかジャブ打つし、行くってなったら「もう食べていて無理していたらどうしよう」とか思っちゃう。その部分であんまり人付き合いができないですね。それでもいいと思っているんですけど。

――若い頃からそうだったんですか?

20代のときはめちゃくちゃつるんでいましたよ。ライブ終わりに飲んでいましたし、それが楽しかった。当時は時間もあったし、家庭もなかったですからね。それでいうと、子供の頃はすごいですよね。小学校から高校までどの友達ともいまだに仲いいんですけど、どうやって仲よくなったか覚えていない。子供って打算もないし、地位もないし、共有できることが多くて友達になりますよね。芸人も同じで、共感できる人が多いので、仲よくなれることもあると思う。それも芸人をやっていてよかったなと思いますね。


――改めて書籍についてもお聞かせください。書籍として発売されると聞いたときはどう思いましたか?

ほんまに?ってちょっと笑っちゃいましたね。そんな大げさなつもりもなかったので、本当にいいんですか、ありがとうございますという感じです。このテーマが目に留まってよかったです。

――今の時代だからこそ刺さるテーマかなとも思います。

みんなも考えているんだなと思いました。僕は自分のことだけを考えて聞いていたので、いろんな人に届くテーマというのは後で気づきましたね。

――特にどういう人に届いたらうれしいでしょうか?

悩んでいない人は手に取らないタイトルですし、満たされている人は読まなくてもいいと思う。悩んでいるとか辛いことばかりという人だけではなく、同じ満たされているはずなのに「なんで。おかしいな」と思っている人に手にとってくれたらいいかなとは思いますね。

――最後に、書籍を通じて小田さんからメッセージをお願いします。

幸せって結局つかみどころがないし、答えもない。
14人の考えを聞いて、「私は自分で見つける」と幸せについて考えなくなるのが一番です。誰かの考えに共鳴もしなくていいと思う。全部読んだときにもう幸せについて考えなくなるのが一番の理想やと思います。

おいでやす小田(おいでやすおだ)
1978年7月25日生まれ、京都府出身。NSC大阪23期。2001年より、何度かコンビ結成と解散を繰り返した後、2008年よりピン芸人として活動。2020年にこがけんとのユニット「おいでやすこが」でM-1グランプリ準優勝。それをきっかけにブレイク。5月21日には、対談集『幸せってなんですか? おいでやす小田と14人の芸人が本気で考えてみた』(KADOKAWA)を発売する。

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