車を走らせていれば、誰もが一度は遭遇するかもしれない”あおり運転”。ひとたびターゲットにされれば、心身ともに追い詰められ、最悪の場合は重大な事故へと発展しかねません。
とりわけ、見通しの悪い山道でそれを経験したとなれば、その恐怖は想像を絶するものがあるかもしれません。
 今回取材に応じてくれたのは、地方の信用金庫に勤務する宮崎さん(仮名・33歳)。山間部への異動をきっかけに始めた車通勤で、ある日突然、悪夢のような体験をすることになったそうです。

あおり運転してきた“真っ赤なスポーツカー”に下った天罰「前方...の画像はこちら >>

片側一車線の山道が、毎日の通勤路

「最初は正直、少し不安でしたね。学生時代に免許は取ったものの、社会人になってからはほとんど乗っていなかったので」

 そう語るのは、今回取材に応じてくれた宮崎さん(仮名・33歳)です。地方の信用金庫に勤務する彼女は、山間部にある支店への異動をきっかけに、車での通勤がマストになったのです。

 通勤ルートとして使わざるを得なかった県道は、片側一車線が続く山道。対向車が来るたびに慎重にハンドルを切り、落下物にも気を遣いながら走る必要があるという、神経がすり減るような道のりだったといいます。それでも毎日繰り返すうちに、少しずつ運転にも慣れてきた頃でしたーー。”あの日”が訪れるまでは。

背後に張りついた真っ赤なスポーツカー

 事件が起きたのは、ある日の午後のことです。いつもどおり山道を走っていた宮崎さんの前方には、農業用の軽トラがノロノロと走っていました。

「流れに乗って走っていれば、まあそこまで遅くはないんですが、その日は前方に農業用の軽トラが走っていて、自然と速度が落ちていたんです」

 前の軽トラを抜かすこともできず、宮崎さんは車間距離を保ちながらついていくしかありませんでした。するとしばらくして、後方からぐんぐん追い上げてくる車があったといいます。
真っ赤なスポーツタイプの車が、宮崎さんの車のすぐ背後にピタリとついたのです。

 前は牛歩の軽トラ、後ろは煽ってくるスポーツカーという、まさに逃げ場のない状況。そんな事情などまったくおかまいなしに、後続車はクラクションを鳴らしながらパッシングを繰り返し、執拗に圧力をかけてきたそうです。

あおり運転してきた“真っ赤なスポーツカー”に下った天罰「前方が騒がしいと思ったら…正直“ざまあ”と思いました」
写真はイメージです(以下同)
「あんな恐怖感を味わったのは人生で初めてでした。だって、どうすることもできなかったから」

 そう語る宮崎さんの声には、取材中もどこかおびえた響きがありました。

どこにも逃げられない、蛇行する山道で

 どこかで路肩に車を寄せ、先に行かせることはできないかとも頭をよぎったそうです。しかし、車一台がやっと通れる程度の細い県道な上、カーブが連続する蛇行路では、安全に停車できる場所などほとんどありません。

 後続車のパッシングとクラクションはやむことなく続き、その圧力に精神的に追い詰められた宮崎さんが取れる選択肢は、ただひとつ。ひたすら前を向き、早く大通りに出ることだけを念じながらハンドルを握り続けることだったといいます。

「もう、早く大通りに出てくれないかという一心でした。余裕がなくて、ミラーを確認するのも怖いくらいで」

 免許取りたて同然の宮崎さんにとって、慣れない山道でのあおり運転は、まさに恐怖の10分間だったようです。

“天罰”は、すぐそこに待っていた

 ようやく大通りとの合流地点が見え少し道幅が広くなった辺りで、後続の赤いスポーツカーは宮崎さんをギロリとにらみつけながら、まるでロケットのような猛スピードで走り去っていったといいます。

「ホッとした気持ちと同時に、まだ手が震えていて。
しばらく、普通に運転できる状態じゃなかったです」

 それでも気を取り直した宮崎さんは、前方の軽トラをパスしながら制限速度で大通りを走り続けました。そして2つ目の信号に差し掛かったとき、前方がなんだか騒がしいことに気づきます。

 赤信号で停車し、ふと横に目をやるとーー。そこには、警察官に囲まれた、あの真っ赤な車の姿がありました。どうやら少し手前に設置されていた移動式オービスに引っかかったようでした。

あおり運転してきた“真っ赤なスポーツカー”に下った天罰「前方が騒がしいと思ったら…正直“ざまあ”と思いました」
警察
「正直”ざまあ”と思いましたね。でも、あのあおられた恐怖は当分消えないような気がします……」

 苦笑いしながらそう話してくれた宮崎さん。あおり運転は、その瞬間だけでなく、被害を受けた側の心に長く影を落とす行為です。自分だけが急いでいると思い込み、他者を危険にさらすドライバーに対し、法の裁きが下ったこの結末は、せめてもの救いだったかもしれません。

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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