VAMPS ZEPPを占拠し、初の対バンツアーを開催中「恥ずかしいぐらいがちょうどいいですね」
撮影/田中和子

■VAMPS/【VAMPS LIVE 2015-2016 JOINT 666】ライブレポート
2015.11.16(MON)at ZEPP TOKYO
(※画像8点)

「心配してたら、メイクが濃くなっちゃって(笑)」(HYDE) 初の対バンツアー開幕

VAMPSが、10月下旬に終幕した【HALLOWEEN PARTY 2015】の余韻も冷めやらぬ中、ツアー【VAMPS LIVE 2015 -2016 JOINT 666】をスタートさせた。毎公演JOINT ACTとしてゲストを迎える対バン方式で、ZEPP TOKYOの11月12日公演を皮切りに、大阪、名古屋、福岡、札幌、と年をまたいで続行する。
本レポートでは、3日間にわたり出演したフィンランドのゴシック・メタルバンドHIMとのZEPP TOKYO公演初日、11月16日の様子をお伝えする。

VAMPS ZEPPを占拠し、初の対バンツアーを開催中「恥ずかしいぐらいがちょうどいいですね」
撮影/田中和子

幕に映し出されたデジタル時計がカウントアップの末に6:66を示すと、いよいよダークな宴が始まった。左右に幕が開き、青い光の中にHIMのメンバーが姿を現し、「こんにちは!」とヴィレ・ヴァロ(Vo)が挨拶。間もなく、腹に響く強靭なバスドラムが踏み鳴らされると、ずっしりとした重みを湛えながらもあくまでメロディアスな「BABL」で会場の注意を一気に惹き付けた。悲しみに胸を焦がすようなエモーショナルな歌声、激しいギターリフとは対比的に、リズム隊は落ち着いた刻みを保ち、全体として緻密な構築美を崩すことがない。「BUTTERFLY」、「RIGHT HERE」と、彼ららしいかげりを湛えたメタル・ワールドを展開。4曲目の「WICKED GAME」は、背後のフラッグが赤く照らされる中、幻惑的で甘いファルセットと重いビートとが合わさって、ひたひたと何かが迫り来るような暗い気配が会場に満ちて行く。呪文を唱えるかのような独唱で結ぶラストは圧巻だった。

曲間でテンポが変化し時空が歪むような「PASSIONS」に続き、代表曲「JOIN ME IN DEATH」ではイントロだけで大歓声が沸く。透明感に溢れたピアノのフレーズと繊細なメロディーラインが印象深く、ブルーと白のライティングがそのひんやりとした美しさを引き立てた。シンガロングし手拍子をする観客も多く、会場は盛り上がりを増していく。静と動のコントラストが際立つドラマティックな展開と痛切なスクリームが圧倒的だった「SOUL ON FIRE」は、披露し終えた瞬間に大拍手。
陰鬱なギターアルペジオに合わせて歌い始めるオープニングから、徹頭徹尾美しかった「FUNERAL」を歌い終えると、「どうもありがとう、Thank you!」とヴィレ。「REBEL YELL」では、曲の持つ疾走感にシンクロするように観客がしきりに拳を振り上げる。サビでマイクを客席に向けて歌わせるなど、会場には確かな一体感が生まれていた。高揚と熱狂の中で曲が終わりに向かい、ヴィレが一足先にステージを後にすると、残された4人は延々と音を鳴らし、ひたすら重いアンサンブルを聞かせ続けた。まるで終わりを告げる鐘を打ち鳴らすかのごとく、そのどこか儀式めいた厳かな響きは、非現実の世界に意識をトリップさせた。40分強の短い時間ではあったが、さすがの存在感と世界観を見せ付けたHIMのステージだった。

VAMPS ZEPPを占拠し、初の対バンツアーを開催中「恥ずかしいぐらいがちょうどいいですね」
撮影/田中和子

時刻は20時10分。中世ヨーロッパの礼拝堂をイメージしたような荘厳なムードを湛えたステージに、いよいよVAMPSが登場。幾多のグリーンのライトが縦に走り視界を遮っていて、全貌が見えないもどかしさが「観たい!」という欲求を駆り立てる中、投下されたのは「EVIL」。ライトを放つフロアのボックスに片足を乗せ、身じろぎもせずに歌い続けるHYDE(Vo&G)。深く集中した、力のこもったボーカリゼーションに、聴いているこちらも思わず手に汗を握ってしまう。まるで人の声ではない、まさしく悪魔のような、あるいはブレーキ音のようにも思える声色。
「一体どこからこんな声が出るのだろう?」――これは、この日のライヴ中に何度も脳裏をよぎった問いである。

VAMPS ZEPPを占拠し、初の対バンツアーを開催中「恥ずかしいぐらいがちょうどいいですね」
撮影/田中和子

VAMPS ZEPPを占拠し、初の対バンツアーを開催中「恥ずかしいぐらいがちょうどいいですね」
撮影/田中和子

「LIPS」でHYDEはハンドマイクに持ち替えて動き回りながら歌い、K.A.Z(G)も前方へと歩み出て来た。「Come on, BLOODSUCKERS! Scream!」とファンを煽り、ヘッドバンギングの嵐を巻き起こすと、ボクサーがパンチを食らわせるようなアクションで拳を振り下ろしたのを合図に、曲がプツリと幕切れる。そのクールな場面に思わず鳥肌が立った。「MADE IN HEAVEN」では、もはやメロディーというよりもシャウトし続けるように歌われたサビで圧倒。「一緒に気持ち良くなろうぜ! 一緒に愛し合おう、皆愛し合おうぜ!」との呼び掛けからスタートしたのは、「I CAN FEEL」。パープルのサーチライトに射られながら、アーチを描く礼拝堂をバックに、HYDEはギターを背負いながら実に丁寧に歌い始める。ストレートの黒髪を掻き上げる何気ない仕草も含め、ステージ全体がまるで一枚の絵画のような美しさ。やがて鐘の音が鳴り響くと、HYDEが激しくギターを掻き鳴らし、目まぐるしく明滅するライトの中「JESUS CHRIST」へ。深い悲しみを感じさせるやるせない歌声。声を長く伸ばすパートでは、まずは荒々しい怒りに始まって、次第に艶を帯びながら、やがて祈りへと心が刻々と変化していく過程をつぶさに描写しているように思えた。最後、両手を一気に広げて叫び、黄金色の逆光の中に佇むシルエット……その崇高な表現に打ちのめされ、しばし呆然としてしまう。
そして、この空気感から「VAMPIRE’S LOVE」へと繋げた曲順も実に素晴らしかった。赤い一輪のバラを持ったHYDEはマイクスタンドに体重を預けるようにして、前後に揺れながら、声と感情をしっかりと溜めながら落ち着いた歌声を聞かせた。サビでは想いを炸裂させ、K,A.Zのギターもシンクロして情感を迸らせる。この曲のライヴでの表現が熟し、今が最高潮に達している印象を受けた。続くデビッド・ボウイのカバー「Life On Mars?」では、最後、声をどこまでも長く伸ばすパワフルな歌唱で圧倒した。

VAMPS ZEPPを占拠し、初の対バンツアーを開催中「恥ずかしいぐらいがちょうどいいですね」
撮影/田中和子

VAMPS ZEPPを占拠し、初の対バンツアーを開催中「恥ずかしいぐらいがちょうどいいですね」
撮影/田中和子

「大丈夫? 楽しんでる?」と穏やかなトーンで語り始めたHYDEは、「今日何が心配って、HIMが来るかどうかが一番心配(だった)(笑)」と、t.A.T.u.のドタキャン騒動を例に挙げながら、本ツアーに招いた海外アーティスト第一弾の初日に向けた正直な心境を明かし、笑わせた。「皆(HIMと一緒に)歌ってて、“良かった~”と思って。すごいナイスですね。ちょっと安心してこの後弾けられるかな?って」と、初の対バン形式であることに対する心配も解消された、とホッとした声色。HIMのアクトを2階席からHYDEも鑑賞している姿が見受けられたのだが、その胸中が明らかにされた形だ。「心配してたら、メイクが濃くなっちゃって(笑)。“大丈夫かな? 大丈夫かな?”と思いながらメイクしてたら……スミマセン(笑)」と、蒼白の肌に黒い口紅という自身のゴシック・メイクを茶化しつつ、「君たちもグジャグジャになりなさいね。
僕がお手本ですから」と繋げ、「悪い子になっちまえ!」と焚き付け、「AHEAD」へ。視界が一気に開けて行くような明るいオーラが、歌から、音から絶え間なく放たれて行き、爽快感が広がって行く。サビ前のK.A.Zの大きなジャンプもダイナミック極まりない。ARIMATSU(Dr)の、一つひとつの音が粒立った揺るぎないドラムソロから、モトリークルーのカバー曲「LIVE WIRE」がスタート。身体を揺らしながらダーティーでセクシーに歌い踊るHYDE。センターでK.A.Zが小気味よいカッティングのリフを奏でると会場はどよめき、そんなK.A.Zの肩にやがてHYDEが腕を回すと歓声はさらに大きくなる。ブレイクで、「もっとさらけ出して! 全部脱いで行こうぜ!」「本能のままに!」(HYDE)といった煽りを盛り込みながら、曲が再開し、続く「TROUBLE」へと熱は伝導して行く。赤いライトの中スモークが噴出し、不穏な空気に包まれると、「BLOODSUCKERS」の始まり。「本能の!」(HYDE)「ままに!」(観客)というコール&レスポンスを繰り返し、ボルテージは上昇の一途をたどる。Ju-ken(Ba)は立ち位置とは反対側にあたる、ステージ向かって右の端まで移動し、頭を振りながら激しくプレイ。K.A.Zはその時センターで大きなアクションを見せていた。理性によるコントロールが不能な危険で快楽的な気配に会場が包まれる中、曲が終わるかと思いきや、「まだ行ける?」「もう一回やらせてよ!」(HYDE)と煽情的な言葉を放つと、曲がリスタート。
髪を振り乱しながら、苛立つ野獣のように歩き回るHDYEはまさしく“本能のまま”そこにいるようだった。曲が終わるとうつぶせに倒れ、観客の手を舐めたり噛み付いたりした後、「MIDNIGHT CELEBRATION」を投下。うつぶせで歌い出し、やがて起き上がって跪いた後、立ち上がる。K.A.Zのサイケデリックなギターソロは、激しくもひんやりとした質感を湛えていた。HYDEは、腹の底、いや、そのもっと下にある地の底から何かを掬い上げて吐き出すようなすさまじい声を聞かせ、本編は終了した。

VAMPS ZEPPを占拠し、初の対バンツアーを開催中「恥ずかしいぐらいがちょうどいいですね」
撮影/田中和子

やがて、落ち着いた四つ打ちが鳴り始めると、「ZERO」でステージが再開。ミラーボールが煌めく中、本編終盤で圧迫されるほどにこもった熱が、清々しいサウンドによって霧散して行く。淡々としたリズムでありながらも、躍動感が次第に増して行くようなARIMATSUのドラムはさすがの一言。「ZERO」をアンコールに選んだのは初で、そのことになぜか照れくさそうな様子を見せたHYDEは、「でも、恥ずかしいぐらいがちょうどいいですね」とコメント。このジョイントライヴについて、「新鮮ですよね。対バンは(これまで)なかったもんね。すごい刺激になるし、いいんじゃないですかね、この3Pの感じ(笑)」と手応えを述べた。
客席を見渡して、「いい顔になってきたよ? めっちゃかわいくなってる。真っ赤っかになってるで」と言いながら、「かわいいBLOODSUCKERS、タコみたい(笑)。愛してるよ~」と語りかけ、「DEVIL SIDE」へ。「もっともっと!」とでもいうようにHYDEもK.A.Zも手で煽ぐようにして観客にさらなる盛り上がりを求めて行く。JIN(Key&Manipulator)が叩き出す硬質なアタック音を合図に、最後は「SEX BLOOD ROCK N’ ROLL」へ。バンドが立つステージ側と客席は、向かい合う形の位置関係ではあるが、境界線なく一丸となって熱を放ち合い、どこまでも高まって行く……そんなイメージが思い浮かぶ熱いフィナーレ。ただ熱いだけではなく、歌も演奏も表現の密度が高く、最後に聞かせたフェイクに至るまで抜かりなかったのも特筆しておきたい。HYDEの歌声はどこまで表現の幅・深みが増して行くのか、末恐ろしさすら感じさせるステージであり、対バン方式というVAMPSにとって新しいツアーの形がこれからどんな化学反応をもたらすのかが楽しみで、この後ツアーが続くが、すべての会場に足を運びたくなってしまうようなライヴだった。
(取材・文/大前多恵)

≪ライブ情報≫
【VAMPS LIVE 2015-2016 JOINT 666】
2015年12月5日(土) なんば HATCH 16:00 17:06
2015年12月6日(日) なんば HATCH 16:00 17:06
2015年12月9日(水) なんば HATCH 18:00 19:06
2015年12月10日(木) なんば HATCH 18:00 19:06
2015年12月12日(土) なんば HATCH 16:00 17:06
2015年12月13日(日) なんば HATCH 16:00 17:06
2016年1月9日(土) ZEPP NAGOYA 16:00 17:06
2016年1月10日(日) ZEPP NAGOYA 16:00 17:06
2016年1月13日(水) ZEPP NAGOYA 18:00 19:06
2016年1月14日(木) ZEPP NAGOYA 18:00 19:06
2016年1月16日(土) ZEPP NAGOYA 16:00 17:06
2016年1月17日(日) ZEPP NAGOYA 16:00 17:06
2016年1月21日(木) ZEPP FUKUOKA 18:00 19:06
2016年1月23日(土) ZEPP FUKUOKA 16:00 17:06
2016年1月24日(日) ZEPP FUKUOKA 16:00 17:06
2016年1月28日(木) ZEPP SAPPORO 18:00 19:06
2016年1月30日(土) ZEPP SAPPORO 16:00 17:06
2016年1月31日(日) ZEPP SAPPORO 16:00 17:06

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