Online To Offline(O2O)市場の拡大とともに新聞の折り込みチラシが将来はなくなるのではないか、という話がまことしやかに流れている。実際、昨年の折り込みチラシの市場規模は7年前の8割にまで落ち込んだ。
O2Oとは、オンライン上のデータを実際の店舗での商品購入(オフライン上の購買活動)に活かそうという新しいマーケティング手法。たとえば、スマートホンなどに特売情報を流して来店を促すといったものを指す。最近ではこれにテレビCMやダイレクトメールなども加えて様々な手法で購買を促す「オムニチャネル」という言葉もポピュラーになってきている。
国内のオムニチャンネル市場は、2012年で約1,000億円弱だったが、17年には倍以上の規模にまで拡大すると見込まれている(データリソース調べ)。これに伴い、もっとも市場を奪われると見られているのが、折り込みチラシ。オムニチャネルの主なターゲットが小売や不動産と、折り込みチラシのメーンクライアントに重なるためだ。
実際、折り込みチラシの市場は、デジタル媒体の増加ですでに2012年には5,165億円と05年の6,649億円に比べて22%も縮小している(電通調べ)。オムニチャネルの普及につれて、「折り込みチラシの市場は今後、縮小が加速する」とある大手広告代理店の役員は公言している。
そんな状況で飛び出したファーストリテイリングの折り込みチラシ全面廃止の噂。同社は昨年、子会社でオンラインストア運営の(株)ジーユーの折り込みチラシを全廃し、オムニチャネルに切り替えたが、これをユニクロ本体にも拡充するのだという。
そうなると最も困るのが、新聞販売店。折り込みチラシの手数料は1枚あたり数円だが、「販売店の収益源のほとんどが折り込みチラシの手数料」(大手新聞社の営業社員)だからだ。この営業社員が言う。「新聞購読者の減少に加え、後継者不足が重なり、販売店の数は縮小している。これで、折り込み広告が大きく減少することになれば、店を閉める店舗が続出する可能性がある」。
販売店を助けようにも、新聞社自体の経営も厳しい。近い将来、欧米のように新聞はコンビニか駅のキオスクでしか買えなくなる時代が来るかもしれない。(編集担当:柄澤邦光)