「ポケモンGO」を起動して、近所にいつの間にかできている「ポケストップ」や「ジム」にビックリした人も多いだろう。

このポケストップ、駅や郵便局など人が集まりそうな場所にあるけど、病院や警察署にはない。

神社や寺といった神聖な場所にあるけど、銅像や変な看板までポケストップになっている。

実は、ポケストップやジムの場所は任天堂が決めたわけではない。立役者は「エージェント」たちだ。
「ポケモンGO」神社にあって中学校にない。ポケストップがある理由ない理由
週末の渋谷の様子。大量のポケストップとルアーモジュールが散らす桜吹雪!

ポケストップは元々「ポータル」だった


結論から言うと、ポケモンGOのポケストップやジムは、Ingressの「ポータル」を元に設けられている。
「ポケモンGO」神社にあって中学校にない。ポケストップがある理由ない理由
左がポケモンGOのポケストップ、右がIngressのポータル。位置情報だけでなく、ポータル名や写真も同じものを利用している。

「ポケモンGO」を開発した米Niantic社は、2013年にスマホ向け位置情報ゲーム「Ingress」(iOS/Android)をリリースしている。Ingressは街中にある「ポータル」を2つの陣営が奪い合い、ポータル同士を結んだ三角形を作って陣取り合戦を繰り広げるゲーム。世界200カ国で遊ばれ、累計ダウンロード数1400万以上を記録。
いまもエージェントたち(Ingressユーザのこと)が世界中を歩きまわっている。

「ポータル」はエージェントがスマホアプリから写真と位置情報を付きで申請し、承認されればゲーム内に登場するようになる。Ingressにはポータル承認数に応じてもらえるご褒美(Seerメダル)があり、エージェントたちは街中のポータルになりそうな場所を探してはせっせと申請してきた。

こうして大量に街中に設けられたポータルが、いまポケストップやジムとして活躍しているのだ。いちエージェントとしては、あんなウケ狙いで申請したポータルにポケモンを探す親子が集まって……と感慨深いものがある。

変な看板がポケストップになっているワケ


Ingressのポータル申請には審査があり、一定の基準を満たしたものがポータルとして認められる。その「基準」はIngressのヘルプに「ポータル候補の基準」として掲載されている
承認されやすいもの、ポケストップになりやすい場所は以下の通り。

・興味深いエピソードがある場所や、歴史的または教育的に価値のある場所
・興味深い芸術作品や他では見られない建築
・秘宝やその地域ならではのスポット


「歴史的に価値がある場所」は史跡や記念館などが対象。観光スポットや山頂は「その地域ならでは」として承認されやすい。「興味深い芸術作品」には彫像や壁画などが含まれ、変な看板も「芸術」として判断されることがある。

また、上記に加え「世界中の人々を結びつける産業やネットワーク」を特別にポータルとして承認することがある。駅や郵便局、公園、公共図書館、礼拝所がポケストップやジムになっているのはこれが理由。
神社がポケストップになっていることに困惑するニュースがあったが、神社や寺は「礼拝所」としてポータルに承認されているのだ。

マクドナルドがポケストップになっているのは上記の基準ではなく、正式にポケモンGOとコラボをしているため。
Ingressではローソン、ソフトバンク、伊藤園、MUFJがコラボをしており、コンビニや自販機、ATMがポータルになっていたのだが、ポケモンGOではこれらの場所はポケストップになっていない。特にローソンはポータルが少ない地方で重要な拠点となっていただけに、ポケモンGOにもコンビニとのコラボが待たれるところ。

ちなみに現在、ポケモンGOは新たなポケストップやジムの申請は受け付けておらず、Ingressでも新たなポータル申請は受け付けていない。しばらくは現状のまま推移するようだ。


警察署、消防署、小中学校はNG


逆にポータルに承認されにくいもの、ポケストップになりにくいものは以下となっている。

・歩行者の安全性が確保できない場所にある候補。
・人、人体の部位、生きている動物などの候補。
・地勢としての候補。
・1年のうち特定の期間に限定される季節的な展示など、永久的ではない候補。
・私有の居住用財産(牧場を含む)にある候補
・消防署、警察署、病院の業務に支障をきたすおそれがある候補
・小学校や中学校の敷地にある候補


危険な場所や私有地といった立ち入りが制限されている箇所、生き物や自然の景観、季節限定ものといった継続性が無いものはポータル&ポケストップになりにくい。消防署や警察署、病院は、人が集まることで業務に支障がでるため除外。
小中学校が対象外になっているのは不審人物対策だろう。

ただ「立ち入りが制限されているか」はポータル審査で判断を誤ることがある。例えばマンションの敷地内にある噴水(私有地)がポータルになるなど、立ち入り禁止区域の「中の人」がポータルを申請してしまうことがある。これがそのままポケストップになるとさらに問題が広がってしまう。

誤って承認されたポータルは削除の申請が可能で、ポケストップやジムも削除申請ができるようになっている(ポケストップやジムについて報告する Pokemon GO)。上記の基準を満たさないポケストップを見つけたら、削除申請をするといいだろう。


“珍ポ”めぐりもまた楽しい


日本でのポケモンGO公開後、自民党本部(東京都千代田区)にあるポケストップの名称が「自由民主党 永遠の与党」と登録されていたことがニュースになった(自民党本部は「永遠の与党」 ポケモンGO、地図に表示:朝日新聞デジタル)。

Ingressのポータル申請では「ポータル名」もエージェントが決め、おかしな名前でもうっかり審査を通過することがあった。この「うっかり」はIngress上にずっと存在していたが、ポケモンGOの爆発的ヒットにより多くの人が目にすることにより、メディアにも取り上げられるようになった。

ただ、この「うっかり」は悪いことばかりでなく、中にはセンスあふれるユニークなポータルもある。とみさわ昭仁さんの“珍ポータル”(大ブーム、世界的陣取りゲーム「Ingress」の珍ポータル集めが熱い)のように、“珍ポケストップ”を探すのもまた一興。奇しくもどちらも略称は“珍ポ”なのであった。

(井上マサキ)