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これが「人間」乙一だ! 創作への純愛が生んだ同人誌「U-cafe オツイチ特集号」

2010年11月12日 11時00分

「商業誌ではない乙一がわかる!」というコピー通り、今までとは一味違う乙一ワールドが楽しめる。プロもアマも楽しんで参加していることがよくわかる同人誌だ。

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〈本当は書くつもりなんてなかったのですが、執筆中の長編小説が停滞していたので、息抜きになんとなくやっつけたのでした。商業誌ではないのだから、多少、だめなところがあってもかまわないや、という気軽さで。〉

「U-cafe オツイチ特集号」は、こんな前書きで始まる同人誌。先日乙一さん自身が書き下ろし小説を発表したことで話題を集めた同人誌「U-cafe」の最新号で、この前書きも乙一さんだ。前号は一般から公募した多数作品の中の一作、というゲスト扱いであったが、今回は丸ごと一冊乙一に関連した内容で構成されている。

僕は参加者の特権で先に全文を読ませてもらったのだけど、ああ、こういうのが欲しかったんだよ、と思った。商業誌ってどうしても売り上げを出すことを考えなきゃいけないしがらみがあるから、ファンにとってはよそよそしく感じちゃうことも多い。僕がどんなに「乙一さんのことが知りたい!」と思っても、雑誌のインタビュアーは作品の魅力とかそんなことばかり聞いて、乙一さんが好きな食べ物とかいつ風呂に入っているのかとかを聞いてはくれない。僕はもっと人間が見たいんだよ。

この本には、前号発表の乙一作「電車のなかで逢いましょう」に、乙一原作の『失踪HOLIDAY』『きみにしか聞こえない』『傷』をコミカライズした清原紘の挿絵付きバージョンを再録。ニートの男が電車で一目惚れした女性にいきなり結婚を申し込むというストーリーだ。

〈「働き先が見つからないんです。春に大学を卒業して以来、自宅でゲーム実況動画をながめるだけの日々なんです。ニコニコ動画にコメントを流し込む日々なんです」
「よくわからないけど、とにかくあなたが人間のクズだってことはなんとなくわかりました」〉

こんなセリフ回しに乙一さんの趣味が反映されていてニヤニヤする。もともと本のあとがきやブログ、ツイッターでの乙一さんの文章が好きだった僕にとって、それがついに小説になったか、という嬉しさがこみあげてくる。でも、〈だめなところがあっても〉なんて言うから乙一さんの作家としての隙が覗けるかと思ったんですが、全編ばっちり面白くて、ほんというとちょっとだけがっかりしました。

「乙一ってどんな人?」というアンケートには、乙一さんとゆかりのある滝本竜彦さん(『NHKにようこそ! 』など)、佐藤友哉さん(『子供たち怒る怒る怒る』など)、荒木飛呂彦さん(『ジョジョの奇妙な冒険』など)などが回答を寄せている。
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