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紅白出場の裏に秘められたドラマです! 水樹奈々『深愛』を読んでみました

2011年1月21日 11時00分 ライター情報:アライユキコ

『深愛』水樹奈々/幻冬舎
発売日の2011年1月21日は水樹奈々31歳の誕生日

2009年NHK紅白歌合戦初出場という「あがり」がこれほどのドラマだったとは!
水樹奈々『深愛』は、歌手であり声優でもある31歳の女性が人生の栄光をつかむまでの自叙伝。

歯科技工士の父は、叶えられなかった「演歌歌手」という夢を幼い娘に託した。
〈「マイクに頼っているようじゃ、演歌歌手にはなれんぞ」〉。
〈ウィィイイイン! キュイイイイイン! ゴォオオオオオオオ!
凄まじいほどの騒音。その音は、父の手元から発せられていた。左手に持った白い塊を、右手に持った歯科用ドリルで削る音〉。
「とにかく喉を鍛える」という独特な哲学にもとづき、入れ歯や差し歯を加工する父のそばで一日中、白い粉塵にまみれての厳しい演歌レッスンは続く。

中学生で「全国せとうちカラオケ選手権大会」のグランドチャンピオンとなり、卒業とともに愛媛県新居浜市から上京、堀越学園芸能コースに進むものの、まったく鳴かず飛ばずの高校時代。周囲の冷たい目。そして、衝撃の「セクハラ」告白。才能を見出して東京に呼んでくれたボイストレーナーの「先生」との二人暮らしのなかでそれは続いていた。

〈「いいかい、腹式呼吸というのはここに力を入れるんだよ」
「先生、お腹はもっと下ですが!〉

才能ある少女の身に次から次へとふりかかってくる試練。それらに健気に耐え、愚直なまでのまじめさで乗り越えていこうとする水樹奈々の姿は、「ハートキャッチプリキュア!」のぶきっちょヒロイン「キュアブロッサム」こと花咲つぼみそのものだ。

〈私は頑張りが空回りするタイプだった。頑張れば頑張るほど、自体は望まない方向転がってしまう。やることなすこと後悔ばかり。口を開いては悔いて、開かなくても悔いて。明らかに苦笑している周囲の顔を見てはまた悔いて〉

〈でも、何かひとつのことに向き合っていくとき、純粋さにかないものはないと、私は今でもそう思うのだ。
混じりけのない想いは、必ず人に伝わる。
私は経験上それを知っているし、そうあることを信じている〉

「私、堪忍袋の緒が切れましたー!」
という決め台詞とともにキュアブロッサムはデザトリアンの理不尽さに立ち向かっていくけれど、これは、声を当てる水樹奈々本人こそが、ずっと叫んでみたかった台詞じゃないだろうか。
『深愛』を読んで、なんてピッタリなキャスティングだったんだろうと、感心してしまった。
「ハートキャッチプリキュア!」は、あと二回で最終回を迎える。もしこの台詞が登場することがあったら、うるっときちゃうかも。

ライター情報

アライユキコ

フリー編集者。『文学賞メッタ斬り!』(パルコ出版)『ふいんき語り』シリーズ(ポプラ社など)など。「エキレビ!」編集長。お酒とお笑い、演劇大好き。

URL:Twitter:@kaerubungei

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