TVゲームのRPGをやっていて、とっても気になるのは宿屋の安さ。
HPやMPを全回復させてくれる便利な場所で、セーブもだいたいできます。

確かに持ち歩きできないし、町に戻るまで利用できないからっていっても、傷薬や薬草より安いって凄まじい激安じゃないですかね。
そりゃまあ薬草食ったら魔物に襲われた傷が治る、つまり何か超常の力の働くアイテムだとしてもですよ。宿屋の値段ってどう考えても安いでしょ。1000円くらいなんじゃないの。

このあたりの「IF」を実際的に検証し、RPG世界でその職業につくにはどうしたらいいのか、その職業でどのくらい儲けられるのかを検証したのが『幻想世界のハローワーク』という本。
体裁はRPG職業事典なんですが、実際自分たちがそれになれるのか、なったあとどう暮らすのか、実に77職業(ほとんどが実在しない)について書かれています。

そして、全ての職業に年収がついている。これがかなり面白い。

先ほどの宿屋の他、RPGによく出てくるのは鍛冶屋、酒場、武器屋、道具屋などなど。
例えば武器屋
勇者になるよりはるかに簡単ですが、どうやったらその職業をはじめられるの?
もし周辺地域がそんなに危険がない、弱いモンスターしかいないところで高級で頑丈な武器売っても、売れるわけ無いんですよ。そんなところに熟練の戦士は来るわけがないんですから、お高い魔法武器なんて仕入れても在庫になるだけ。

逆に、初心者冒険者が集まるはずなので、安くて手軽な装備を薄利多売で商売していくのが基本になります。
となると、更に儲けるにはその地域の知識が必要。どのくらいのものを冒険者達が必要とするのか、あるいはその地域の特性にあった武器や防具を準備できるか。
かといって、超強力なモンスターが出る地域だからといって、強い武器が売れまくるわけではない。だって高いもん、そのレベルに達する冒険者多くないよ。
知識の収集と、地道な商売。
そして鍛冶屋や道具屋との連携。これが武器屋になる上での必要な条件になります。
うまくやれば年収三百万から五百万はいくのではないか。ちなみに宿屋は二百万から四百万。リアルな数字ですね。宿屋なかなか厳しい。


意外と儲かるのは酒場やギルドマスター。ようするに仕事斡旋だったり、冒険者のたまり場になるところ。
その分、冒険者たちの自由奔放さをあしらうだけの精神力も必要になりますが、定期的に客が訪れる、馴染みになる、というのが美味しいポイント。
本文には「ルイーダのような美女である必要はない。肝心なのは、どんな客にも気おくれしない度胸である」とあって、納得。
人と人をつなぐ仕事は、わりかしうまくやればおいしいようです。
年収は三百万から五百万

さて、本番です。
RPGの花型、冒険者たちはいくら儲けているか!
では主人公格の勇者は……ジャカジャカジャカジャカ、ジャン!
0円から10億円
……幅ありすぎだろ!!!
でもそうですね。そのとおりですわ。
そもそも勇者ってなんだよって話からですもの。

戦士、なら「職業」なんです。傭兵に出たりして戦うことでお金を稼ぎます。
しかし「勇者」は職業ではない。むしろ、天啓を受けてその使命のために戦うので、どっちかというと運命に巻き込まれた人、です。
となると、課せられた使命を果たすために、自分の命を削るのが勇者。
その使命の内容次第では、命がけで遂行して「めでたしめでたし」を迎えても、収入ゼロなんてざらでしょう。
一方国家がらみとかになると一気に年収は跳ね上がるはず。10億じゃきかないかも。
 
じゃあ職業「戦士」はというと、年収120万から一千万円
120万かー、バイトみたいですが、まあ実質バイトですね。
ようは、戦士としてどこに所属するかが問題。冒険者パーティーに入れば楽しい人生を送れるでしょうが、収入は壊滅的に不安定。
地道なバイトとしては、自警団や武器屋。地味ーな仕事ですが、これがあるから町は守られていることを考えるととても大事な仕事です。
しっかりした仕事としては、軍隊や傭兵。グッと年収もあがります。が、同時に戦争に巻き込まれるので命がけの度合いもあがります。

もっと戦士として稼ぎたい、となったら、更に別の技術をみにつける、ようはスキルアップやジョブチェンジが必要です。
例えば宗教に身をおいて研鑽し、アンデットに強い「聖騎士」。学問を学び魔術を身につけた「魔法剣士」、暗殺に特化した「アサシン」など。
特殊な能力を身につけたら、その分能力を必要とする人も増えます。それだけ、雇い主が増えて、年収が増える、というわけです。
戦士が年収120万から一千万円なのに対し、魔法剣士が四百万から三千万、というのはかなり的確な数字に思えます。

この本では他にも、回復役として引く手あまたの「僧侶」や攻撃の花型「黒魔道士」、ファンタジーに欠かせない「吟遊詩人」に「召喚士」、最高級職業である「国王」や「姫君」、戦争には欠かせない「騎兵」や「弓兵」、果ては「山賊」やら「踊り子」やら「遊び人」といったRPGに出てきてもなんの職業やらわからんものまで。現実的なものとして解説されています。
また、RPGにはでてきませんが実際にあった「抜歯屋」「大魔女発見家」「つけぼくろ師」などの珍妙な職業についても書かれています。

ファンタジーとはいえ、お金は大事。夢と正義を追い求めていても、飯は食えない。
夢を求めて大博打な人生を送るか、はたまた安定を求めるか?!
……ぼくは安定した、RPG世界のコンビニ「道具屋」をやってたいですわ。
(たまごまご)