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日本を食いつぶす妖怪、ブラック企業

2012年12月13日 11時00分

ライター情報:香山哲

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『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』今野晴貴/文春新書
社会全体や大学が推し進める「ちゃんと正社員になろう」というムードが、過剰な競争を生み、毎年どっさり余る新卒を採用しては使いつぶし、その労働力で競争力をつけて成長する「ブラック企業」。その実態とメカニズムや影響を社会問題として丁寧に論じている。

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一時すごくたくさんあった「ある99円ショップ」が、急にどんどん「コンビニ系ストア100みたいな感じの店」になっていった。経営を行っていたコンビニ会社が、「支店経営」の「ある99円ショップ」から「フランチャイズ経営」の「コンビニ系ストア100みたいな感じの店」に切り替えていったのだ。

フランチャイズ契約にしてしまえばそれぞれの店舗の店長は独立した経営者だから、残業とか過労とか関係ない。以前、99円ショップが過労死寸前の若い店長に訴えられて負け、その結果学んだ対処が、これだ。(そう思わざるを得ない。)

必死に就職活動して、入社して間もなく頑張りを認められて「よし、今日からきみが店長だ!」とか言われて、断れるだろうか。しかも、オシャレでグローバルで大手で狭き門で成長企業、みたいな会社でもこういうことが起こっている。

「就職難で学生が必死に仕事を探している。それを利用して大量に採用し、こき使って利益を上げ、使いつぶして辞めさせる。」ブラック企業の典型的なイメージはこんな感じかと思う。ひどい会社だ。こんな会社にしか入れないやつが悪い?

成績優秀で語学堪能で就職も一発で決まるような「就職先を選べる」学生が集まる有名企業もこういうことをやっているんだから、もう「働く側の問題」とも言いにくいだろう。

「フリーター」「ニート」「非正規」、「気ままに暮らす若者の意識の変化」というオジサンっぽい視点で語られてきた言葉の数々だが、「ブラック企業」は違う。むしろ逆。若者が「就職しなきゃ」「優秀にならなきゃ」「勝たなきゃ」「生き残らなきゃ」と強く意識しているのを、企業が悪用している。

ずばり『ブラック企業』と題された本が出た。就職活動をしている学生や働き始めた若者へのブラック企業の実体紹介ではなく、「ほとんどすべての人に関わりのある社会問題」としてブラック企業を掘り下げた本だ。

コンビニエンスストア、外食産業など、異常な安さや便利さが売りの商売には、必ずと言っていいほど過剰なまでのコストカットと厳しい労働環境が存在している。そして時にはその過剰さが限界を超え、2012年4月にあった高速バスの事故のようなことを引き起こす。

この本を書いた今野さんはPOSSE(ポッセ)というNPO法人で実際に働く人の相談を数多く受けてきた人で、しかも実際に最近の就職状況を体験した1983年生まれだ。

この本ではブラック企業の体験談の紹介やその分析、ブラック企業への対処、そしていかにしてブラック企業が社会全体に悪影響を及ぼすか、などが書かれている。

ライター情報

香山哲

漫画やゲームを制作するチーム「ドグマ出版」主催。著作に『ランチパックの本』や『香山哲のファウスト1』(文化庁メディア芸術祭推薦作品)など。

URL:Twitter:@kayamatetsu

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