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「くたばり損ないババア」をいじり倒して45年『毒蝮流! ことばで介護』には、実にいいことが書いてある

2014年5月20日 10時00分 ライター情報:とみさわ昭仁

『毒蝮流! ことばで介護』(毒蝮三太夫/講談社+α新書)。45年間の番組を通じて、出会ったお年寄りは数十万人にものぼるという。ジジイ、ババアのアイドルとして、タレント活動の他に聖徳大学の客員教授として介護問題にも取り組んでいる。

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「またここも、きったねーババアがいっぱい来てるね」

そんな風に言われて、商店街を埋め尽くした満場のお婆ちゃんがドッと笑う。誰も怒りゃしない。みんな笑顔だ。

「お婆ちゃん、ダンナさんは元気かい?」
「3年前に亡くなったヨ」
「そりゃ淋しいね。でも、クビ絞めたのはアンタだろう?」

これでドカンと笑いが起こる。なぜだ!? 耄碌しているからか? そうじゃない。お年寄りの皆さんは、この毒舌が聞きたくて集まっているのだ。

『ウルトラマン』に科学特捜隊のアラシ隊員役で出演していた俳優・石井伊吉は、1968年、お笑い番組『笑点』の中で司会の立川談志によって毒蝮三太夫と改名させられた。その翌年、自分の名前を冠したラジオ番組『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』(TBSラジオ)が始まった。これが毒蝮三太夫──通称マムちゃんの毒舌なトークと相まって大当たりし、いまでも『大沢悠里のゆうゆうワイド』内のコーナーとして45年間も続く大長寿番組となった。

マムちゃんはマイク1本を手にして、日本全国の商店街に出掛けていく。そこで集まった視聴者(大半はお年寄り)を相手に、冒頭に書いたようなトークを繰りひろげる。その口調はいかにも浅草育ちらしい軽妙さで、ときには過激に、ときには温かく、お年寄りたちの心を解きほぐす。

そんなマムちゃんが、この番組を続けていく中で見てきた老人介護や福祉の問題を、活字にした。それが本書『毒蝮流! ことばで介護』だ。

目次をざっと書き写します。

第一章 お年寄りに「快適空間」をプレゼントする
第二章 下町の長屋流コミュニケーション術
第三章 大学教授として介護のこころを伝える
第四章 ジジイもチャーミングにならなきゃな
第五章 下町流「かまい合い介護」のすすめ
第六章 「元気の運び屋」を目指そう!

とにかく実にいいことが書いてある。本人の語りをライター(ベテランの山中伊知郎氏)が文章に起こしているので、いつも通りの乱暴な表現が頻出するが、むしろそうでなければマムちゃんじゃない。

ためしに数えてみましたよ。目次と見出しを除いて、「ババア」が125回。「ジジイ」が106回。「くたばり損ない(または「死にかけ」など、それに類する表現)」が11回も出てきた。あっはっは、活字でも手加減なしだなあ。

これほど乱暴な言葉遣いをしていながら、なぜマムちゃんの言葉はお年寄りたちに支持されるのか。その秘密は第一章で早々に明らかにされていた。

ライター情報

とみさわ昭仁

1961年生まれ。ゲーム開発、映画評論、コレクター研究、古本屋店主、スカジャン制作、DJなど。神保町特殊古書店マニタ書房は、不定休で週のうち半分くらい営業。

URL:akihito tomisawa index

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