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食べログを否定する久住昌之の最新作『野武士のグルメ』

2014年5月22日 10時00分

ライター情報:大山くまお

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『漫画版 野武士のグルメ』久住昌之、土山しげる/幻冬舎

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個人的な話で恐縮なのだが、いろいろな店に食べに行くのが好きで、店を調べるときには「食べログ」のアプリを愛用している。というか、「食べログ」自体かなり好きで、今度何を食べようかな~、なんてつらつら見ていたりする。

ところが、エキレビ!でもおなじみの食文化に詳しいライターの松浦達也さんに「マジすかw」「食べログが好きって人、あんまり見ないから新鮮w」と(SNS上で)言われてしまい、なんだか急に恥ずかしくなってしまった。やっぱり通にとって食べログなどは邪道なのだろう。僕は通でも何でもないからいいのだけど……。

松浦さんと同じく食べログ否定派なのが、漫画原作者でエッセイストの久住昌之だ。

「検索してグルメサイトに出てる他人の評価を読んで店に行くことって、『これ食べたよ』っていうことを確かめる“確認メシ”なんですよね」
「つまんないじゃない。見ず知らずの他人が薦めるところばかりに行ったって。しかもグルメサイトって、匿名で『コスパが低い』なんて書いてあるでしょ。『コスパ』なんて言葉を使うのがコザカシイ(笑)」
(久住昌之×土山しげる「検索に頼らず素敵なメシ屋と出会う方法」週プレNEWSより

食べログ愛好者としては、恥じ入るほかない。
さて、『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』など、食に関するさまざまなヒット作を放ってきた久住が、『喧嘩ラーメン』『極道めし』などのザックリ系グルメ漫画の大家・土山しげると組んだのが『漫画版 野武士のグルメ』(幻冬舎)である。

久住が2009年に刊行した同題のエッセイが元だが、漫画化にあたって主人公の設定などがオリジナルのフィクションになっている。
主人公は、サラリーマンとして定年まで勤め上げた香住武、60歳。悠々と第二の人生を歩み始めた香住は、食に対してもこだわりを持つ。とはいえ、高価なグルメを追い求めているわけではない。小さな店の焼きそばとビールに舌鼓を打ち、それで十分満足する男だ。

香住が憧れているのは野武士のような男である。おいしそうな店があれば、知らない店だろうとぐずぐずせず、堂々とした態度で中に入り、迷わず食べたいものを注文する。ストレートで自己主張力が強い男、それが野武士だ。

「野武士たるもの 腹が減ったら食べたいものを食べればいい」
「迷う前に入っちまえ 見る前に跳べだ! 野武士なら何も考えずに のしのし入るだろうて……」
(いずれも『野武士のグルメ』より)

香住は野武士に自己を投影しながら店の戸を開ける。

ライター情報

大山くまお

ライター。著書に『野原ひろしの名言』『野原ひろしの超名言』(双葉社)、『名言力』(ソフトバンク新書)、『中日ドラゴンズあるある』(TOブックス)など。

URL:Fire Stone and Water

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