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中高生向け伝記『スティーブ・ジョブズ』の子供には刺激の強すぎる内容

2014年9月4日 09時00分
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『スティーブ・ジョブズ 』筑摩書房編集部/ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉

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少年は薄汚れた袋から、何かを取り出して僧侶に渡す。
それは小さな電子部品がぎっしりとハンダ付けされた、下敷きほどの大きさの樹脂製の薄い板だった。
「なんだい、これは」
「アップルIさ」
僧侶が怪訝な顔をすると、少年は顔を輝かせ、こう言う。
「コンピュータだよ。それが僕の悟りだ」

かっこいいー!
『ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉スティーブ・ジョブズ』の一節だ。彼が傾倒していた禅僧、乙川弘文に対して放った台詞がこれですからね。もうどこから見てもジョブズとしか言いようがない。いや、実は本当にこんな会話があったかどうかはわからない。でも禅僧の回想録から再現されたこのシーンが、「ジョブズ的」なものをよく表している。
 
スティーブ・ジョブズは、今ではiPhoneの会社として有名になったアップル社の創業者で、書き始めたら本一冊じゃ足りない人生を送って、2011年10月に死去した。56歳の短い人生で、パーソナル・コンピュータの市場を生み出し、今でもみんなが当たり前に使っているマウスやウインドウの操作性を広め、ピクサーを買収してCGアニメ映画の歴史を作り、音楽ダウンロードを生活の一部にし、そしてiPhoneで世界中の人をスマホ中毒にしちゃった。
その反面、部下にとんでもない働き方を強制するとか、株の分配をけちるとか、完成した製品を見るなり気に入らないと怒りだすとか、エレベータで目があっただけでクビにするとか、何も作らなかったのに手柄を自分のものにしているとか、デザインと宣伝だけで製品を売っているとか、悪評もまたすごい。
彼があまりにすごい業績をあげたので(それと一度アップル社をクビになったり、十年後に復活したりとやたらに劇的なエピソードが多いのと、このエキセントリックなキャラクターのせいで)、本屋のビジネス書のコーナーには彼を題材にした書籍があふれかえっていた時期があった。けれどジョブズが死んだあとは、ビジネス書以外の書籍も増えてきている。

多いのは子供向けの伝記。『伝記 スティーブ・ジョブズ』(ポプラ社)、『スティーブ・ジョブズ (学習漫画 世界の伝記NEXT)』(集英社)、『スティーブ・ジョブズ (小学館版学習まんが人物館)』(小学館)とビッグネームが勢揃い。もはや現代の偉人なんだね。
『ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉スティーブ・ジョブズ』も、その流れの中にあるんだけど、中高生向けというのが新しい。輝かしい仕事ぶりだけでなく、リード大学に入学するときに多額の学費をだして、大学まで車で送ってくれた両親に対するひどい仕打ち、市場調査に対する冷淡な視線、アップル追放につながる内紛、アップルに復帰してからの強引とも言える手法、インドの放浪と失望、いたいけな子供には刺激の強すぎる話題に踏み込んでいる。
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