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「絶対に負けられない」二人が繰り広げる死闘の結末…っ『ウィンブルドン』を今こそとにかくみんな買え

2014年11月12日 10時50分 ライター情報:我孫子武丸

『ウィンブルドン』ラッセル・ブラッドン 池央秋訳/創元推理文庫

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ラッセル・ブラッドン著『ウィンブルドン』は、一九七九年に新潮社より邦訳が出て話題となり、文庫も出ていたのだけれど、長らく絶版となっていた。復刊を望む多くのファンの声が届いたのか担当編集者の熱意か、このたびめでたく東京創元社より復刊とあいなった。原著の発行は七七年なので四十年近く前の作品ということになるが、そんなことは問題にならない。“このような名作が品切れになっているという不幸”が解消されたことをとにかく喜びたい。ずっと評判だけを聞いていて読めないでいた人、初めてタイトルを聞いた人、昔読んだけど手元になくて再読したい人……とにかくみんな買えばいい。買うしかない。読んで面白かったらまた誰かに勧めて買わせる。そうしないといかな名作といえどもあっという間に本屋の店頭から消え去ってしまうご時世なのだ。
錦織圭の活躍でテニス人気も盛り上がっているようで(ぼく自身はまったくスポーツ観戦をしないのだが)、ぜひともこの機会にもう一度広く読まれて欲しい作品だ。

本書は、タイトルで分かるとおりテニス小説の傑作であり、同時に優れたサスペンスでもあるのだが、何より皆さんに訴えたいのは(怒り新党風)、二人の男の友情と共闘、対決の物語であるということだ。──ん? 腐女子の皆さんのアンテナにビビッ、と来ただろうか?
「ホモの嫌いな女子なんていません!」という余りにも有名な名言を発して世間を震撼させたのは『げんしけん』の大野さんだが、ぼくはあえてもう少しマイルドにこう言いたい。「バディ物の嫌いな人間なんていません」と。
バディ物、は基本的にはホームズとワトスンとか、ブッチとサンダンスとか、ジョン&パンチとかまあそういう風な男二人が手を組んで探偵をやったり悪いことをやったり、敵と戦ったりするタイプの物語を指すわけだが、ここではもう少し広く、「男二人の関係性を中心とした物語」とでもしておきたい。

ぼくは以前から、「腐女子アンテナ」というものは、実のところ物語において二人(以上)の男が出てきたとき、「誰もがツボにはまる関係性」「面白い関係性」に敏感に(過敏に?)反応しているだけではないか、と考えている。例えば男の友情物語が嫌いな人間はまずいないが、それを腐女子流に言うと「ホモの嫌いな女子なんていません」になるわけだ。「二人の男の友情」→ホモ認定はまあ基本として、そこからさらに「ライバル同士」→ホモ、「師弟関係」→ホモ、「憎み合ってる」→ホモ、と発展するのも「面白い」=ホモと捉えれば何となく分かってくる。

ライター情報

我孫子武丸

小説、マンガ原作、ゲームシナリオ等手広くやっています。代表作は『殺戮にいたる病』(講談社)「かまいたちの夜」(チュンソフト)。

URL:Twitter:@sukiyapotes

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