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そうか、女の人ってこういう経緯でスピリチュアルにハマるのか『更級日記』『竹取物語』が凄すぎる

2016年1月16日 09時50分

ライター情報:千野帽子

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池澤夏樹=個人編集《日本文学全集》(河出書房新社)第2期の刊行がスタートした。
第13回(第2期第1回)配本は、第03巻『竹取物語 伊勢物語 堤中納言物語 土左日記 更級日記』
池澤夏樹=個人編集《日本文学全集》03『竹取物語 伊勢物語 堤中納言物語 土左日記 更級日記』(河出書房新社)。解題=島内景二、月報=小川洋子+津島佑子、帯装画=清川あさみ。2,800円+税。

 この巻の収録作はこちら。
『竹取物語』(10世紀前半? 森見登美彦訳)
『伊勢物語』(10世紀。川上弘美訳)
『堤中納言物語』(13世紀? 中島京子訳)
・紀貫之『土左日記』(『土佐日記』とも。935? 堀江敏幸訳)
・菅原孝標女(たかすえのむすめ)『更級日記』(11世紀後半。江國香織訳)

平安時代の物語文学・日記文学から5篇。
こうやってみると平安時代って長い。300年ある。
暴れん坊将軍吉宗の8代将軍就任の年から今年までの長さだ。

モードもスタイルもいろいろ


僕は『竹取物語』最終部の星新一訳(角川文庫Kindle)を『富士山』というアンソロジーに収録したことがある。
偶然だが、今回『竹取物語』を訳した森見登美彦さんの富士登山記を読めるのも、現在のところこのアンソロジーだけ。

『竹取物語』は特定のヒロインを擁した一貫性のあるストーリーを持つ。
いっぽう『堤中納言物語』は「虫めづる姫君」を含む10篇の短篇物語(と巻末の断章1篇)から成るコンピレイションで、各篇の原作者も成立時期もバラバラだと言われている。
『伊勢物語』はそのどちらでもなく、スナップショットのようなごく短い125の挿話から成り、各篇の主人公の同一性にこだわっていないが、全体を読むとひとりの人間の一生が書かれているようにも読めるという不思議な構造。

ふたつの「日記」も、スタイルはまるで正反対。
『更級日記』は、いま読むと自伝に思える。これは「日記」と言っても、日付のない回想体で書かれた「女の一生」。地方で育った幼少期から、上洛しての少女期、就職、結婚、夫との死別というふうに、約40年間のできごとを時間順に記述する。

いっぽう『土左日記』は日付が入ってるけど、男の作者が女になりすまして書いた以上、目下の言葉で言うと「ネタ」ということになる。
ざっくり言ってどの文化圏でも、ある時期までは、フィクションかノンフィクションかという近代的な区別が、近代ほどやかましくなかった。
貫之が任地である土佐から京に帰った3か月弱の旅を題材にしているので、カヴァーしている時間は『更級日記』のたったの160分の1だ。

このように、モードもスタイルもいろいろな平安文学だけど、ひとつだけ大きな共通点がある。

ライター情報

千野帽子

文筆家。著書『読まず嫌い。』(角川書店)『文藝ガーリッシュ』(河出書房新社)『俳句いきなり入門』(NHK出版新書)など。公開句会「東京マッハ」司会。

URL:Twitter:@chinoboshka

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