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「バラエティは残酷」全員集合vs.ひょうきん族「土曜8時」は戦場だった『1989年のテレビっ子』

2016年2月23日 09時50分 ライター情報:井上マサキ
「長い!」とキレながら明石家さんまの口にガムテープを貼る浜田雅功。
その横でタモリと談笑するウッチャンナンチャン。
「とんねるずが来たらネットが荒れるから!」と叫ぶ松本人志。
その声に応えて乱入する、とんねるずと爆笑問題。

2014年3月31日。『笑っていいとも!』のグランドフィナーレ。戸部田誠(てれびのスキマ)『1989年のテレビっ子』の回想は、あの伝説の一夜から始まる。現在のテレビの基礎を築いた”テレビバラエティの青春時代”を「1989年」とし、BIG3やお笑い第3世代、テレビマン達の生き様を描いた歴史絵巻だ。
てれびのスキマ『1989年のテレビっ子 -たけし、さんま、タモリ、加トケン、紳助、とんねるず、ウンナン、ダウンタウン、その他多くの芸人とテレビマン、そして11歳の僕の青春記』(双葉社)

「土曜8時」という戦場


『1989年のテレビっ子』で軸となっているのは、TBSとフジが交互に天下を取った「土8戦争」だ。本書巻末にある年表を元に、1970〜90年代における土曜8時の移り変わりを図にしてみた。
『1989年のテレビっ子』巻末の年表をベースに、民放4局土曜8時の主な番組を挙げた。バラエティでぶつかり合うTBSとフジ。スポーツやクイズ、特番などで模索する日テレ。『暴れん坊将軍』で高齢者をがっちり離さないテレ朝。

『全員集合』の練りこまれたコントの逆を目指し、『ひょうきん族』は会議をせず、とにかくカメラを回して現場で偶発的に起こる笑いを拾った。『カトケン』はさらにその逆を行き、カーチェイスや水中撮影などあらゆる手を尽くして長尺のコントを作りこんだ。

芸人やテレビマンが死力を尽くす姿に、まさに当時テレビにかぶりついて観ていた世代としてテンションが上がる。だがそれだけではなく、本書では番組が終焉する空気まで丁寧に描かれている。

休養を機に全てのレギュラー番組を失った萩本欽一。モチベーションが下がったメンバーを見て『ひょうきん族』終了を決めた明石家さんま。メンバーの結束を失ったドリフターズ。番組中の事故で打ち切りになった『やるやら』。スタッフとの対立の末に『ごっつ』を終わらせたダウンタウン。

テレビを観ている側は、常に面白い番組のほうを観る。かつて観ていた番組に「終」のマークが付いているのに気がついて「やっぱり」と言ってしまう。「終」の裏にある想いには気づかない。かつて中居正広は『笑っていいとも!』グランドフィナーレのスピーチで、タモリに「バラエティは残酷」と語った。

「非常にやっぱり……バラエティの終わりは……寂しいですね。他のジャンルは、評判が良かろうが悪かろうが、終わりがあるんですけど、バラエティって……ゴール無いところで終わらなければならないので、こんなに……残酷なことがあるのかなと、思います」

番組開始前のスタッフの意気込みや、初めて満足いく数字が取れた時の手応え、チャンスをものにしてのし上がる芸人たちの姿を読みながら、「終わるつもりで作っているバラエティなど無い」という当たり前のことに気がつく。

ライター情報

井上マサキ

1975年石巻出身のフリーライター。元SEで2児の父。スマホアプリ・パパ育児・お笑いを中心に活動中。路線図鑑賞家。ケータイ大喜利第14号レジェンド。

URL:Twitter:@inomsk

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