歌人・佐々木あららの代表作だ。
「あらら」という筆名は女性を想像させるが、れっきとした36 歳の男性。
雷が鳴る ゆっくりと君がいく 僕もいく また雷が鳴る
佐々木あららの“エロ短歌”は、「ふふ、男ってばかね」という言葉が似合う恋愛上手な女性でないと、好きだといってはいけないのかもしれないという気持ちを抱かせる。反面、自分の中にあるわずかな恋愛経験と憧れを刺激される。山田詠美の小説を読んでいるときのような気分だ。
8月23日の朝日新聞に掲載された田中槐氏の短歌時評によると、〈いわゆる歌壇とは少し離れた場所にいる〉存在なのだそうだ。
2004年から短歌を作りはじめ、「枡野浩一のかんたん短歌blog」に投稿し、入選。短歌はパソコンのテキストデータを使って、ベッドの上で作るのだそう。アイデアが浮かぶとひたすら練るという作業を続ける。ファイル上に古いデータを残したまま、下にどんどん新しいものを書き込んでいくのがあらら流の作り方だ。
7月17日に行われた電子書籍フリマでは、歌集初の電子書籍『モテる体位』を出品した。
枡野氏の著書『かなしーおもちゃ』、『ドラえもん短歌』などでは、歌人としてだけでなく、ライターや企画立案者としても活躍しているほか、短歌自動生成装置「星野しずる」の管理人も務めている。
2007年に始めた歌人の仁尾智とのポッドキャスト「僕たちだけがおもしろい」は、現在3800人ものリスナーを抱えるほどの人気。
そして、どうやら女性にモテるらしい。
その佐々木あららがいま注目しているのが、冷えピタをおでこに貼っている女子(以下、冷えピタ女子)だ。
「熱を出したという女友達に冷えピタをするようにすすめたんだけど、外では恥ずかしいと言われてしまったんです。それなら、外で貼っても恥ずかしくない文化を作ればいいと思った」ことが発端。その後実際に外で冷えピタ女子に遭遇して「いい」と思ったという。
翌日早速ツイッターで冷えピタ女子の魅力についてつぶやくも、反応なし。それならば、とハッシュタグ「#hiepitagirl」をつけて、様々なシチュエーションを妄想をつぶやく。はてなブログに「我、冷えピタ女子を愛す」というタイトルで、つぶやきをまとめたものをアップした。
ついにはイベントまで開催。
8月29日のイベント当日、待ち合わせ場所の渋谷ハチ公前にキャスター付きバッグをひいて登場。中には15箱以上、計100枚以上の様々なメーカーの熱冷まし系シートが詰まっていた。
「佐藤真由美さんの本で紹介されていて知りました。恋愛についての内容が共感できるし、本音を歌っているところが魅力。〈追いつけない夢ばかり見る いつだって君があっちを向いて寝た日は〉という歌が好きです」と語るあららファンの女子(美人!)をはじめ、計9名が集まった。センター街や代々木公園を冷えピタご一行が練り歩き、撮影会を行った。
エキサイトレビューのためにあらら氏が詠んでくれた冷えピタ短歌がこちら。
坂道を漕ぐ 冷えピタが世界一似合う女の名を叫びつつ
銀色は色じゃないねとつぶやいてまた海を見る冷えピタの君
はつなつの冷えピタ女子もはつねつの冷えピタ女子も好きで季重ね
代々木公園の階段で、あららファンの女子が転んで怪我をしてしまうというアクシデントがあった。オロオロする面々の中で、咄嗟に水を買いに走り、彼女の足にかけて砂を落としあげていた佐々木あらら。女性の心をつかむことをさらりとやってのける、モテる歌人に注目だ。
庭先でゆっくり死んでゆくシロがちょっと笑った夏休みです
この歌が好きだと伝えたら、日本酒を飲みつつ「お前はわかってない」と言われてしまった。セックスに関する歌を大きな声で「好きだ」と言えない自分を見透かされたようだ。