今注目のアプリ、書籍をレビュー

「獅子の時代」「春の波涛」「八重の桜」。大河ドラマは明治をどう描いてきたか

2013年1月21日 11時00分

ライター情報:近藤正高

このエントリーをはてなブックマークに追加

1980年放送のNHK大河ドラマ『獅子の時代』
主役は、これがテレビドラマ初出演となった菅原文太演じる会津藩士・平沼銑次と、加藤剛演じる薩摩藩士でのち明治政府で活躍する苅谷嘉顕という2人の架空の人物。大河ドラマでは初の原作のないオリジナル作品(山田太一・作)で、明治前期のさまざまな事件が描かれた。なお、「八重の桜」以前に会津藩の人物が主役となったのはこの作品だけである。NHKオンデマンドでも現在、全話が配信中

[拡大写真]

年明け6日よりNHK大河ドラマの新シリーズ「八重の桜」の放送が始まっている。主人公の新島八重(旧姓・山本)は、幕末に会津藩士の娘として生まれ、明治初年の新政府軍との会津戦争を経て、のち夫の新島襄とともに今日の同志社大学の前身を設立した女性教育者の草分けであるとともに、日清・日露戦争では看護婦として従軍した人物だ。

いまのところ「八重の桜」はまだ八重の少女時代である幕末を舞台としているが、いずれ時代は明治へと移る。大河ドラマで明治時代が本格的にとりあげられるのは、1990年放送の「翔ぶが如く」以来、じつに23年ぶりのことだ。

今年は大河ドラマの第1作「花の生涯」が放送されてからちょうど50周年という節目の年にあたる。井伊直弼を主人公とした「花の生涯」以降、幕末を舞台とした作品は数あれど、そのあとの明治までちゃんと描いた作品は、歴代52作中、「八重の桜」も含めても4作しかない。その理由としては、大河といえば一般的に時代物のイメージが強く、近代物はなかなか視聴率をとりにくいというのもあるのだろうし、また時代がなまじ現代と近いだけに(何しろ30年あまり前ならまだまだ明治生まれの人がたくさん存命していたわけで)、描きにくいというのもあったはずだ。

そう考えると、大河ドラマで明治をとりあげることはある意味で冒険ともいえる。実際、今回とりあげる明治物の大河3作には、やはりさまざまな野心的、意欲的な試みが見られ、時代物の大河とは一線を画している。近代日本の原点である明治時代が、国民的番組ともいわれる大河ドラマでどう描かれてきたのか。以下、くわしく見ていこう。

■架空の主人公を通して明治前期の事件を網羅――「獅子の時代」(1980年)
「八重の桜」の第1回は、アメリカの南北戦争のシーンから始まった。画面ではやがてゲティスバーグでの激戦と、会津戦争で銃をとり戦うヒロイン八重の映像とがオーバーラップし、さらに、南北戦争で使われた兵器は海を渡り日本にもたらされ、会津戦争でも使われたとの説明が入る。同時代の世界史と、幕末の内乱が密接にかかわりがあったことを示す演出だ。

こうした今回の大河のオープニングも印象深いものであったが、33年前の「獅子の時代」のオープニングはそれ以上のインパクトを視聴者に与えたのではないか。何しろ、物語は現代のフランス・パリのリヨン駅に、ちょんまげ姿で刀を提げたさむらいの集団が降り立つシーンから始まったのだから。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

注目の商品