朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第14週「1965-1976」
第67回〈2月4日(金)放送 作:藤本有紀、演出:二見大輔〉
※本文にネタバレを含みます
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ひなた、恋をする?
モモケン(尾上菊之助)のサイン会に出かけたひなた(新津ちせ)はその帰り、少年(幸本澄樹)に英語で話しかけられる。ひなたはしどろもどろだが、小夜子(竹野谷咲)は英語を話すことができた。【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜67回掲載中)
がぜん英語に興味を持つひなた。
ところが、「おとうちゃんに任せとき」と無職の錠一郎(オダギリジョー)が自信満々に言う。彼の作戦は福引で景品を当て、それを売ってお金にしようとすることだった。るい(深津絵里)が意外とギャンブラーと一子(市川実日子)に言われていたが錠一郎も同じく。ところで一等賞の熱海旅行はオダギリジョーの主演ドラマ『熱海の捜査官』に掛けているのだろうか。
けっきょく、ひなたは瓶集めを続けるが、高価な瓶を吉之丞(石坂大志)と取り合って負傷してしまう。貧しいながらも楽しい大月家というほのぼのムードだったのに突如、暗闇ムードへ? あまりほのぼのムードが続きすぎるとだれてしまうので、ちょっとアクセントをつけるのは仕方ないことだろう。とはいえ、るいの額のケガをリフレインするなんて……とひやひやさせるとはまったくお人が悪い。
けっきょく、ケガは大したことなかった。この手のドッキリパターンは朝ドラによくあって、でも狙いが見えすぎて白けてしまいがち。ところが『カムカム』ではそれでは終わらない。やはりベテラン作家は違う。
風呂上がり、るいはひなたの負傷をきっかけに自分の額の傷を鏡で見て思いに耽る。ひなたがその傷を「おかあちゃんのこれ『旗本退屈男』みたいでかっこええなあ」と無邪気に言う。かつてるいがあんなに他人の目を気にして傷を隠してきたというのに、ひなたにはそれが勲章のように見えている。母親に気を遣っているわけではなくて本気でそう思っているのだろう。
るいもるいで、愛する夫とかわいい娘と3人でつつましく幸福な家庭を築いている今、傷はそんなに気にならなくなっているのだろう。物理的な傷と心の傷が重なって、どちらも薄らいでいる。
『カムカム』がさらにちゃんとしているのは、るいの過去をなかったことにしていないことと同時に、錠一郎の過去も忘れてはいないことだ。「およげ!たいやきくん」の歌を「ええ曲やな。心つかむのわかるわ」とさりげなく言うのだ。やっぱり音に敏感なのである。譜面を書いたりもしているし、何もしていないようで彼のなかに音楽は生きているのだろう。
音楽といえば、あの曲。
(木俣冬)
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番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami