朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第14週「1965-1976」
第66回〈2月3日(木)放送 作:藤本有紀、演出:二見大輔〉
※本文にネタバレを含みます
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つつましく暮らせればそれでいい
るい(深津絵里)が妊娠。ひなた(新津ちせ)はお姉ちゃんになるからもう甘えてはいられない。モモケン(尾上菊之助)のサイン会の参加費1500円を自分で稼ごうと空き瓶集めをはじめた。【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜66回掲載中)
「偉いなあひなたは」と褒める錠一郎(オダギリジョー)。こんなときでも彼はまったく罪悪感を覚えている様子がない。なんて恵まれた環境であろうか。10年、何もしなくても罪悪感を覚えずにいられるなんて。そしてちゃんと生活できているなんて。うらやましい限り。るいの内助の功である。
だが、世の中はたいやきブームで回転焼きの売上が落ちてしまう。「およげ!たいやきくん」が大ヒットしていたからだった。「これや! これのせいや!」と涙目でテレビ(みんなのうた)を観るるいと、子門真人みたいな人物(アフロの田中/徳井優)が通りかかったところをジト目で見るるいの表情がいじらしい。
深津絵里は愛される表情のさじ加減が絶妙である。
だがここで深津絵里の存在の特別感と徳井優の面白さにばかり目を奪われていてはドラマの本質を見逃してしまう。ここで重要なのは、るいは「つつましく暮らせればそれでいい」と思っていることだ。橘家の血筋で腕があるから本格的な和菓子屋をはじめられないこともないものの、幼い頃、母・安子(上白石萌音)と過ごしたつつましい幸福が彼女の中にずっとある。るいはやっぱりお母さんが大好きで、大好き過ぎたからあんな悲劇を生んだのだなあ。
たいやきブームに負けず、つつましく商売した結果、お正月をなんとか迎えることができて、ひなたは空き瓶貯金とお年玉でモモケンのサイン会に行くことができた。お年玉もやっぱりるいが「お父さんから」と錠一郎に渡してもらっている。彼も彼で自分の稼ぎではないのに堂々と渡している。こういうことが家庭円満の秘訣なのである。
ひなた、モモケンに会う
1500円を持って(交通費とか食費とかプラスアルファだろう)、一恵(清水美怜)と小夜子(竹野谷咲)と3人で映画村に出かけるひなた。一恵と小夜子は裕福な家庭の子なのでお年玉だけで1500円が手に入っている。生・モモケンのショーに夢中になるひなた。ショーにも伴虚無蔵(松重豊)が参加していて、大げさにひなたの前に倒れ込みかかる。でもひなたは驚きはするが虚無蔵に何も感じていない。名優・松重豊なのに。ひなたのまなざしはモモケンにしか向いていない。
ひなたはモモケンに回転焼きをプレゼントする。
ひなた「侍になりたいです」
モモケン「志を失わなければ、きっとなれますよ」
モモケン、いい人だ。
尾上菊之助の「黍之丞、見参」のときの微妙な瞳の色気がたまらない。深津絵里と尾上菊之助、瞳の表情の巧さの競演であった。
それに比べるとひなた、「あったー」とか「やったー」という言い方がみごとな一本調子。
映画村ですれ違った少年(幸本澄樹)に目が釘付けに……。このときのひなたの表情はそれまでのカクカクした感じではなかった。モモケンがブラウン管から生になって現れても、どんなに彼にひなたが夢中でも憧れのあくまでも手の届かない存在だが、生身の少年との出会いがひなたを変える……のか?
(木俣冬)
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番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami