朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第18週「1984-1992」
第85回〈3月2日(水)放送 作:藤本有紀、演出:石川慎一郎〉
※本文にネタバレを含みます
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ひなたと五十嵐、会いたい気持ちが募る
サンタ(算太/濱田岳)が消え、モモケン(尾上菊五郎)と虚無蔵(松重豊)の件は解決。ひなた(川栄李奈)はほっとする間もなく多忙になった。【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜85回掲載中)
すみれ(安達祐実)のお茶のレッスンの付き添いをして、帰りに彼女の愚痴を聞く仕事と平行して通常業務もあり、ひなたは五十嵐(本郷奏多)に会えなくなってしまう。
急展開。いつも喧嘩していたのに会えなくなったらお互いのかけがえのなさに気づいてしまってもう止められない。情熱があふれだす。五十嵐がひなたにかける「バカ」がこんなにも違う響きになるとは驚いた。
さて。第17週、18週とすみれがひなたを連れて行き、愚痴を言う蕎麦処「うちいり」。吉右衛門(堀部圭亮)の妻・初美(宮嶋麻衣)が働いていた店ということはひなたの家と近いはず。演出を担当した安達もじりさんに聞くと、北野白梅町にある設定だそうだ。
太秦の撮影所から、すみれはわざわざ嵐電に乗って北野白梅町に行くのですか?とドラマ小姑な(別名:朝ドラ国防婦人会)質問をしたら、第17週・第80回ですみれとひなたの後ろに赤螺家がいた流れをおもしろく見せてくれた安達さんはこう回答してくれた。
関係者が撮影所のそばで飲食するに決まっているわけではなく、撮影が終わったらみんな思い思いに街へ繰り出すだろう。すみれのように激しく愚痴っていたらさすがに角が立ちそうだから、北野白梅町くらい距離があると程よいのかもしれない。
安達もじりさんは京都育ちで『カムカム』の京都描写に思い入れがあるそうだ。嵐電を出したいと提案したのも安達さん。京都の雰囲気を出すためにどんなところに気をつかったのだろうか。
舞妓さんがそのあたりの住宅街を歩いている姿を私は普段の生活の中で一度も見たことがありません。ドラマの中でも舞妓さんは登場させないでおこうと現場で議論しました。第14週だったでしょうか、お坊さんの托鉢の景色はしょっちゅう見ていた風景なので入れました。
なんでもない住宅街を描きたいと思いながら、それはそれで特徴がなく、引き算の表現をしていくしかなく、難しかったです。小学校時代の友達に突っ込まれないように気をつけたつもりです。
言われてみれば、京都が舞台というと舞妓さんが歩いている画がありがちだが、それは日本、富士山、忍者みたいな発想であろう。外側から見た人の抱く京都らしさではない、ある意味、どこにでもある変わらない日常を『カムカム』は描いている。そこによく行く川、よく乗る電車、よく行くそば屋、馴染みの商店街や土管が置かれた空き地は誰の心にもある。
それにしても、太秦(撮影所)→北野白梅町(うちいり)→太秦(撮影所)→北野白梅町と自宅のそばに戻っていながらまた電車に乗って会社に戻るひなた。それだけ五十嵐に会いたかったのだろうけれど、そりゃあ疲れるだろう。
(木俣冬)
【前回の朝ドラ】『おかえりモネ』の全レビューを見る
番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時00分~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時00分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時00分~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時00分(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時00分~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami