朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第18週「1984-1992」

第86回〈3月3日(木)放送 作:藤本有紀、演出:石川慎一郎〉

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』初代左近・松重豊から新左近・青木崇高とバトンを繋いだ粋なキャスティング
写真提供/NHK

※本文にネタバレを含みます

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ひなた、新婚妄想

因縁の映画『妖術七変化 隠れ里の決闘』(リメイク版)が完成、ひなた(川栄李奈)五十嵐(本郷奏多)は映画館に観に行く。

【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜86回掲載中)

映画館は盛況で、ふたりは映画を楽しむ。初めて映画(元祖『妖術七変化』)を観たとき、ポップコーンをひなたに買った五十嵐だったが、今回はふたりで分け合う。
ふたりがすっかり仲良くなっていることがわかる。五十嵐のもらった役・伊織もなかなかいい役で、ふたりは満足そう。

映画を観終わると、大月家で夕飯。大月家にもすっかり馴染んでいる五十嵐。カレーをぱくつき、桃太郎(野崎春 ※「さき」はたつさき)とも仲良くなっている様子。

夏の終わりの地蔵盆で五十嵐がひなたに風鈴を買ってプレゼントするのはるい(深津絵里)錠一郎(オダギリジョー)と同じ。ひなたが欲しそうに見た風鈴を「これください」と買ってぶっきらぼうに渡す五十嵐。

そのあと、ふたりの因縁のオーディション(条映のお姫様を探せ)のときの台詞を使って、「ついて来てくれるか」とプロポーズ(?)。ひなたは「五十嵐」ではなく「文ちゃん」呼びになっている。五十嵐の「今度は斬るなよ」がよかった。

かつて大月家は日曜の夜、大河ドラマを観ている様子がなかったが(小ひなたの時代)、いまや、五十嵐が大河ドラマに出演する夢を見るように。大河出演の朝、朝食に腕を振るうひなたという新婚妄想を見るほどひなたと文ちゃんは親密になった。
時に1992年。ひなたは27歳になっていた。条映に就職して9年。『妖術七変化』が最後の徒花になり、時代劇は衰退の一途をたどっている。雨降らしする『破天荒将軍』の撮影が寂しい時代を表しているように見える。

新左近は青木崇高だった

五十嵐がオーディションに落ちた左近を演じている人物は武藤蘭丸(青木崇高)2代目モモケン(尾上菊之助)が見つけた彼の左近は初代左近(伴虚無蔵)よりワイルドで、奇声を発して妖しさがパワーアップ。殺陣の勢いに重量がある。昔の時代劇は様式性が高くシックで、現代(80年代)は派手で豪快で破天荒と、時代の変化を感じさせる。

武藤蘭丸役の青木崇高は『カムカム』の脚本家・藤本有紀の傑作朝ドラ『ちりとてちん』でヒロイン喜代美(貫地谷しほり)の夫で落語家の草々を演じていた。さらに青木は大河ドラマ『平清盛』、木曜時代劇『ちかえもん』にも出ていて、藤本作品に欠かせない俳優である。



朝ドラ『カムカムエヴリバディ』初代左近・松重豊から新左近・青木崇高とバトンを繋いだ粋なキャスティング
写真提供/NHK

『カムカム』がはじまった頃から藤本ファン、朝ドラファンは青木の出演を期待していて、青木崇高がついに登場したことに喜びもひとしお。しかも、初代左近を演じた虚無蔵を演じた(ややこしい)松重豊は『ちりとて』のヒロインの父親役、つまり草々の義父だった。
初代、2代目左近を松重、青木とバトンを繋いだことにも『カムカム』の家族の繋がりを感じさせる粋なキャスティングといえるだろう。

本放送終了後、番組公式Twitterで青木のコメントを掲載。“草々さん! 朝ドラに、お帰りなさい”とツイートし、みんなで青木の登場を喜んだ。

青木は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に木曽義仲役で出演する。
(木俣冬)

『カムカムエヴリバディ』をさらに楽しむために♪







【前回の朝ドラ】『おかえりモネ』の全レビューを見る

番組情報

連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ

2021年11月1日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時00分~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時00分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時00分~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時00分(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時00分~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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