7月26日から27日にかけて放送されたフジテレビ系「武器はテレビ。SMAP×FNS 27時間テレビ」
今年の司会者はSMAP。27時間のあいだ、SMAPはほぼ出ずっぱり。「生前葬」という衝撃的なコーナーからはじまり、大御所とのトークをうまくまわし、ぶっちゃけトークもはさみつつ、「サザエさん」ともコラボを果たし、シメに45分間のコンサートを行うという鉄人っぷりを見せた。
平均視聴率は去年の9.8%から13.1%へとアップ。瞬間最高視聴率は23.8%。「低迷している」と言われるフジテレビにとっては、ほっと一息つけた数字だろう。


5人全員がマルチタレントのSMAP。今年の27時間テレビは、彼らの強さによって支えられていた。中でも「SMAPでなければ成り立たない」コーナーがあった。
全員が出演したドラマ「俺たちに明日はある」だ。

「俺たちに明日はある」は、いわゆるフェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)だ。SMAPが演じるのは「SMAP」そのもの。
まるでドキュメンタリーのような形に見えるが、実はフィクション……という内容になっている。
ストーリーを紹介しよう。一言でいうと、「解散ネタ」だ。

「SMAP解散」──SNS上に、そんな噂が飛び交った。芸能界もマスコミも、もちろんファンも動揺する。「解散」は決定事項のように報道されるが、かんじんのメンバーたちは言葉を濁す。
誰一人として、「絶対に解散しませんよ!」という言葉を発しはしない。メインをつとめる27時間テレビも近づいてくる。はたしてSMAPは本当に解散してしまうのか?

ひじょうに「ありえる」話だ。SMAPの解散は何度も何度も噂されている。
SMAPは1988年に結成し、いまはジャニーズの頂点にいる。個々のメンバーの評価も高い。
けれど、彼らの道のりは決して平たんではなかったと、多くの人が知っている。
メンバーのひとり、森且行が1996年に脱退。稲垣や草なぎの事件・事故も起こった。また、メンバーひとりひとりが高く評価されているがゆえの解散報道もあった。

ドラマ中、解散報道を受けてのメンバーの反応はかなりリアルだ。
「SMAPのいない芸能界には用はない」と語る中居と香取。

「辞めちゃうとかありえないよね?」と不安がる草なぎ。
「みんなが辞めたいというなら止められない」と呟く稲垣。
「メンバーが脱退したとしても、SMAPは続けていく」と宣言する木村。
同じグループに属していて、同じくらいグループのことを大事にしていても、考えていることはそれぞれ違う。この自由さがSMAPのおもしろいところであり、解散報道が出てくる原因でもあるのだろう。

番組は、確かにドキュメンタリーふうではある。
ただし、ちょっとした瞬間に「演技っぽさ」が出てくる。他のタレントやアイドルは、わかりやすく演技をしている(とくにAKB48のメンバーが出てくるシーンでは、あまりの演技っぽさに心からほっとした)。草なぎも「ドラマで見る草なぎ」のふるまいを見せるし、稲垣も同じだ。
それに対して、おそろしいまでに演技っぽさを見せないメンバーがいる。香取の名前もあげておきたいが、一番はやはり中居と木村だ。

中居の言葉に、印象的なものがある。
SMAPについての思い入れや愛情をさんざん語ったあとに、読めない表情でさらっと言う。
「これ、ドキュメンタリーなんですか? ふーん……今言ったこと、全部嘘だけど大丈夫ですか?」
この「全部嘘」という言葉は、今回のドラマで初出ではない。「情熱大陸」に出演したときにも同じようなことを言っている。「素の中居を見ることができた」と思った瞬間に、「嘘かもよ?」と突き離す。全部演技に見えてくるような、それとも全部本物に見えてくるような、中居の複雑さをそっくり表している言葉だ。

そして、木村。
木村が恐ろしいのは、どの瞬間も「木村拓哉」でいるところだ。「どの役をやってもキムタク」と揶揄されることがあるが、それもここまで極めると恐ろしい。
ドラマの中に、27時間テレビのCMをメンバー5人で見るシーンがある。解散報道について一言コメントして、途中退出してしまう中居。それを不安げに見る草なぎ……という、若干演出と演技の入ってくるシーンである。
このシーンの木村が本当にすごい。完成したCMを突っ伏しながら見て、一瞬上目づかいをして「いいじゃん」と褒める。この目線が、非の打ちどころがないくらい「木村拓哉」なのだ。木村を見ていると、いま見ているのがドキュメンタリーなのか、それともドラマなのか、違う意味でわからなくなってきてしまう。

中居と木村は、対照的な人物のように見える。
けれど、「芸能界」という「嘘の世界」で生きてきた結果、虚実の境界がなくなってしまったという点において、ふたりはとてもよく似ている。

今回のドラマは、賛否両論の反応を巻き起こした。
「感動した」「本当に解散してしまうんじゃないかと不安になった」という声がある一方で、「ファン以外が見てもおもしろくない」「幕の引き方があっけなすぎる」「オチにがっかり」という指摘もある。
ドラマ終了後に引用されたツイートがテレビ局の用意したアカウントらしいことも、かなりのツッコミどころとなっている。また、ジャニーズの後輩グループ「Sexy Zone」で(解散とはいかないまでの、それに近い)騒動が起こっているので、難しいタイミングでの放送になってしまってもいる。
「もっとこうすれば、もっと面白いドラマになったんじゃないか」
この思いをぬぐうことはできない。これまで放送されてきた過去のフェイクドキュメンタリーと比べても、とびぬけた出来にはなっていないのは明らかだ。

けれどこのドラマは、虚実が入り混じり、本人たちにももはや区別することができないであろうアイドル・SMAPだからこそ成立した。それだけは、はっきりと断言することができる。
(青柳美帆子)