朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第15週「1976-1983」
第71回〈2月10日(木)放送 作:藤本有紀、演出:橋爪紳一朗〉

※本文にネタバレを含みます
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『おしん」がはじまった』
冒頭、『おしん』の第1回のオープニング。テレビの枠の中なので間違えることはないが、音だけ聞いていると『おしん』がはじまったかと思ってしまいそう。ひなた(川栄李奈)は列車に乗って旅に出るおしん(乙羽信子)の姿に自分を重ねる。【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜71回掲載中)
3代目ヒロイン・ひなた編が本格的にはじまり、ひなたは川栄李奈に、お友達の一恵は三浦透子に、小夜子は新川優愛に、悪友の吉之丞は徳永ゆうきになった。
三浦透子は出演作『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞にノミネートされて話題の的。『ドライブ・マイ・カー』ではミステリアスなドライバー役。主人公(西島秀俊)の車を黙々と運転している姿が印象的だ。『天気の子』の主題歌も歌っていて、どうやら大作づいている。『カムカム』では無邪気に漫画の話をする高校3年生役をやっている。漫画に夢中の表情よりも母・一子(市川実日子)にすこし反抗している表情のほうが似合って見えた。
第70回で生まれた弟は桃太郎(野崎春 ※さきはたつさき)と言い、野球に夢中の様子。これは叔父・勇(村上虹郎)に似たのだろうか。母・るい(深津絵里)も野球は得意であった。
一恵も小夜子もそれなりに将来を見据えているようだが、ひなただけは何をしたいかわからない。このプラプラ感、ひなたは父に似てしまったように感じる。
悩んだひなたは嵐電に乗って条映映画村に向かう。おしんの真似をしてシートに正座して。おしんは年をとってから過去を振り返る旅に出た。ひなたは将来を悩んで、時代劇(過去)のテーマパークに向かう。どちらも「過去」に向かっているのである。嵐電はノスタルジックなタイムマシンのようなムードがあってぴったりだ。
遊び疲れて帰宅して店番をしていると、そこに現れたのは、クレジットによれば“無愛想な男”(本郷奏多)。
ということで、ずっと気になっていた、大月家は京都のどこにあるのか、第71回の演出を担当した橋爪紳一朗さんに聞いてみた。
大月家は一応、北野天満宮界隈に住んでいて、ひなたは嵐電で太秦の撮影所に通う設定です。そうなると、実際に歩いて賀茂川に行くのは現実的な距離ではないのですが、そこはドラマということで、実際とは少しだけ異なる設定になっています。
るいやジョーが歩いたり自転車を走らせたりした京都の街並みは北野天満宮のそばの上七軒で撮影していて、北野白梅町から嵐電で太秦というのはすごくしっくり来る。賀茂川も歩いていけないわけではない。今出川通をまっすぐ歩けば賀茂川デルタに着く。1時間はかからないが、そこそこハードな散歩ではある。筆者は以前、歩こうとして諦めてタクシーに乗ったことがある。
1976年の3月31日まで白梅町から円町を通る今出川・白川・丸太町線という市電が通っていた。この全線が開業したのは1958年だから、るいたちが京都に来た頃は市電で賀茂川のそばまで行けたはずだ(参考文献『京都の市電 昭和を歩くー街と人と電車とー』トンボ出版 / 当時の写真満載で読み応えのある本です)。
(木俣冬)
【前回の朝ドラ】『おかえりモネ』の全レビューを見る
番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami