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同じ原作なのにここまで違うか「天皇の料理番」35年前の旧シリーズと見比べてみた

2015年5月7日 10時50分 ライター情報:近藤正高

『天皇の料理番』杉森久英/集英社文庫

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現在、TBS系で放送中のドラマ「天皇の料理番」(日曜夜9時~)。先日の記事でも触れたとおり、TBSではいまから35年前の1980年にもやはり杉森久英の小説を原作に同名の連続ドラマが放送されている。このとき主人公の秋山篤蔵を演じたのは、まだ30代半ばだった堺正章だ。

残念ながらこの「天皇の料理番」の旧シリーズは放送後、現在にいたるまでソフト化されていないらしい。しかし調べてみたところ、横浜にある放送ライブラリーで第1回だけではあるが視聴可能だとわかった。この施設は、放送法第169条にもとづく日本唯一の放送番組専門のアーカイブ施設で、一日2時間にかぎってという制約はあるものの(一般利用者の場合。2015年5月現在)、利用者は所蔵されたテレビやラジオの番組やCMを無料で観ることができる。

ちょうど今回のドラマの第1回を見たばかりで記憶のまだ新鮮なうちに、旧シリーズの第1回を見て比較してみたい。そう思い立った私は、この連休中、上京したついでに横浜にまで足を延ばして見てきた。結論からいえば、旧作と新作の第1回を見るかぎり、同じ原作なのにここまで違うかと驚くほどで、両者はまったくの別物と言っていい。いや、篤蔵が鯖江にある陸軍の連隊で田辺という軍人からカツレツを食べさせてもらい、感動したことから料理人を志すようになるというおおまかな筋(これはほぼ史実どおりでもある)は同じなのだけれども、その展開のしかたや人物の細かい設定がまるで違うのだ。なお、第1回では脚本を後年「金曜日の妻たちへ」や「男女7人夏物語」などのヒット作を生む鎌田敏夫が、演出を松竹出身の映画監督で「男はつらいよ フーテンの寅」「ペコロスの母に会いに行く」などの作品がある森崎東が手がけている。

カツレツとの出会いと駆け落ち事件


旧シリーズは、篤蔵が父・周蔵(織本順吉)からむりやり禅寺に入れられ小僧になるところから始まる(ちなみに原作では篤蔵は仏門に自らすすんで入るのだが)。年代でいえば1903(明治36)年と、日露戦争勃発の前年のこと。修業はきつく、兄弟子たちとのケンカはしょっちゅう、修行僧に課された公案(禅問答)にもうまく答えられず住職から喝を入れられる。そんな折、篤蔵は住職に連れられて鯖江の連隊に初めて赴いた。原作やドラマ新作では、篤蔵は寺を破門になったのち養子に入った商家の使いで連隊に初めて出かけるから、展開としてはちょっと早い。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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