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実写版「進撃の巨人」を観てきた「優しい目で観てあげよう」なんて思い上がっててすいません、だけど!

2015年7月31日 10時50分

ライター情報:多根清史

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実写版『進撃の巨人』、これぞ『パシフィック・リム』でアップデートされた樋口真嗣の本気!

「樋口監督を優しい目で見よう」という心の壁が大爆破!


8月1日に全国劇場公開が迫るなか、滑り込みで実写版『進撃の巨人』に行ってきました。すでに様々な感想がネットに公開されていますが、「どうやって元のイメージを損なわずに?」ということで、みなさん原作基準で厳しくチェックされています。
2015年8月1日より全国東宝系にてロードショー

試写会に行く前は、もっと優しい目線の見方もあるのに、と思ってました。「樋口真嗣監督の映画なんだ」という心構えで臨めば、150%は大らかになれる。『日本沈没』での交通網がズタズタに破壊された国内で、どこにでもワープしてきた草薙くんを瞼に浮かべれば。あの平成ガメラのスタイリッシュな映像を撮った特撮監督が、『ローレライ』でCGのデキに目をつぶった「映画監督」になった衝撃を振り返れば……。

そんな優しさという高い壁で心を囲って行った当日。出だしはゆるやかな日常、ヨーロッパのようで日本の田舎の面影も残す風景。果物や野菜など豊かな物資があふれ、運送手段のディーゼル機関も闊歩しています。
スキのない世界観の描写にピシリ、と心の壁に走るヒビ。「平和」がなければ「悲劇」もなし、レイクサイドの馬鹿騒ぎを描くからジェイソンも来る。ディーゼル機関を見せたのも、馬車を使っていた原作とは文明レベルが違う宣言、ズレが徐々に大きくなる予告かもしれません。

そして『進撃の巨人』を名乗る上で避けられない「巨人が人を喰らう」表現は、「漫画の怖さをそのまま再現」ではなかった。新人漫画家だった原作者・諫山創がスポットを浴びた理由の一つに、絵が荒削りで前衛芸術のような存在感があったことも忘れてはいけません。この映画が基礎にしている原作1〜3巻の絵は、「唯一無二」ではあっても「恐怖」かどうかは微妙でした。
前半戦の「市街で小型巨人の団体様が大暴れ」が素晴らしいのは、実写スタッフの奮闘の賜物でしょう。体型も身長もまちまちの巨人達が壁の内側になだれ込み、市民を襲う。ショッピングモールのような建物に立てこもり、一転して地獄の檻と化したそこから逃げようと無数の手が窓から林立する描写は、明らかに近年のゾンビ映画を踏まえています。
しかし、巨人達は体のサイズがゾンビとは違う。身長が3〜7mもあって大人を片手でつかめる彼らは、生ける屍とは似て非なるものです。ヒトの手足をちぎって一口サイズに料理、仲間と楽しげに引っ張り合って八つ裂き、避難民がギッシリ詰まった建物に手を突っ込んで食い放題コース。

ライター情報

多根清史

1967生。『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)など。

URL:Twitter:@bigburn

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