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「臨床犯罪学者 火村英生の推理」スタート。火村英生シリーズ読むべき10冊はこれだ

2016年1月16日 09時50分

ライター情報:杉江松恋

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火村英生&有栖川有栖チーム、満を持してTVに登場だ。
1/17(日)から連続ドラマ「臨床犯罪学者 火村英生の推理」が始まる。火村英生に斎藤工、相棒・有栖川有栖を窪田正孝が演じるという配役である。スポットCFで見る限りでは斎藤の演じる火村はしっくりくる感じだが、原作読者としては本放送を観るまでは判断を差し控えたい。というのもこのシリーズ、火村が存在感を示すだけでは不十分で、相棒である有栖川有栖(通称はアリス)とのコンビネーションがあってこそ真価を発揮するからだ。斎藤=火村と窪田=アリスの掛け合いはどんな感じなのか。そこがいちばん気になるところなのだ。
『新装版 46番目の密室』有栖川有栖/講談社文庫)

簡単に原作シリーズについて紹介する。火村&アリスのチーム初登場作品は1992年3月発表の第1長篇『46番目の密室』である。刊行順では第2長篇『ダリの繭』がそれに続くが、間にいくつかの短篇が書かれており、シリーズ3冊目の本は第1短篇集『ロシア紅茶の謎』となった。
これはシリーズの中でも〈国名シリーズ〉と呼ばれるもので、本の題名(短篇の場合は収録作の1つ)に必ず国名がつけられている。その国名だけ記すと「ロシア」「スウェーデン」「ブラジル」「英国」「ペルシャ」「マレー」「スイス」「モロッコ」と続けられており、2002年に発表した『マレー鉄道の謎』は第56回日本推理作家協会賞と第3回本格ミステリ大賞の同時受賞作でもある。この〈国名シリーズ〉の元祖はアメリカのミステリー作家エラリー・クイーンで、『ローマ帽子の謎』『フランス白粉の謎』などの諸作は、論理的な推理の魅力を存分に味わわせてくれる名作として、日本の後続作家には大きな影響を与えた。
エラリー・クイーンの創造した探偵の名もやはりエラリー・クイーンであり、産みの親と同じミステリー作家を本業としている。この構図が本シリーズにも継承されているのである。火村&アリス・シリーズの作者の名は有栖川有栖、そして作中人物であるアリスの職業もミステリー作家だ。有栖川版国名シリーズは本家クイーンの使わなかった国名を冠するという原則で題名がつけられており、その衣鉢を継ごうという作者の意志が感じられる。探偵役ではなくその相棒に自分の名をつけたのは、さすがに天才探偵を自分の分身とするのはおこがましい、という作者・有栖川有栖の遠慮だろう。

しかし、語り手を務める作中人物の有栖川有栖(以降アリス)は、単なる引き立て役ではない。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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