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NHK時代劇「ちかえもん」今夜第2回。近松門左衛門「大阪で生まれた女」を熱唱

2016年1月21日 09時50分 ライター情報:近藤正高
とあるドラマで、元禄時代の人形浄瑠璃作者・近松門左衛門が歌いながら大坂の町を歩いていた。そう、こんなふうに。
「嘆き疲れた宴の帰り~ これで浄瑠璃も終わりかなとつぶやいて~」
って、よく聞けば、BOROの「大阪で生まれた女」(1979年)の替え歌やないか! しかも画面にはご丁寧に「うた 近松門左衛門」とのテロップまで。それ、必要?

これは、先週より始まったNHKの木曜時代劇「ちかえもん」(木曜よる8時~)初回の一場面だ。本作の主人公、松尾スズキ扮するちか松さん……もとい近松門左衛門はやたらと自己顕示欲が強い。自ら務めるナレーションでは、「浄瑠璃作者として名を残し、教科書にも載ってる、あの近松です」「大河ドラマのナレーションさせてもろたこともある、あの近松です」としつこい。ちなみに近松がナレーションを担当した大河ドラマとは、1995年に放送された「八代将軍吉宗」のこと(このときは江守徹が近松に扮した)。

だけど、近松門左衛門が自己顕示欲が強かったというのは、あながち間違いではないような気もする。そもそも浄瑠璃や芝居の世界で作者が名前を出すことは、この時代には非常にまれだった。そのなかで堂々と自分の名前を掲げて作品を発表するなんて、やはり自己顕示欲が強くなければできなかったことだろう。
近松門左衛門が物語の案内役を務めたNHKの大河ドラマ「八代将軍吉宗」総集編DVD。ジェームズ三木作・西田敏行主演によるこのドラマもコメディ色のわりあい強い作品だった

「元禄のキャバクラ」でうつつを抜かすスランプ作家の前に…


「ちかえもん」の脚本を手がける藤本有紀はこれまでにも、百人一首を題材にした時代劇「咲くやこの花」では江戸時代を舞台にしながら、ナレーション役を鎌倉時代の歌人で小倉百人一首の選者の藤原定家に設定するなど、ドラマのなかでさまざまな遊びや逸脱を展開してきた。本作ではその逸脱の部分がいつにも増して目立つうえ、かなり大胆なものとなっている。もともと近松が謎の多い人物ということもあって、バツイチという設定になっていたりと、独自の解釈があちこちに見受けられる。

そうした遊びが生きるのも、まず時代考証がしっかりしているからこそだろう。たとえば、劇中、近松作の浄瑠璃が上演される大坂・道頓堀の竹本座は、屋根が舞台側にのみにあって客席にはない。これは元禄時代あたりまでの芝居小屋を忠実に再現したものだ。

先述の、近松が当時の作者には珍しく自分の名前を出して作品を発表していたという史実もちゃんと物語に反映されている。それは竹本座の座主・竹本義太夫(北村有起哉)から近松が自作の公演打ち切りを伝えられたときのこと。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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