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「ちかえもん」今夜第4話。赤穂浪士が討ち入らない!

2016年2月4日 09時50分

ライター情報:近藤正高

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NHKの時代劇「ちかえもん」(木曜よる8時~)も第3回が先週放送され、劇中で主人公・近松門左衛門(松尾スズキ)が歌をうたう場面もすっかりお約束として定着しつつある。

見ている方にはご存知のとおり、ドラマの時代設定は元禄にもかかわらず、近松が歌うのはなぜか60~70年代の懐かしのフォークソング(の替え歌)ばかり。先週の選曲はといえば、ガロの「学生街の喫茶店」(1972年)であった。そこでは、元歌の「(喫茶)店」は「小屋」に、「ボブ・ディラン」は「義太夫節」にそれぞれ変換され、往時の隆盛はどこへやら、いまは不入りの続く人形浄瑠璃の常打ち小屋「竹本座」の窮状が歌われていた。

なかなか討ち入らない赤穂浪士?


そんなふうに歌いながら近松は道頓堀の竹本座の前までたどり着く。いつものように竹本義太夫(北村有起哉)と顔突きあわせ、どこかにいいネタが落ちてないかと湿気た話をしていると、大ニュースが飛び込んできた。前年末に江戸の吉良邸に討ち入り、主君の浅野内匠頭の仇をとった大石内蔵助ら赤穂浪士が切腹したというのだ。打ち首ではなく切腹との幕府の沙汰により、浪士たちは武士の面目を保ったのである。ときに元禄16年(1703年)2月、近松の『曾根崎心中』が上演される3カ月前のことであった。

庶民から喝采を浴びる赤穂浪士をネタに浄瑠璃を書けば大ヒット間違いなしやないか! と意気込んだ近松、さっそく家に戻って筆をとるのだが、母・喜里(富司純子)やら万吉(青木崇高)やら邪魔が入り中断。この間、竹本座の金主(スポンサー)でもある平野屋の若旦那・徳兵衛(小池徹平)の親不孝ぶりを知った万吉、彼と一緒に「不孝糖」売りをすることを思い立つ。一方、徳兵衛と恋仲の天満屋のお初(早見あかり)は、徳兵衛の父で平野屋大旦那・忠右衛門(岸部一徳)を接待することに。
「元禄繚乱」は1999年放送のNHK大河ドラマ(画像は総集編DVD)。主人公・大石内蔵助をいまは亡き中村勘三郎(当時は勘九郎)、仇役の吉良上野介をいま話題の石坂浩二が演じた。なお、「ちかえもん」劇中でも使われたテーマ曲は池辺晋一郎による

さて、あらためて赤穂浪士の物語にとりかかった近松。彼の頭のなかには、赤穂浪士の結集の場面がすでにありありと浮かんでいた。画面にはでっかく「赤穂義士」のタイトルと「さく 近松門左衛門/かたり 竹本義太夫」のクレジットが掲げられ、派手な音楽(よく聴けば、大河ドラマ「元禄繚乱」のテーマだ!)がかぶさる。しかし、いぜ討ち入りという段になって、浪士たちは、やれわらじの鼻緒が切れただの、やれ家の灯りを消し忘れただのと言い出し、まるで煮え切らない。あげく、自分たちがいるのは本当に吉良邸前なのかと地図を見直しはじめる始末。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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