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「昭和元禄落語心中」9話。真打とはロウソクから来たことば

2016年3月11日 10時00分

ライター情報:杉江松恋

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アニメ「昭和元禄落語心中」シーズン1もいよいよ大詰めだ。

助六の背中を追い続けた菊比古だったが、実はその助六にも、陽気な表の顔とは裏腹の弱い一面があった。2人の関係が壊れると同時に、その弱い面が浮かびあがってきたのである。もう1人、みよ吉と菊比古の関係も壊れた。傷ついた者同士、助六とみよ吉が寄り添うという意外な展開もあり、3人の幸福な時間はついに終わりを告げた。

そうした具体に大きな変化のあった第9話だったが、そのきっかけは、菊比古と助六がそろって真打昇進を果たしたことだった。雲田はるこの原作では第3巻から第4巻の序盤にかかる部分である。

真打興行の季節だ


東京の寄席では1月を上中下の3つに分け、10日ずつで興行が組まれる。この3月下席からは、いよいよ落語協会の真打披露興行が始まるのだ。3月下席は上野・鈴本演芸場、4月上席は新宿末広亭、同じく中席は浅草演芸ホール、下席は池袋演芸場、少し空いて5月中席が国立演芸場、という運びだ。今年は林家彦丸、月の家小円鏡(鏡太改め)、林家たけ平、林家ぼたん、台所おさん(鬼〆改め)と5人の真打が誕生する。東京の団体ではもう1つ、落語芸術協会も真打昇進の時期が決まっており、5月上席から同じく披露興行が始まる。こちらは、神田鯉栄(きらり改め。講談)、橘ノ圓満、三笑亭可風(可女次改め)の3人が昇進する。

1年の中でも真打披露は人気の興行の1つだ。初めて寄席を訪れる、という人にとっては、祝祭感の溢れるこの時期が、足を踏み入れるにはいちばんいいかもしれない。披露興行では仲入り(休憩後)、口上が行われる。昇進を果たした当人と当人の師匠、そして協会幹部などの重鎮がずらりと高座上に並ぶのは圧巻だ。口上と言っても口を開くのは昇進を果たした当人ではなく、後見となる他の師匠方である。ありがたい口上を伏して拝聴し、それが一段落したところで客に、どうぞお見知りおきください、と顔を示すのが新真打の仕事だ。企業のパーティなどでは絶対に聞けない脱線と笑いに満ちた口上が好きで、この時期だけは忙しくても寄席に通うファンは多い。

口上で有名だったのは、八代目桂文楽(先代。故人)だ。落語協会会長を2回務めた文楽は披露目に上がる機会も多かったはずだが、そのたびに述べるフレーズがファンにとってはお楽しみだったのである。

──師匠(文楽)の口上には、いくつかのパターンがあって、それは今でも楽屋の語り草になっている。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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