「今さらだけど、坂間くんとさかなクンって似てるよね」とまりぶが大発見をした「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系、毎週日曜22:30〜)。群像劇らしさが増してきた第3話を振り返りたい。

会社と裁判起こしちゃう俺、みたいな「ゆとりですがなにか」3話
イラスト/小西りえこ

初めて人に叱ってもらえた話、パート2!


弁護士を伴った後輩の山岸(太賀)に、パワハラによる労災認定を迫られた坂間(岡田将生)。むしろ山岸の態度の方が恫喝まがいだけど……と思わされるような状況の中、冷静に反論する坂間。その後なぜか急に被害者っぽくなるという山岸の豹変には笑った。その状況をレンタルおじさん(吉田鋼太郎)に報告する坂間の「会社と裁判起こしちゃう俺、みたいな」という山岸評が全てを表している。謝罪をして和解すればスムーズにいくとわかっていてもなかなか決心がつかない坂間。上司の早川(手塚とおる)と、茜ちゃん(安藤サクラ)が坂間の理解者であることだけが救いだ。

山路(松坂桃李)と恋愛に発展するのかどうか微妙な距離の実習生・佐倉(吉岡里帆)とはクラスのいじめ疑惑でちょっとした諍いに。
ネットの質問サイトでのやり取りを鵜呑みにしてすぐにおおごとに発展させようとする佐倉と、それを諌める山路。いつもの「鳥の民」で教師仲間との飲み会でもその話題になるが、そこにまりぶ(柳楽優弥)が割り込んできて、参加する全員の本音を暴き、めちゃくちゃにしてしまう。しかしその結果、山路の気持ちは佐倉に伝わった(かに見える)。別れ際に「初めてちゃんと叱ってもらえたような気がします」と発言する佐倉……それ、山岸が坂間に言ったのと全く同じ言葉! 山路は大丈夫だろうか。

まりぶの自由さが気持ちいい


坂間や山路がそれぞれに苦しい思いをする中、まりぶだけが自由に見える。舎弟を引き連れおっぱいパブの呼び込みをやりながら、大学を目指して勉強もしている(今回、学習机に向かっているシーンがある)。
坂間がずっと対応に悩まされている山岸の件を聞いて「そいつ、シメっかあ!」という単純明快さ! 観ていて実に気持ちいい。

終盤でも坂間に「お前と、その後輩も会社の一部だろ? もうちょっと主張してもいいんじゃねえの?」、山岸に「(佐倉と)泊まってっちゃえよ! (実習終了の)2週間経ったらなんか変わんのか?」と、それぞれグダグダと悩む二人に言い放つ。
強引だし言葉遣いも悪いしコワモテのおっぱいパブの客引き。でも何のしがらみもなく、本当のことを指摘し続けるまりぶはこのドラマにおいて常に風穴をあける存在だ。

後半、「酒蔵見学」という口実で謹慎中の坂間を訪ねるまりぶたち。この一連のシーンの幸福感ときたら! それぞれにいろんなものを抱えている人たちが、この時間だけは楽しく過ごす。
酒蔵見学して、温泉に行って、みんなで笑いながら食卓を囲む。このドラマを観ていてよかった。

『問題のあるレストラン』の第7話を思い出した。松岡茉優、高畑充希、二階堂ふみの3人が公園でコーヒーを買って、ひとつのイヤホンを分け合って音楽を聴くだけの情景。
こういうシーンを観ていると、物語の中の関係性と同時にそれを演じる役者たちの状況についても思いが及ぶ。『問題のあるレストラン』だったら、次代を担う女優3人が揃ってこんなふうに無言で演技する状況は、もう後にも先にも観られないだろうなと思った。
今回の『ゆとりですがなにか』もそうだ。それぞれにキャリアを重ねる若手役者たちがこうやって集っているこの場の、一瞬のきらめき。「現場の空気が伝わる」というのは、こういうことを言うのかな、と思う。

そういえば、この第3回でとうとう茜ちゃんとまりぶがお互いを認識し合った。(ちなみに、出会いはまりぶが茜ちゃんに言い放った「おいブス!」)。連ドラに出演するのが珍しいからということもあるのか、それともやはり圧倒的な実力の高さのせいなのか、安藤サクラは初回からものすごい存在感を放っている。
柳楽優弥もクセのありすぎる役柄を自在に乗りこなし、回を重ねるごとに魅力が増している。この先、二人の絡みが楽しみだ。
(釣木文恵)