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「シン・ゴジラ」はあの大災害がエンタメにかけた「呪い」の憑物落としである

2016年8月11日 10時00分 ライター情報:多根清史
『シン・ゴジラ』、一言でいえば最高。二言でいえば超サイコー!でしたね。
情報量は詰め込めるだけ詰め込み、スピーディなカット割で次から次へと画面が転換する。しかし「セリフが早口で聞き取れない」という声はあっても、混乱したというボヤキは聞いたことがない。怒涛の情報量が整然とコントロールされ、入り口から出口まであっという間に運ばれるジェットコースター映画になってる奇跡。
劇場用パンフレット


フツーの人たちがそれぞれの立場でやるべきことを遂行し、ゴジラという国難を乗り越えるプロジェクトX。この表現は特撮映画に思い入れのない人でさえ心打たれ、公開2週後も興行収入トップを走っている(まぁ最大のライバル『ワンピース』が公開3週目という事情はあるが)現実をよく説明している。

でも、ただ事じゃない爽快感は、それだけじゃ説明できない。綿密な取材、微に入り細にうがった考証に裏打ちされたリアリティを積み重ねて、「思考停止していたタブー」を踏み越えているから」じゃないか。『シン・ゴジラ』は多くの人々を囚われていた何かから解放する「憑き物落とし」だったのだ……。
ということで、ネタバレ全開でお送りします。いま語っておかないと、見てない人達が興味を抱かないまま上映が終わる悲しい事態が起こるかもしれないから。間に合わなくなっても知らんぞーー!!

「震災」という憑き物


今回のゴジラは東北大震災であり、原発事故だ。海から押し寄せて文明を瓦礫の山と炎の渦に叩き込む脅威、赤く光ってメルトダウンしそうな怪物を冷やそうとホースを突っ込む作戦行動。その進行ルートが放射能の拡散と一致している足取り。そもそも市民に放射能を検出する計器が普及してるこの世界は「その後」かもしれない。

しかし、ゴジラは日本のせいでもなんでもない。政府がどうの東電がどうのという「原罪」がないし、たびたび飛び出す「想定外」という言葉も、本当に想定外だから。原発事故は昔から考えて用意しとけよ!だったが、巨大不明生物災害なんて誰も想定してるわけがない。

原発事故当時、急にバトンを渡された民進党(当時は民主党)政権。「枝野寝ろ!」とツイートしてた人達の何割が今でも民進党支持かを考えると切なくなるが、ほとんどの人が死力を尽くして頑張っていたはず。日本政府が最大のポテンシャルを発揮したはずの事件が、今度は「原罪」抜きで起こったら? あの災害をゴジラに置き換えて「政治色を抜きにしたシミュレーション」にしたことで、壮大なエンターテイメントに仕立てているのです。

ライター情報

多根清史

1967生。『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)など。

URL:Twitter:@bigburn

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