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震災から生まれ、年間200公演を無償で行うローカルヒーロードキュメント小説『RYU PROJECT』

2017年10月10日 10時00分 ライター情報:大山くまお
ローカルヒーローが花盛りである。先日開催された「日本ローカルヒーロー祭」には実に350ものキャラクターが参加したという。もちろん、実際にはそれ以上の数のローカルヒーローが全国に存在するのだろう。

「破牙神(ばきしん)ライザー龍」は、東日本大震災がきっかけで生まれた宮城県のローカルヒーローだ。この9月、その歩みを小説形式で記録した書籍『RYU PROJECT 震災のあの日から』が刊行された(公式サイト)。固有名詞などは変えられているが、ほぼ事実に近いことが記されているという。版元は仙台の書店チェーン・金港堂出版部。

避難所の子どもたちのためにヒーローを作りたい!


2011年3月11日の東日本大震災からしばらく後のこと、仙台の小さな企画制作会社を営む主人公たちの元に一本の電話が入る。避難所の子どもたちのために、テレビで全国的に知られているヒーローを呼べないかという相談の電話だった。彼らがかつてそのテレビヒーローのキャラクターショーを手がけていることを知り、連絡してきたのだ。

しかし、手を尽くしてはみたものの、版権やビジネス上の問題などでテレビヒーローを呼ぶことはできなかった。それでも、家を失い、親を失い、我慢に我慢を重ねてきた子どもたちがあげた声に応えたい。そう強く思ったメンバーの中から、こんな声が上がった。

「だったら作りましょうよ! 版権にとらわれない、私達で自由に動かせるヒーローを!」

この一言から「破牙神ライザー龍」のプロジェクトがスタートした。

震災を設定に取り入れたローカルヒーロー


ローカルヒーローとはいえ、一からオリジナルのものを作り上げるには大変な労力とお金がかかる。その上、「テレビヒーローに匹敵するヒーロー」を作ろうとした分、さらに多くの労力とお金がかかることになった。テレビのヒーローを待っていた避難所の子どもたちに届けるのだから、テレビヒーローに見劣りのしないヒーローが必要だったのだ。

ここからは非常に地味な作業の積み重ねがひたすら続く。ボランティアで動けるメンバーを集め、設定と台本を作り、ヒーローのデザインを固め、造形や音楽の発注を行っていく。同時に資金集めもしなければならない。かつて東北地方でキャラクターショーに携わっていた11人の初期メンバーが本業の傍ら、精力的に仕事をこなしていった。

ストーリーには、あえて東日本大震災のことを取り入れた。しかし、震災で傷ついた子どもたちに、あらためて震災のことを伝えるべきなのだろうか? 専門医の判断を仰いだところ、とある医師の答えは「盛り込みなさい」だった。

ライター情報

大山くまお

ライター。著書に『野原ひろしの名言』『野原ひろしの超名言』(双葉社)、『名言力』(ソフトバンク新書)、『中日ドラゴンズあるある』(TOブックス)など。

URL:Fire Stone and Water

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